（いつだったか）思い出せない。時間の流れが不均一になっていて、距離感が安定しない。

物忘れがひどい

（曖昧な記憶）見覚えのある顔だ。しかし何処であった誰なのかうまく思い出せない。

真っ白な新聞を見るように、昨日という一日が、きれいに記憶のなかからかき消える

僕が思い浮かべることのできるワタナベ・ノボルの姿はまるで失敗した似顔絵のようにどことなくいびつで不自然だった。特徴だけは似ているのだが、肝心な部分がすっぽりと欠落している。彼がどのような歩き方をしたのかさえ、僕にはもう思いだせないのだ。

何度顔を洗ってもこの言葉がこびりついている。

思い返しても胃液がこみあげて来るような惨めな敗北であった。

心の奥に大切に取っておく

記憶の蔵からなつかしいものにハタキをかけて取り出してくるときの顔

怱忙（そうぼう）として脳裡（のうり）に過ぎる十八年の歳月。