小さい桃のかけらを口に含むと、生ぬるい、舌を包み込むような甘さが口に広がった。

頬のようにほのかに赤らみ、腭（はぐき）のようにふくらかにくびれた水蜜

金色の産毛の生えた赤ん坊の肌のように擦れて傷のつきやすい桃

飲み込むと、甘い果肉、甘い果汁、桃独特の甘い香りが鼻腔に抜ける

てのひら一杯にのるくらい大きく、皮をむくとつるつるの白いみの出てくる、きめのこまかい白桃は、おいしいにはおいしいが、なんだかこくがない。むしろ、小さくて黄色みをおびて、きずも少しついている、すっぱみも少しある安い桃のほうが味がよい。

舌が焼けるようなできたてのグレープフルーツジャム

薄青色とも薄茶ともつかない淡い色の、ビシソワーズによく似たアボガドのスープ

南国の果物は香りが濃い。それだけに好ききらいもあるだろうが、一度好きになったら、たまらない味なのだろう。

（オリーブの薄塩漬け）塩味は、はんなり、ほんのりして、舌をくたびれさせず、すするたびに酒を新鮮にしてくれる。マーティニのなかに沈めてもよく、小皿に盛ったのを一個ずつ爪楊枝に刺してポツポツ食べるのもよろしい。氷をタオルにくるんで手早く金槌で砕いたのを鉢に入れ、そのうえに盛るのも、よく冷えてよろしい。辛口の白ぶどう酒の親友としてもこれは一番である。

ジュクジュクに熟れて、表皮に斑点ができて蕩けかかったようなやつを、皮を剥いて食べるとなかなかいい。