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火・煙・灰の比喩を使った文章の一覧(110件)
悪魔の舌のような焔(ほのお)
川端 康成 / 掌の小説 amazon
手紙がめらめらと燃えあがって、小さい悪魔のなきがらのように、黒くちぢこまる
山本 有三 / 波 amazon
吹きすさぶ凩(こがらし)に明滅するごとく、漁り火が微かにまたたく
長与 善郎 / 青銅の基督 amazon
牛が舌を出して鼻を舐めずっているような焔がべろべろと立って
長塚節 / 土 amazon
深い疲労が海のように全身をおしつつむ
光瀬 龍 / 百億の昼と千億の夜 amazon
煙が真っ直ぐのぼり、末は扇のようにひろがって空にまぎれ込む
大岡 昇平 / 武蔵野夫人 amazon
建物の焼け落ちる轟きと、物のはぜ飛ぶつんざくような響きが、怒涛のように揉み返す
山本 周五郎 / やぶからし amazon
野火の煙が海草のように揺れながら、どこまでもどこまでも、無限に高く延びる
大岡 昇平 / 野火 amazon
一帯を万灯会のように盛大な篝火が埋める
真継 伸彦 / 鮫 amazon
窓から悪戯をしているように赤い舌が覗いたり隠れたりする
辻井 喬 / 暗夜遍歴 amazon
火事がホンの狂言のようにすぐ鎮まる
徳永 直 / 太陽のない街 amazon
汐風が、薪(たきぎ)の中から紅蓮(ぐれん)の舌を煽り出す
柴田 錬三郎 / 南国群狼伝 amazon
火の壁をくぐって、亡霊のような人影がもつれ合いながらよろめき出る
光瀬 龍 / 百億の昼と千億の夜 amazon
灰と化したばかりの紙片が、千切れた黒蝶の羽のように舞い上がる
武田 泰淳 / 風媒花 amazon
屋台骨が火の中へ、紙細工のようにヒラヒラと呑まれて消える
山崎 豊子 / 暖簾 amazon
浅間山が、花キャベツに似た噴煙をむくむくと持ち上げる
堀 辰雄 / 菜穂子―他五編 amazon
むくむくした煙が、小さな芽キャベツのように連なり合う
福永 武彦 / 草の花 amazon
白煙がゆっくりと乳を流すように草原を這って行く
加賀 乙彦 / 海霧 amazon
炎が、生きているように黄金色に光りながら家をのむ
中上 健次 / 枯木灘 amazon
赤黒い炎が靄の中で生き物のように動く
遠藤 周作 / 沈黙 amazon
羊の毛のように白く靡(なび)く浅間の烟(けむり)
田山 花袋 / 田舎教師 amazon
野火の煙が、出発する旧式の機関車が吹き出す蒸気のように、ポッポと断続して騰(あが)る
大岡 昇平 / 野火 amazon
朝の煙が光を透して、紫の羅(うすもの)のように柿の枝にまつわる
佐藤 春夫 / 田園の憂鬱 amazon
煙は静かな午後の光の中をゆっくりと、まるでエクトプラズムのように彷徨った。
村上 春樹「1973年のピンボール (講談社文庫)」に収録 amazon
飛び立つ鳥が羽ばたくように、河面の雪が消えるように、煙がざわめく
武田 泰淳 / 風媒花 amazon
煙が薄(すすき)の穂のようにたなびく
福永 武彦 / 草の花 amazon
煙が松の木の間を、靄のようになびいて昇る
佐多 稲子 / 素足の娘 amazon
落葉を焚く細い煙が、魔法の縄のようにまっすぐに空に立ちのぼる
村上 春樹 / 1973年のピンボール amazon
濃い白い煙が、縷々(るる)と、香炉の煙のように、一すじ立ち昇る
佐藤 春夫 / 田園の憂鬱 amazon
煙が真っ直ぐにのぼり、末は扇のようにひろがって空にまぎれ込む
大岡 昇平 / 武蔵野夫人 amazon
焼け残りの草の根方を、煙が水底に動く影のように低く這う
大岡 昇平 / 野火 amazon
煙の折れた先が磁針のように、絶え間なく不安に揺れる
大岡 昇平 / 野火 amazon
煙の先が箒(ほうき)のようにかすれる
大岡 昇平 / 野火 amazon
厚い溶岩の上に冷たい水をブチまけたように、白い煙にとりまかれる
大原 まり子 / イル&クラムジー物語 amazon
漫画の吹き出しのように天井に浮かんだ白い煙
村上 春樹 / 1973年のピンボール amazon
野火の煙が、回転する磁石の針のように揺れる
大岡 昇平 / 野火 amazon
風が薪の中から紅蓮の舌を煽り出す
柴田 錬三郎 / 南国群狼伝 amazon
野火が焔の舌を見せて盛んに立ち騰(のぼ)る
大岡 昇平 / 野火 amazon
焔の赤い舌がべろべろと長く立つ
長塚 節 / 土 amazon
黄色い煙(砲煙)が綿のようにわきおこって
林 房雄 / 青年 (1964年) amazon
けしかけるような風は、汚い煙突の煙を、みるみる白濛々の世界へ、襤褸屑(ぼろくず)をちぎって擲(たた)きつけるように飛ばして行った。
前田河広一郎 / 三等船室「現代日本文学大系 (59)」に収録 amazon
着物の裏地のような煙
室生 犀星 / 杏っ子 amazon
きれぎれにからみあったけむりが雲のように漂っているのだ。
尾崎 士郎 / 人生劇場 青春篇 amazon
煙の頂きは高く昇ってうっすらと夕べの雲に紛れ、東の空に薄(すすき)の穂のようにたなびいた。
福永 武彦 / 廃市/飛ぶ男 amazon
飛び立つ鳥が羽ばたくように、河面の雪が消えるように、煙はざわめいた。
武田 泰淳 / 風媒花 amazon
煙はゆっくりのぼって行ったが天井のまぎわで、おそわれた鶏のようにふいに乱れた。
大江 健三郎 / われらの時代 amazon
雨竜(あまりょう、中国の想像上の竜に似た動物)のような細い煙り
夏目 漱石 / 草枕 amazon
煙は月を浴び、ちょうど濡れたように渦を巻く。
檀一雄 / 花筐「花筐・光る道 他四編」に収録 amazon
遠い煙突の黒煙が、しずかに絶え間なく、町の人々をおびやかすように流れた。
武田 泰淳 / 風媒花 amazon
四辺の一切の草木が皆雪のように真白になっている
長与善郎 / 陸奥直次郎 amazon
石灰工場の白い粉が風に巻き上げられて、フロント・グラスの前を幕を引いたようにとおりすぎた。
安岡 章太郎 / 海辺の光景 amazon
焼け跡から吹きつけてくるザラザラした異様な風は、まるで不快な固物の撫で回すような感触を持っていた。
井上 友一郎 / ハイネの月「日本の文学 64 井上友一郎」に収録 amazon
暗い中に、ガスの火がおとぎ話の火のようにもえている。
丹羽 文雄 / 顔 amazon
ふいごの火がアメダマよりもきれいな色となり
庄野 英二 / 星の牧場 amazon
街の火を眺めていた。その火は、今遠く地の底から地上を呼ぶ太陽のように@略@感じられていたのだ。
石原 慎太郎 / 行為と死 amazon
明るみの中の殊に明りの中軸になっている揺めく珊瑚の枝のような火体
岡本 かの子 / やがて五月に (1956年) amazon
空は真赤に燃えさかって火の粉が、高く空できらきらと金泥のように輝いていた。
石川 達三 / 日蔭の村 amazon
真赤な火柱が竜のように立ち昇りました。
島尾 敏雄 / 島の果て amazon
少しずつ燃えて来た薪は、それは心(しん)から動かされた人間の、力強い感激のように頼もしい炎であった。
佐藤 春夫 / 田園の憂鬱 amazon
焔は飴のように粘っこく燃え上った。
梅崎 春生 / 桜島 amazon
ナトリウム塊さながらの焔
稲垣 足穂 / 弥勒 amazon
ふいごの口から、まっ赤な炎が、まるで竜の舌べらのようにふきだしていた。
小出 正吾 / 逢う魔が時「小出正吾児童文学全集 (3)」に収録 amazon
台所の三和土(たたき)の上には、七輪の炭火だけが目玉のように明るく燃えていた。
林 芙美子 / 清貧の書 amazon
炭火が、塗ったようにまわりの顔をてらしだす。
丹羽 文雄 / 顔 amazon
遠い沖で小さい漁船が火事を起こして、まるで篝火(かがりび)でも焚いているように真赤に燃え上がっているのが見えました。
井上 靖 / 猟銃「猟銃・闘牛 (新潮文庫)」に収録 amazon
焼け残りの庭木が五本か六本、半焦げで、掌みたいな変な具合に葉を茂らせてゐる。
丸谷 才一 / だらだら坂「横しぐれ (講談社文芸文庫)」に収録 amazon
すずかけもすっかり芽ぶき、緑の美しい若葉が、火事の焔でゼラチンのように透けてみえた。
林 芙美子 / 松葉牡丹「林芙美子全集〈第13巻〉晩菊・松葉牡丹 (1951年)」に収録 amazon
メラメラと紙のように焼けていく(蝶の)羽
遠藤 周作 / 海と毒薬 amazon
腕組みをし胡坐(あぐら)をかいている姿が燭台の灯のゆらぎをうけて、洞穴の中の仏像のように妖怪じみていた。
林 房雄 / 青年〈上〉 (1951年) amazon
灰と化した紙片は@略@ちぎれた黒蝶の羽のように舞い上った。
武田 泰淳 / 風媒花 amazon
家が燃え始めると、ぽんぽん弾薬が爆竹のようにいつまでもなり出すのです。
火野 葦平 / 麦と兵隊 amazon
熱にこがされる古いスカートの匂いが、栗の花のように匂う。
林 芙美子 / めし amazon
松明(たいまつ)がその下に集められる。その辺一帯、火事のように明かるくなり
志賀 直哉 / 暗夜行路 amazon
火傷の部分に剃刀でも走らせたような疼痛が走った
椎名 麟三 / 美しい女 amazon
灯がゆらゆらと動いて、それが、蛍を踏みにじった時のように、キラキラと河水に映った。
上司 小剣 / 鱧の皮 amazon
自分の不安な心を見るようにランプの揺れる芯を凝視して
佐藤 春夫 / 田園の憂鬱 amazon
青い焔が燃え、赤い表紙が生き物のように反り始め
梅崎 春生 / 桜島 amazon
薄青い炎が舐めるように紙の上を這う
黒井千次 / 春の道標 amazon
ごぼごぼと物の煮えたぎるような音
石坂洋次郎 / 青い山脈 amazon
火は、無数の人間の関節が一斉に鳴るようにメキメキと音を立てる
三島由紀夫 / 金閣寺 amazon
その他の風景を表す比喩表現
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