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光と影の比喩を使った文章の一覧(278件)
ほんの少しだけ欠けた白い月が目の前に浮かんでいた。右手には新宿の街の光が、左手には池袋の街の光が見えた。車のヘッドライトが鮮やかな川の流れとなって、街から街へと流れていた。様々な音がまじりあったやわらかなうなりが、まるで雲みたいぼおっと街の上に浮かんでいた。
村上春樹 / ノルウェイの森 amazon
その光は僕に燃え残った魂の最後の揺らめきのようなものを連想させた
村上 春樹 / ノルウェイの森 上 amazon
ぽつぽつと雨が降りはじめて、電灯の光が細かい粉のように彼女の体のまわりにちらちらと漂っていた
村上 春樹 / ノルウェイの森 下 amazon
直子の淡いブルーのガウンが闇の中でまるで魚のようにひらりと揺れるのが見えた
村上 春樹 / ノルウェイの森 下 amazon
ぷすっと穴をあけたように一条の黄ばんだ光が閃く
本庄 陸男 / 石狩川 amazon
陽のあたる瓦屋根が、油を流したように照り返す
高樹 のぶ子 / 光抱く友よ amazon
銀箔かアルミの粉末でもまぶしたように、ビニール袋が直射日光を乱反射して輝きわたる
日野 啓三 / 夢の島 amazon
吹きすさぶ凩(こがらし)に明滅するごとく、漁り火が微かにまたたく
長与 善郎 / 青銅の基督 amazon
真っ黒に塗った板をすぐに眼の前に突きつけられたような闇
吉行 淳之介 / 夕暮まで amazon
犬の頭のように大きい懐中電灯
大江 健三郎 / 芽むしり仔撃ち amazon
ランプの光で顔がフィルムのネガのような陰影を作る
島尾 敏雄 / 出孤島記 amazon
牛が舌を出して鼻を舐めずっているような焔がべろべろと立って
長塚節 / 土 amazon
うるしを塗りつぶしたような闇がたちこめている
池波 正太郎 / 鬼平犯科帳〈1〉 amazon
単色の闇ではなく、様々な絵の具をバターのように厚く塗り込めた暗闇
村上 春樹 / 1973年のピンボール amazon
闇が澱んだ水のように重い
長野 まゆみ / 銀木犀 amazon
灯の消えた街灯の硝子球が、剥きだしの白い果肉のように身をすくめて立つ
長野 まゆみ / 銀木犀 amazon
水銀灯が庭の木立と芝生を青く照らしている。何か深い水底を思わせる色だった。
三浦 綾子 / 続 氷点 amazon
誘蛾灯の青白い光の輪の中に、閉じた木槿(むくげ)白い花が小鳥の寝姿のようにぽっかりと浮いている
落合 恵子 / 夏草の女たち amazon
歯の欠けた櫛のように軒並みの電灯が減る
徳永 直 / 太陽のない街 amazon
影が鋳込んだように濃い
日野 啓三 / 抱擁 amazon
背後にある夕日が、影を槍のように長く尖らせる
原田 宗典 / 十九、二十(はたち) amazon
雷雲に襲われた渓間のようにけわしく暗い影
武田 泰淳 / 風媒花 amazon
影が病んでいるように不気味に黒く揺れる
原田 康子 / 挽歌 amazon
黒犬のような影が足もとへとびかかる
水上 勉 / 雁の寺 amazon
地の底からにじみ出したかのように、小さな影が浮いて出る
池波 正太郎 / 剣客商売 amazon
シグナルが靄(もや)のような暈を帯びる
永井 龍男 / 青梅雨 amazon
闇が木立をかすめる風のように、死の恐ろしさを心に運んでくる
遠藤 周作 / 沈黙 amazon
鋼鉄の硬さと茄子紺の艶やかさの溶け合った闇の輝き
日野 啓三 / 抱擁 amazon
赤や青の光の筋が長い剣のように交叉する
富岡 多恵子 / 砂に風 amazon
ごく繊細な、ほんの黴のような光
三島 由紀夫 / 午後の曳航 amazon
灯の消えた硝子球が、剥きだしの白い果肉のように身をすくめて立つ
長野 まゆみ / 銀木犀 amazon
写真機のシャッターがおりるように急に闇になる
向田 邦子 / 思い出トランプ amazon
まだ黄昏になり切れない影が、あたたかい霧のように低く地面をぼかす
野上 弥生子 / 真知子 (1966年) amazon
林の中の夕暮れのように薄暗い
三浦 綾子 / 続 氷点 amazon
油煙を塗った錫箔(すずはく)のように、べっとりと暗さがまといつく
安部 公房 / 第四間氷期 amazon
地を割って奈落の底に下りていくような暗さを増す道
倉橋 由美子 / 倉橋由美子の怪奇掌篇 amazon
まっくらで、深い森の中を歩いているよう
太宰 治 / 貨幣 amazon
目を突き刺されてもわからぬほどに暗い
トルストイ / トルストイ民話集 人はなんで生きるか 他四篇 amazon
自動車のヘッドライトが僕の身体を洗うように次々に走り抜ける
福永 武彦 / 草の花 amazon
赤黒い炎が靄の中で生き物のように動く
遠藤 周作 / 沈黙 amazon
灯台のオレンジ色の灯が心臓の鼓動のように、確かな点滅を繰り返している。
村上 春樹 / 1973年のピンボール amazon
懐中電灯の光が一と筋、金の小鳥のように足もとをかすめて飛ぶ
安部 公房 / 砂の女 amazon
ヘッドライトが地獄の業火のように目の前で燃えさかる
小池 真理子 / 追いつめられて amazon
夜露に光を奪われた灯が、染みのようにぽつぽつと闇の中に浮いている
内田百けん / 烏「冥途」に収録 amazon
木立の中のオレンジ色の灯りが、人の吐く息の湿り気がゆらめき上がっているようににじむ
干刈 あがた / ウホッホ探険隊 amazon
油煙を塗った銀箔のように、べっとりと暗さがまといつく
安部 公房 / 第四間氷期 amazon
真の暗闇の中では自分の存在が純粋に観念的なものに思えてくる。肉体が闇の中に溶解し、実体を持たない僕という観念がエクトプラズムのように空中に浮かびあがってくる。僕は肉体から解放されているが、新しい行き場所を与えられていない。僕はその虚無の宇宙を彷徨っている。悪夢と現実の奇妙な境界線を。
村上 春樹 / ダンス・ダンス・ダンス(上) amazon
まるで深海の底におしこまれたみたいだった。濃密な闇が僕に奇妙な圧力を加えていた。沈黙が僕の鼓膜を圧迫していた。
村上 春樹 / ダンス・ダンス・ダンス(上) amazon
冗談抜きで恐いのだ。丸裸にされたような気がする。嫌な気分だ。暗い暗黒は暴力の粒子を僕のまわりに漂わせている。そして僕はそれがうみへびのように音もなくするすると近寄ってくるのを見ることさえできないのだ。救いようのない無力感が僕を支配している。体中の毛穴という毛穴が直に暗闇に曝されているような気がする。
村上 春樹 / ダンス・ダンス・ダンス(上) amazon
体の動きにあわせて壁の上の影が大きく揺れた。まるで黒い幽霊が頭上から僕に襲いかかろうとしているみたいに。
村上 春樹 / ダンス・ダンス・ダンス(上) amazon
壁の上の影も大きく揺れた。壁そのものが崩れ落ちるんじゃないかという気がするくらい大きく、ぐらぐらと。
村上 春樹 / ダンス・ダンス・ダンス(上) amazon
てっぺんの赤いライトが心臓の鼓動のように規則正しくゆっくりと点滅していた
村上 春樹 / ダンス・ダンス・ダンス(下) amazon
完璧な闇が狡猾な水のように音もなく僕らを包んだ
村上 春樹 / ダンス・ダンス・ダンス(下) amazon
鎔鉱炉から流れ出る液体の鉄に見える(ヘッドライトに照らされた雨の)曲がりくねった道路
村上 龍 / 限りなく透明に近いブルー amazon
トマトは雨で濡れて暗闇の中で唯一赤い。クリスマスに樅(もみ)の木や窓辺に飾られる小さな電球のように、トマトは(車のハザードランプの明かりで)点滅してる。火花を散らしながら揺れる無数の赤い実は、まるで暗い深海に泳ぐ発光する牙を持つ魚のようだ。
村上 龍 / 限りなく透明に近いブルー amazon
鉄条網が金色に際立ち、近くで見るライトは光と言うより熱く真赤に焼かれた鉄の棒だと思う。光の円がすぐそこに迫る。(雨で)地面から水蒸気が昇る。土と草と線路がガラスが熔ける時の白になる。
村上 龍 / 限りなく透明に近いブルー amazon
探照灯は高い塔の上に三台ある。恐龍の首みたいな光の筒は僕達を通過した後、遠くの山々を照らし出している。光の束で切り取られた彼方の雨の一塊は、一瞬凝固し、輝く銀色の部屋となる。もっとも強烈な探照灯はゆっくりと一定の場所を照らして回転する。僕達から少し離れた引き込み線路の上に一定間隔で回ってくる。
村上 龍 / 限りなく透明に近いブルー amazon
天井の電球による小さくて濃い影とアルコールランプによる薄い巨大な影の重なった部分は、まるで生き物のような複雑な動きをする。分裂する時のアミーバそっくりだ。
村上 龍 / 限りなく透明に近いブルー amazon
車椅子の金属がたっぷりと月光を吸いこんで、氷のような白さに光っていた。
村上 春樹 / 回転木馬のデッド・ヒート amazon
金物の黄金を星のように、ちらちら光らせている
芥川 龍之介 / 地獄変 amazon
私にはこのダイヤが偽物とは信じられない。おどろくばかり美しい輝き。母の心が放射されて来るようだ。
石川 達三 / 神坂四郎の犯罪 amazon
暗い中に、ガスの火がおとぎ話の火のようにもえている。
丹羽 文雄 / 顔 amazon
町のあかりであかるくなった夜空が燃えるよう
尾崎 士郎 / 人生劇場 青春篇 amazon
正午の日光の明るさは孔雀が羽翅(はね)を拡げたようである。
岩田 豊雄 / 沙羅乙女「獅子文六作品集〈第4巻〉沙羅乙女・信子 (1958年)」に収録 amazon
やさしいかすかな音楽のような光
松谷 みよ子 / 三つの色「童話・詩 全1冊 (松谷みよ子の本)」に収録 amazon
太陽が廻って来て、節子の横顔を彩った。金粉を塗ったように眩しい光が、顔から胸に縁を取って輪廓を鮮やかに示していた。
大仏 次郎 / 宗方姉妹 (1954年) amazon
パッと青味を帯びた懐中電燈の光が、鉄蓋の開き度合に従って、霧のように落ちて来た。
徳永 直 / 太陽のない街 amazon
赤い煙るような門燈の光り
三島 由紀夫 / 金閣寺 amazon
すり硝子のような半透明な梅雨時の光線
円地 文子 / 妖 amazon
家や大きな木立の影は、行手に立ちはだかる物の怪のようにも見える。
藤沢 周平 / 麦屋町昼下がり amazon
ぬくもりをおびた人工の闇を、襟巻のようにしっかり掻き合わせていた。
安部 公房 / 他人の顔 amazon
梁から軒先の闇が大きな吊り鐘を伏せたように役者の頭上へ蔽いかぶさっている舞台
谷崎 潤一郎 / 陰翳礼讃 amazon
コオルタールのような闇の中
林 芙美子 / 茶色の目「林芙美子全集〈第15巻〉茶色の目 (1952年)」に収録 amazon
目を開くと闇が油みたいに内にたまってくる
古井 由吉 / 水 amazon
闇は、道路から向い側の家の屋根にまで伸びて、その一劃だけ漆を塗ったように暗かった。
石坂 洋次郎 / 山のかなたに amazon
外は、一面クローム鍍金をしたように、光の中でかすんでいた。
安部 公房 / 他人の顔 amazon
小魚の腹がナイフのようにひらめいた
開高 健 / パニック・裸の王様 amazon
手のひらには、いつもと同じ何本かの深いしわが刻まれているだけだ。それは水銀灯の奥行きのない光の下では、火星の表面に残された水路のあとのように見える。
村上 春樹 / 1Q84 BOOK 2 amazon
水銀灯の光が(夜の)小さな児童公園の風景を青白く照らし出している。その風景は青豆に夜の水族館の無人の通路を連想させる。目に見えない架空の魚たちが樹木のあいだを音もなく泳いでいる。
村上 春樹 / 1Q84 BOOK 3 amazon
世界の終わりを何度となく照らしてきたような水銀灯がひとつ
村上 春樹 / 1Q84 BOOK 3 amazon
巨大な蕨さながらの背高の街灯
伊坂 幸太郎 / グラスホッパー amazon
ビルから明かりが消えると、建物全体が瞼を閉じるかのように感じられた。
伊坂 幸太郎 / グラスホッパー amazon
街灯が点くのは、星がひとつ増えるようなものだし、花が一輪咲くようなものだから。
サン=テグジュペリ / 星の王子さま amazon
髪を振り乱した、頬骨の出ている女の顔は、遠い街燈の光を斜めに受けて、妖怪じみて見える。
椎名 麟三 / 永遠なる序章 amazon
腕組みをし胡坐(あぐら)をかいている姿が燭台の灯のゆらぎをうけて、洞穴の中の仏像のように妖怪じみていた。
林 房雄 / 青年〈上〉 (1951年) amazon
あたりは墨を落したように暗かった。
檀一雄 / 花筐「花筐・光る道 他四編」に収録 amazon
トンネルのような廊下
徳永 直 / 太陽のない街 amazon
頭上と横とを流れるヘッドライトの光は靄のやうだったり稲妻のやうだつたりする。
丸谷 才一 / 初旅「横しぐれ (講談社文芸文庫)」に収録 amazon
薄暗い玄関が水の中のように感じられる。
黒井 千次 / 群棲 amazon
遠く上野の電気燈が鬼火のように見えているばかりだ。
広津 柳浪 / 今戸心中 amazon
南京玉をこぼしたように、そのさじきの帯をいろどるぼんぼり
永井竜男 / 風ふたたび「永井龍男全集 5 長篇小説 1」に収録 amazon
ぴたりと、まるで闇の一部になってしまったように静止していた。
吉本ばなな / 哀しい予感 amazon
晴々しい黄昏で、点きはじめた町の灯が水で濯(すす)いだように鮮かであった。
林 芙美子 / 泣虫小僧 amazon
遠くの電灯が白金のように白く光った。
川端 康成 / 童謡 amazon
春の明るい外光を反射して、相生橋が銀蛇のように光る
獅子 文六 / てんやわんや amazon
川船のまわりに人魂が漂うように、船頭のつけた提燈の火が波に赤い色をうつしていた。
芝木 好子 / 隅田川暮色 amazon
フィナーレの舞台のように明るく
河野多恵子 / たたかい
顔をあげて微笑む。ほほが夕陽に輝き、それは、まるで一刻ずつ姿を変えてゆくまぶしい夕空のようにはかない笑顔だった。
吉本 ばなな / TUGUMI(つぐみ) amazon
明け放った硝子戸の光線で、細君の顔が陶器の肌のように光っていた。
林 芙美子 / 夜猿「林芙美子傑作集 (1951年) (新潮文庫〈第201〉)」に収録 amazon
遠くの灯はフッと一時に消えた。まるで今見たことが夢だったかのように。
中島 敦 / 李陵 amazon
四囲は水族館の水槽の底のように暗く沈んでいった
林 芙美子 / 女性神髄 (1949年) amazon
薄日が軒先の物干し竿の影ごと、進藤の膝に射して、すぐ吸い取られるように消えた。
永井 龍男 / 冬の日「一個・秋・その他 (講談社文芸文庫)」に収録 amazon
松明(たいまつ)がその下に集められる。その辺一帯、火事のように明かるくなり
志賀 直哉 / 暗夜行路 amazon
電燈の光では、二人の顔は皿のように不自然に白かった。
室生 犀星 / 杏っ子 amazon
小屋がけの見世物やの灯が、ほおずきみたよに見えましてなァ
宇野 千代 / おはん amazon
赤銅色の金属筒は、磨かれたばかりの豪華な食器のように輝いていた。
武田 泰淳 / 風媒花 amazon
広い額は、昼の光の反映が波の退(ひ)いた砂浜のように淋しく角度をつけている。
岡本 かの子 / 春「岡本かの子全集 (第2巻)」に収録 amazon
端正な顔が星明りのなかでデスマスクのように寂然と見える。
岡本 かの子 / 鶴は病みき amazon
燈籠の笠がほんのり明るく闇を区切って、それと松の梢が昔の人の噂をしているような風情です。
井伏 鱒二 / 珍品堂主人 amazon
人魂のように街の灯が、港の水に映っていた。
葉山 嘉樹 / 海に生くる人々 amazon
灯がゆらゆらと動いて、それが、蛍を踏みにじった時のように、キラキラと河水に映った。
上司 小剣 / 鱧の皮 amazon
硝子に雨の雫を伝わらしている街燈の灯はまるで暗い人生の隅っこに泣きそべっている二人の影のように見えていた。
田村 俊子 / 木乃伊の口紅 amazon
地面に這いつくばるように立っている沼田の小さい家は、黄色く灯をともしていた。
吉行 淳之介 / 闇のなかの祝祭 amazon
自分の不安な心を見るようにランプの揺れる芯を凝視して
佐藤 春夫 / 田園の憂鬱 amazon
看板の上の五燭の電燈がまるで、一つ目小僧のようで
林 芙美子 / 泣虫小僧 amazon
彼女は、駅の灯に顔を横から照らされて彫像のように見える。
椎名 麟三 / 永遠なる序章 amazon
眼前が、ちょうどトンネルから抜け出してでも来たかのように明るく感じられた。
徳永 直 / 太陽のない街 amazon
国技館の丸屋根の灯は、王冠のように美しかった。
平林 たい子 / 桜「平林たい子全集 2」に収録 amazon
それらの塗りものの沼のような深さと厚みとを持ったつや
谷崎 潤一郎 / 陰翳礼讃 amazon
白熱瓦斯の下に、真白に塗り立てた娘が、石膏の化物のように坐っていた
夏目 漱石 / 三四郎 amazon
襖をたてると昼間でも黄昏のように暗い部屋だった。
林 芙美子 / 河沙魚「林芙美子傑作集 (1951年) (新潮文庫〈第201〉)」に収録 amazon
午後の光が、そのたらいの水に反射して、彼女の小さくしまった蒼白い顔は、きらきら波のように揺れていた。
椎名 麟三 / 美しい女 amazon
人家の灯火は雨に流れて、色硝子を砕いたような、光った水溜りの中へ、二人は膝をついた。
林 芙美子 / 軍歌「林芙美子傑作集 (1951年) (新潮文庫〈第201〉)」に収録 amazon
スプーンが朝の光でまぶしく、まるで兇器のやうにきらめいた
丸谷 才一 / 中年「丸谷才一全集 第三巻 「たった一人の反乱」ほか」に収録 amazon
苔蒸(こけむ)したる石燈筒の林のごとく列べる
内田 魯庵 / くれの廿八日「くれの廿八日 他一篇 (岩波文庫)」に収録 amazon
店屋の明りは、二人が歩いている間にも、歯が抜けるように、あっちこっちで消えていき
石坂 洋次郎 / 山のかなたに amazon
広大な敷地を見下してぜんまいのように曲った背の高い水銀灯が何本も立ち並び、不自然なほど白い光を隅々にまで投げかけていた。
村上 春樹「1973年のピンボール (講談社文庫)」に収録 amazon
闇は不思議に平面的だった。実体のない物質を鋭利な刃物でスライスした切口のようにも見える。奇妙な遠近感が闇を支配していた。巨大な夜の鳥がその翼を広げ、僕の目の前にくっきりと立ちはだかる。
村上 春樹「1973年のピンボール (講談社文庫)」に収録 amazon
地上の全てのものはまるで首をすくめるように闇の中で沈黙していた。
村上 春樹「1973年のピンボール (講談社文庫)」に収録 amazon
心臓の鼓動にあわせるように、そのランプを点滅させつづけていた。
村上 春樹「1973年のピンボール (講談社文庫)」に収録 amazon
薬指には婚約指輪が、バスの窓からの陽を受けて、溶けかかった雪のように輝いています。
綿矢 りさ / 自然に、とてもスムーズに「しょうがの味は熱い (文春文庫)」に収録 amazon
診察室をのぞくことができた。先生も看護婦もいなかった。そこは放課後の理科室のように薄暗かった。
小川 洋子「妊娠カレンダー (文春文庫)」に収録 amazon
海の底と錯覚しそうな深い闇を見つめていた。じっと息を殺していると、闇がか細く震えているのが分った。闇の粒子が、怯えるように宙でぶつかり合っていた。
小川 洋子 / ドミトリイ「妊娠カレンダー (文春文庫)」に収録 amazon
フロントガラスはそこから水が沸き出てるかのようにみずみずしく光を放って
川上 未映子「乳と卵(らん) (文春文庫)」に収録 amazon
水面が陽光を受けて生き物のように照り返す。
中島 京子「小さいおうち (文春文庫)」に収録 amazon
巨大な蛍が飛び交っているように、はじめは見えた。蛍ではなくて懐中電灯だった。懐中電灯がいくつも振り回されている。
伊坂 幸太郎「陽気なギャングが地球を回す (祥伝社文庫)」に収録 amazon
淡い闇が風に吹かれる膜のように都市の上をさまよい流れていた
村上春樹 / 回転木馬のデッド・ヒート(タクシーに乗った男) amazon
薄暗い光がさらに薄くなり、懐中電灯の灯が命でも尽きるように弱々しく輝いてスーッと消えた
阿刀田高 / ミッドナイト物語 amazon
懐中電灯の明かりが、飛び立った鳥のように、急に松の幹から梢へ翔ける
三島由紀夫 / 潮騒 amazon
木々の影が更紗のようにさざめいて
三島由紀夫 / 花ざかりの森 amazon
車のライトがねずみのように桟橋から失せる
伊集院静 / チヌの月「三年坂」に収録 amazon
国境の長いトンネルを抜けると雪国であった。夜の底が白くなった。
川端康成 / 雪国 amazon
四角い光を切り取って据えた様な縁側の明るさ
高樹のぶ子 / その細き道(遠すぎる友) amazon
その先に潜む闇は黄泉の国へ導く入り口のように力強い
本間千枝子 / たゆたう時間・避暑地のくらし「父のいる食卓」に収録 amazon
小さな灯が雫のようにちらりちらりと光る
内田百閒 / 冥途 amazon
灯火がリンの燃えるように怪しい光を放って明滅する
国木田独歩 / まぼろし「武蔵野」に収録 amazon
光が樹木に遮られて壁に作る黒ずんだ意匠
丸谷才一 / 樹影譚 amazon
宝石箱の中身をばら撒いたような街の灯り
志茂田景樹 / 月光の大死角 amazon
街の灯が、赤いインクでもこぼしたように、点々と滲んで見える
石坂洋次郎 / 丘は花ざかり amazon
まるで夜がそこに結晶しているかのよう
三島由紀夫 / 金閣寺 amazon
磨き上げた表面は光を浴びて鍾乳石のように瑞々しく光っている
長野まゆみ / 少年アリス amazon
蒸し暑さに電灯に灯まで汗をかいたように濡れて見える
連城三紀彦 / 紅き唇 amazon
闇はテントのように膨れ
三島由紀夫 / 花ざかりの森 amazon
夜霞に光を奪われた明かりが、シミのようにぽつんぽつんと闇の中に浮いている
内田百閒 / 烏「冥途」に収録 amazon
ライトがボーっと霞んだ幕のように近づいてくる
ピート・ハミル(訳 常盤新平) / ブルックリン物語 amazon
その他の感覚を表す比喩表現
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