日本語表現インフォ > 比喩表現の一覧 > 風景の比喩 > 水面・水中・水辺の比喩表現
水面・水中・水辺の比喩を使った文章の一覧(353件)
波が私の足を白い死んだ貝殻のよう見せ
三島由紀夫 / 仮面の告白 amazon
陽の明るいうち、それは墨汁のような色をたたえてねっとりと淀む巨大な泥溝である
宮本輝 / 道頓堀川 amazon
繁吹(しぶき)が無数のこまかな針を吹きつけるようにわしの全身をおそって、私は目を細めた
山川方夫 / 海岸公園 amazon
溶けた小倉アイスのように雪混じりの泥水
泉麻人 / ヴァンサンカン amazon
葦の葉のそよぎのような尺八楽
萩原 朔太郎 / 帰郷者 amazon
沼辺の葦のように、集まれば互いにただざわざわと騒ぐだけの村人
長塚 節 / 土 amazon
雨脚にたたかれて海の上一面が菊石になる
島尾 敏雄 / 出孤島記 amazon
雨の降る音に似たせせらぎの音が、涼しい風とともに頬に当たる
伊集院静 / 皐月 amazon
代赭の濃淡の巨大な網のような汚水
三島 由紀夫 / 午後の曳航 amazon
小川の岸が絶えず日光の波に洗われている
檀 一雄 / リツ子その愛・その死 amazon
さわさわさわさわと波がしらのあわつぶが美しい音楽を残して消えていく
灰谷 健次郎 / 海になみだはいらない amazon
池が銀を焼き溶かして湛えるように光る
川端 康成 / 掌の小説 amazon
池が夕陽の加減で、水銀のように縁だけ盛り上がって光る
岡本 かの子 / 過去世 amazon
澄み渡った水底の砂利が、銀のように碧玉のように沈んでいる
国木田 独歩 / 武蔵野 amazon
蝌蚪(おたまじゃくし)の尻尾のように、入り江のどん詰まりが急に細くなる
島尾 敏雄 / 出孤島記 amazon
内海が一枚の鏡のように光った。
福永 武彦 / 草の花 amazon
川の流れが、飛び飛びに岩をかがったように隠見する
泉 鏡花 / 高野聖 amazon
クサリのように点々、黒くつながっている渚の岩
山本 有三 / 波 amazon
大小の鯨のような岩が波をかき回す
加賀 乙彦 / 海霧 amazon
よどんだ水が、洋かんを流したようにぴったりと動かない
林 芙美子 / 林芙美子文庫〈〔第9〕〉松葉牡丹 amazon
沖では激怒した潮が波がしらに白いウサギを飛ばしながら走っている
開高 健 / 地球はグラスのふちを回る amazon
清らかな白波に月光がきらめき、月の中のうさぎが波間を走るかのように見える
白洲 正子 / 能の物語 amazon
川の水が絶壁に吸い寄せられたように慕い寄って、濃緑の色を湛えて渦巻く
菊池 寛 / 恩讐の彼方に amazon
玉を解いて流したように美しい谷川
泉 鏡花 / 高野聖 amazon
川が長蛇のごとくうねる
太宰 治 / 津軽 amazon
海が青い畳を敷いたように凪いでいる
山本 周五郎 / 松風の門 amazon
海の中の小さな岩がところどころ青畳の上に顔を出す
宮尾 登美子 / 楊梅(やまもも)の熟れる頃 amazon
海はどこまでも青く、磨きたてた青銅の鏡の色をしている
倉橋 由美子 / 倉橋由美子の怪奇掌篇 amazon
菜の花の黄色の帯の向こうに、青い布をハラリと広げたようなのどかな瀬戸内海がある
阿久 悠 / 瀬戸内少年野球団 amazon
晴れ渡った明るい海が、死をかくまっている単調な幕のようにだらりとしている
横光 利一 / 春は馬車に乗って amazon
海が怒りの表情を示す
阿刀田 高 / 恐怖コレクション amazon
青焔(せいえん)燃ゆる大円盤の彼方
中島 敦 / 環礁 ——ミクロネシヤ巡島記抄—— amazon
冬の曇空の下の海が、どこまでも広がる鉛色の円盤のよう
北村 薫 / 水に眠る amazon
羊水のような海が暗く騒ぐ気配を見せる
倉橋 由美子 / 倉橋由美子の怪奇掌篇 amazon
海が冷えて重々しい金属のような波に揺れ動く
加賀 乙彦 / 海霧 amazon
海上に無数の棘のような白浪が立つ
森 瑶子 / 風物語 (角川文庫 amazon
白い猫がいっぱいかけまわっているみたいに、海一面が白く波立つ
松谷 みよ子 / オバケちゃん amazon
海が脂の付いた灰色の金属のようにぼっと光る
笙野 頼子 / タイムスリップ・コンビナート amazon
陽を受けた海が針をまき散らしたようにキラキラと光る
遠藤 周作 / 何でもない話 amazon
眼にうつる流れが海のように青々と深みをまして迫ってくる
水上 勉 / 越前竹人形 (1980年) amazon
海が、波一つ立たず、錫(すず)の板を張り詰めたように鎮まっている
高井 有一 / 夜の蟻 amazon
海がニスを刷いたように凪いで光る
落合 恵子 / 夏草の女たち amazon
かすかに光っている霞んだ湖のような静かな海
大庭 みな子 / 三匹の蟹 amazon
くたびれたように海が黙る
遠藤 周作 / 沈黙 amazon
砕けた氷を混ぜ合わす海が、すさまじい歯軋りを繰り返す
加賀 乙彦 / 海霧 amazon
黒い毒液をこねまわしたような海に、雪が白い睡眠薬のように降り注ぐ
加賀 乙彦 / 海霧 amazon
たったいま地上に誕生したかのようにみずみずしくきらびやかに躍動する海
宮尾 登美子 / 楊梅(やまもも)の熟れる頃 amazon
夜の海が油を刷いたように鈍く光り、黒い板に似ている
吉行 淳之介 / 夕暮まで amazon
道を堰かれた波が、海坊主の頭みたいにまるくもりあがっては、さっと砕けてしぶきを飛ばす
中 勘助 / 銀の匙 amazon
浅く走っていく水の小さな閃きが、魚の鱗のように重なり合う
佐藤 春夫 / 田園の憂鬱 amazon
上衣が水死人のように半ば浮き、半ば沈みつつ川に流れている
小島 信夫 / アメリカン・スクール amazon
利根川の広い流れが絵を展げたように美しく見渡される
田山 花袋 / 田舎教師 amazon
淡くけぶる湿原の中をくろぐろとうねり流れる釧路川が墨絵のよう
内田 康夫 / 釧路湿原殺人事件 amazon
永遠のありかたを静かに示しているように、波の音が単調に反覆を繰り返す
芝木 好子 / 女ひとり amazon
流れのゆるやかな水面が、水彩絵の具をぶちまけたように色とりどりの油をひときわ鮮明にする
高橋 和巳 / 捨子物語 amazon
泡立つ激浪が、じゃま物へでも食ってかかるように舷側へぶつかってくる
山手 樹一郎 / 海の恋 amazon
磯波のようにまくれ返った頂上を並べた低い丘
大岡 昇平 / 野火 amazon
薔薇の叢(くさむら)の下から帯のような幅で、きらきらと日に輝きながら水が流れ出る
佐藤 春夫 / 佐藤春夫 amazon
海の広がりに較(くら)べれば、地面の広さは玩具のようなもの
高橋 和巳 / 我が心は石にあらず amazon
巨大な流木が奇怪な骸骨のように砂に寝そべって、濃い長い影を水の上に吹き流す
本庄 陸男 / 石狩川〈上〉 amazon
畳を敷いたようにギッシリと生える海藻
本多 勝一 / きたぐにの動物たち amazon
昆布の地肌が蛙の背中のようにきめが粗い
山崎 豊子 / 暖簾 amazon
海を渡る風が起こした細波が、時折、鏡のような水面に皺を寄せては走り抜けて行く
景山 民夫 / 遠い海から来たCOO amazon
水の上にまばたきするような灯の影
島崎 藤村 / 藤村パンフレット〈第3輯〉伸び支度,明日,熱海土産,飯倉だより amazon
港の風が夜を含んで、濡れた手のように肌にまとわりつく
荻野 アンナ / 背負い水 amazon
暗い水面がコールタールみたいに固く揺れる
向田 邦子 / 隣りの女 amazon
小さな波が水際を弄んでいるらしく、長い線が白刃のように光っては消える
国木田 独歩 / 武蔵野 amazon
水が濁りに濁り、公衆便所に生じた黴の色になる
山口 瞳 / 月曜日の朝 amazon
波が砕け散って、波頭が白い城壁のよう
西木 正明 / 『幸福』行最終列車 amazon
風呂の湯加減をみようと半分突っ込んだ片足をあわてて引っこ抜くように、あわてて鷗(かもめ)が舞い上がる
阿部 昭 / 千年 (1977年) amazon
鷗(かもめ)の腹の白さが凍りついた雪の白さのように目にしみる
阿部 昭 / 千年 (1977年) amazon
海が厚い硝子の切断部のような色合い
中島 敦 / 環礁 ——ミクロネシヤ巡島記抄—— amazon
浜に打ち上げられた陶器やガラスの破片が、まんまるく珠玉のように研がれている
宮尾 登美子 / 楊梅(やまもも)の熟れる頃 amazon
澱んで流れる辺りは鏡のごとく、瀬をなして流れる処は月光が砕けてぎらぎら光る
国木田 独歩 / 武蔵野 amazon
外海は陽光にきらめいて白っぽい河のように見えた。
福永 武彦 / 草の花 amazon
河が銀色の蛇のようにうねっている
光瀬 龍 / 百億の昼と千億の夜 amazon
川のところどころが、鳩の首みたいに何色もの光沢でぎらつく
宮本 輝 / 星々の悲しみ amazon
夜の河が、古生代(こせいだい)から奸智(かんち)を貯えた爬虫類の腹に似ている
武田 泰淳 / 風媒花 amazon
大蛇の目のようにところどころ火影で光る川
梅本 育子 / 桃色月夜 amazon
川が細い銀線みたいにキラキラ光って見える
太宰 治 / 津軽 amazon
車のヘッド・ライトが鮮やかな光の川となって、街から街へと流れる
村上 春樹 / 螢・納屋を焼く・その他の短編 amazon
うねる黒びろうどのような河水
本庄 陸男 / 石狩川〈上〉 amazon
水羊羹(みずようかん)のように真っ黒い川
内田 春菊 / ファザーファッカー amazon
魚の背鰭(せびれ)のようにぎざぎざな岩礁が沖までつきでる
中 勘助 / 銀の匙 amazon
長く続くなぎさの、割れた陶器の傷口のような白
光瀬 龍 / 百億の昼と千億の夜 amazon
白い牙のような波の歯をむきだしている冷たい海
遠藤 周作 / 沈黙 amazon
波の牙が間歇的に仄白く闇の中に出没する
福永 武彦 / 草の花 amazon
外海の濃藍色とは違って、堡礁(ほしょう)内の水は乳に溶かした翡翠
中島 敦 / 環礁 ——ミクロネシヤ巡島記抄—— amazon
恐竜のような波また波が、氷と雪の鎧に装われた岩に襲いかかる
加賀 乙彦 / 海霧 amazon
湾曲した海岸線に沿って並ぶ外灯と街明かりが、コンパスで描いた弧のように数キロも連なる
泉 優二 / さよならと言ってくれ amazon
沼の霧が、モヤモヤと妖精が棲む毒気のよう
檀 一雄 / リツ子・その愛 amazon
水に浸されて銀のように光っている岸の草
長塚 節 / 土 amazon
池が銀を焼き溶かして湛えたように光る
川端 康成 / 掌の小説 amazon
夜の相模湾が、一枚の銀色の布のように横たわる
森 瑤子 / 風物語 amazon
澄み渡った水底の砂利が銀のように碧玉のように沈んでいる
国木田 独歩 / 武蔵野 amazon
波のとどろきが酔っぱらいの繰り言のようにしつこい
三島 由紀夫 / 潮騒 amazon
波が、首でもすくめるように揺れる
椎名 麟三 / 美しい女 amazon
浅く走っていく水が、ぴくぴくする痙攣の発作のように光る
佐藤 春夫 / 田園の憂鬱 amazon
海がものうげに針のように光る
遠藤 周作 / 沈黙 amazon
たけり狂う白い波頭が煙のように吹き千切れる
光瀬 龍 / 百億の昼と千億の夜 amazon
遠方に模糊と煙るが如く白くひろがっている十三湖
太宰 治 / 津軽 amazon
湖水を縁どる薄い氷の膜が、窓を曇らせる蒸気のよう
常盤 新平 / マフィアの噺 amazon
灯台のオレンジ色の灯が心臓の鼓動のように、確かな点滅を繰り返している。
村上 春樹 / 1973年のピンボール amazon
紺碧色のゼリーを流し込んだ大きな器のような地中海
泉 優二 / さよならと言ってくれ amazon
真っ白に泡立ち騒いでいる滝壺から跳ね出されたように、魚が身を躍らせて滝の上に上る
海音寺 潮五郎 / 武道伝来記 amazon
沖から寄せる海嘯(かいしょう)の叫び声
三島 由紀夫 / 午後の曳航 amazon
小さな彫刻刀で丹念に刻まれたような灰色の波
北村 薫 / 水に眠る amazon
小波が微かな息を立てているだけの小さな浜
曽野 綾子 / 夫婦の情景 amazon
窪んだ砂漠のように雨に垂れこめられた浜が荒寥(こうりょう)とひろがる
遠藤 周作 / 沈黙 amazon
何千匹の鱶(ふか)のよう白い歯をむいてくる波
小林 多喜二 / 蟹工船 amazon
潮の匂いが緑色のともし火のよう
川端 康成 / 掌の小説 amazon
波の響き交わしが、潮のように押し寄せる軍勢に囲まれた城の光景を思い起こさせる
辻井 喬 / 暗夜遍歴 amazon
潮騒が、海の健康な寝息のように規則正しく寧(やす)らかに聞こえる
三島 由紀夫 / 潮騒 amazon
壁越しに聞く人の呟きのようにひそやかで、しめやかで、親しげな水のせせらぎ
大岡 昇平 / 野火 amazon
波の加減で噴水のようにしぶきをあげる流水
加賀 乙彦 / 海霧 amazon
手繰られた縄は滑車をとおるときに、氷雨のような繁吹(しぶき)をあたりに散らす
三島 由紀夫 / 潮騒 amazon
河原のところどころに、島のように点在する高み
大岡 昇平 / 野火 amazon
小さな湾にのしかかるように迫る傾斜地
吉村 昭 / 海の鼠 amazon
海に出ると、夕陽が落ちかかり赤い波の絨毯が敷かれる
加賀 乙彦 / 海霧 amazon
魚群が海面に大きく白い皺をひろげる
小林 信彦 / 世界でいちばん熱い島 amazon
深く走っていく水が、縮緬の皺のように繊細に光る
佐藤 春夫 / 田園の憂鬱 amazon
玉の簾(すだれ)を百千に砕いたような谷川
泉 鏡花 / 高野聖 amazon
小川のせせらぎが、どこか遠くから響いてくるように眠たげ
山本 周五郎 / やぶからし amazon
谷音が天の旋律のように心を魅了する
中河 与一 / 天の夕顔 amazon
彼女は若い細身のイルカのようにつるつるしていた
村上 春樹 / ダンス・ダンス・ダンス(下) amazon
汗が日焼けオイルと混ざり合って頬をつたい、耳元からぽとぽとと地面に落ちた。様々な種類の音が波のように寄せたり引いたりした。時々それに混じって自分の心臓の鼓動が聞こえた。僕の心臓もまた地球の巨大な営みの内の一つなんだという気がした。
村上 春樹 / ダンス・ダンス・ダンス(下) amazon
巨大な太陽が西に落ちて水平線がトマト・ソースのような赤に染まり、サンセット・クルーズの船が帆柱に灯をともし始めるまでそこに寝転んでいた。彼女は最後の一筋の光までを味わっていた。
村上 春樹 / ダンス・ダンス・ダンス(下) amazon
鷗の群れが洗濯機の渦みたいにぐるぐると空を舞っていた
村上 春樹 / ダンス・ダンス・ダンス(下) amazon
見下ろす水面は、波と波紋が交錯し、ちょうど番組が全て終了した後のテレビそっくりに、雷を反射して光り輝いている
村上 龍 / 限りなく透明に近いブルー amazon
海に突き出た低い岩群は、救いを求める白い手のように飛沫を高く立てて逆らいながらも
三島 由紀夫 / 仮面の告白 amazon
鰐鮫(わにざめ)が口をあいたような先のとがった黒い大巌(おおいわ)
泉 鏡花 / 高野聖 amazon
岩がちの海岸からところどころに魚の背鰭のようにぎざぎざな岩礁が沖のほうまでつきでて
中 勘助 / 銀の匙 amazon
静かな朝など、桶からはみ出た水が光って、まるで白刃のように新しい朝日に輝いていた。
室生 犀星 / 性に眼覚める頃 amazon
水が死んでいるせいか、羊かんを流したようにぴったりと動かない。
林 芙美子 / 松葉牡丹「林芙美子文庫〈〔第9〕〉松葉牡丹 (1950年)」に収録 amazon
いくつも鮒(ふな)が泳ぎ流れて来て、新茶のような青い水の中に尾鰭(おひれ)を閃めかしては、杭根(くね)の苔を食(は)んで、また流れ去って行く。
岡本 かの子 / 松葉牡丹「鮨」に収録 amazon
初夏の陽光は@略@金魚の硝子箱を横から照らして、底の玉石と共に水を虫入り水晶のように凝らしている。
岡本 かの子 / 花は勁し amazon
まるで滝のように暗碧(あんぺき)の水の縞がどろどろと壁をふるわせて打ち当ったり
前田河広一郎 / 三等船室「現代日本文学大系 (59)」に収録 amazon
岩から流れ落ちる清水が琴の音のように聞こえる
大庭 みな子 / 啼く鳥の amazon
氷山が白砂糖の大きな塊まりのように現われたり
野上 彌生子 / 哀しき少年「野上彌生子全小説 〈8〉 哀しき少年 明月」に収録 amazon
なぎさでは、真珠のレース編みのように、みなわが花をさかせていた。
庄野 英二 / 星の牧場 amazon
細かいガラス屑のような飛沫
前田河広一郎 / 三等船室「現代日本文学大系 (59)」に収録 amazon
掌でぴしゃりと横面を張り撲(なぐ)るような河風。
永井 荷風 / すみだ川 amazon
動かない海と、屹立した雲の景色は十四歳の私の眼に壁のように照り輝いて写った。
林 芙美子 / 風琴と魚の町 amazon
白ペンキで雑に塗りつけたような小さな雲
椎名 誠 / 犬の系譜 amazon
青白いもの(波)が、大きい皺のように@略@縒(よ)れ縒れになって近づいて
前田河広一郎 / 三等船室「現代日本文学大系 (59)」に収録 amazon
道を堰かれた波が海坊主の頭みたいに円くもりあがってはさっと砕けてしぶきを飛ばす。
中 勘助 / 銀の匙 amazon
あんまり静かなので、波の音が腹にはいって来るようだ。
林 芙美子 / 風琴と魚の町 amazon
真白にさらしたサテンのような浄(きよ)い波
平林 たい子 / 秘密 amazon
海を渡る時は、途中からひどい嵐になって、青い波が、キャベツ畑のように、渦を巻いて見えた。
林 芙美子 / めかくし鳳凰「林芙美子傑作集 (1951年) (新潮文庫〈第201〉)」に収録 amazon
蕨(わらび)のようにうねうねした浪
前田河広一郎 / 三等船室「現代日本文学大系 (59)」に収録 amazon
浪が鱗のように規則正しく並んで、一斉に動くともなく動いている
大岡 昇平 / 来宮心中 amazon
冷たい波は、船の両舷の下に逆毛のように白く砕けて
長塚 節 / 土 amazon
白羽のような波を蹴って進む自分の船
長与 善郎 / 陸奥直次郎 (1950年) amazon
綿の棒で大地を撲ったような波の音
梶井 基次郎 / 冬の蠅 amazon
その浪音は、私の耳に、手放しに泣き叫んでいるようにも、また手放しに哄笑しているようにも、かわるがわるに聞えてくるのです。
阿部 知二 / 黒い影 (1950年) amazon
波濤の音は@略@性急に噛みつくように聞えた。
阿部 知二 / 黒い影 (1950年) amazon
恐ろしい勢いで二人の巨人のような大浪が、もつれ合い、撓み合って
前田河広一郎 / 三等船室「現代日本文学大系 (59)」に収録 amazon
ビードロの山のような巨濤
前田河広一郎 / 三等船室「現代日本文学大系 (59)」に収録 amazon
池には縮緬皺のような小波が立っている
高見 順 / 如何なる星の下に amazon
広い海の面は畳の目のような漣をひらりひらりと見せている
広津 和郎 / 波の上「波の上―短篇集 (1948年)」に収録 amazon
神話の中の恐竜のように舌を吐き爪をならして小舟におそいかかる波頭
林 房雄 / 青年 (1964年) amazon
岸へ押し寄せ押し寄せする潮が全世界をめぐる生命の脈搏のように、間をおいては響き砕けていた。
島崎 藤村 / 夜明け前 (第1部 上) amazon
上げ潮が獣か横ざまの列車のような勢いで押し寄せていた。
堀田 善衛 / 鬼無鬼島 amazon
河水を照らす玉のような月の光
永井 荷風 / すみだ川 amazon
川幅は一間ばかり(。略)美しさは玉を解いて流したよう
泉 鏡花 / 高野聖 amazon
青く澄んだ川の水は油のように流れて
島崎 藤村 / 千曲川のスケッチ amazon
川の流れというものが、水源地の変化や、流域の地質の硬弱によって、絶えず方向と様相を変化させつつあるのは、何か生きてのたうつ爬虫類のようにも感じとれる。
岡本 かの子 / やがて五月に (1956年) amazon
鱗のように照り映えながら、川水は 縞をなした岸辺の岩を洗いつづけた。
北杜夫 / 牧神の午後 amazon
川水は勢いを削(そ)がれどんよりと悲しんでいるようにしばらく澱(よど)んで見せる
室生 犀星 / あにいもうと「あにいもうと・詩人の別れ (講談社文芸文庫)」に収録 amazon
奈良の南の町外れに近く、菜の花の中に落した巨大な銀簪(かんざし)の二本の足のように能登川と岩井川とが流れている。
岡本 かの子 / 落城後の女「岡本かの子全集〈4〉 (ちくま文庫)」に収録 amazon
川は、堀割(ほりわり)のように水が濁っていて動かない。
大仏 次郎 / 帰郷 amazon
涼しい風が低く吹いて水の面を滑る時には、そこは細長い瞬間的な銀箔であった。
佐藤 春夫 / 田園の憂鬱 amazon
小さな輝きが魚の鱗のように重なり合っているところもあった。
佐藤 春夫 / 田園の憂鬱 amazon
水面は波もなく、まるで眠っているように静か
山本 周五郎 / 青べか物語 amazon
小さな数条の滝だけが白々と傍の白骨のように目立った。
三浦 朱門 / 冥府山水図 amazon
池の面は、底に何か歓楽境めいたものを秘めていて、その明りが洩れ出ているような妖しい美しさであった。
高見 順 / 如何なる星の下に amazon
絵のように影をうつした池の面
中 勘助 / 銀の匙 amazon
池は夕日に照らされ、銹(さ)びた古代の銅鏡のような鏡面に、金閣の影をまっすぐに落していた。
三島 由紀夫 / 金閣寺 amazon
溝溜(どぶだめ)のような池
岩野 泡鳴 / 耽溺 amazon
岸という限界さえ崩れてしまった水溜りのような古池
永井 荷風 / すみだ川 amazon
山の方へかたむきかけていた。湖が金色の針をちりばめたようにこまかに小波をたてている。
林 芙美子 / 浮雲 amazon
人生の帰り路にでも行きあたっているような荒涼とした夜の湖の景色であった。
林 芙美子 / 松葉牡丹「林芙美子全集〈第13巻〉晩菊・松葉牡丹 (1951年)」に収録 amazon
死水のように静かにほの白く輝いている湖面
葛西 善蔵 / 湖畔手記 amazon
湖面は死のように憂鬱だ。
葛西 善蔵 / 湖畔手記 amazon
打ち棄てられた蛮人の槍のように、黒い水面はゆったりと、うねりの背を光らせた。
武田 泰淳 / 風媒花 amazon
水の面はますます沈静に、何の兆(きざし)もうかべていなかった。失神したまま死んでゆく人のように。
三島 由紀夫 / 金閣寺 amazon
自分が近づけば、水の面が小砂を投げたように痺れを打つ。
鈴木 三重吉 / 千鳥 amazon
朝凪が波を消し海は太古のような静かな威厳に満ちている。
檀 一雄 / 花筐「花筐―はなかたみ 檀一雄短編集 (1969年)」に収録 amazon
海は原初、人間のいのちの母胎だった
田久保 英夫 / 海図 amazon
海は、眠った町を守りするように、夜じゅう鳴りつづけていた。
阿川 弘之 / 夜の波音 amazon
千丈の甍の傾きかかったような海
前田河広一郎 / 三等船室「現代日本文学大系 (59)」に収録 amazon
真昼の光を浴びて、海が、ガラスの破片のようにどぎつく光って
太宰 治 / 斜陽 amazon
海が繻子のように綺麗
林 芙美子 / 女性神髄「女性神髄 (1949年) (養徳叢書〈日本篇 第45〉)」に収録 amazon
かすかに船縁を叩く水音がなかったなら、海は二人のため、磨かれたフロアになりかねない。
石原 慎太郎 / 太陽の季節 amazon
凪いだ海の、青い氈(かも)を敷いたような表(おもて)
森 鴎外 / 山椒大夫 amazon
海は漆のような青い色をしている。
林 芙美子 / 浮雲 amazon
海は、まだ黒雲の下にあって、泥絵具で描いたように光のない灰色
大仏 次郎 / 帰郷 amazon
チューブから搾ってなすり付けたようなプルシャン・ブルーの、真冬の、陽に輝いた海
井上 靖 / 猟銃「猟銃・闘牛 (新潮文庫)」に収録 amazon
あんまりできすぎてて、風呂屋のペンキ絵みたい
森 敦 / 鴎「月山・鳥海山 (文春文庫 も 2-1)」に収録 amazon
晴れて表面は、白っぽく粉が吹いたように凪いでいる紺青の海
岡本 かの子 / やがて五月に (1956年) amazon
運河のような狭隘(きょうあい)な海
三島 由紀夫 / 金閣寺 amazon
湖水のように静かな海
安岡 章太郎 / 海辺の光景 amazon
海は、白い牙をむいていた。
丹羽 文雄 / 顔 amazon
午(ひる)近い海は、無数の飛魚(とびうお)が泳いでいるように、白い日光の下に耀(かがや)いた。
前田河広一郎 / 三等船室「現代日本文学大系 (59)」に収録 amazon
上を歩いてでも渡れそうに思わせた海の匂い
竹西 寛子 / 猫車「兵隊宿 (講談社文芸文庫)」に収録 amazon
海面は青い滑らかなガラス板のよう
吉行 淳之介 / 闇のなかの祝祭 amazon
海面は血を流した俎(まないた)のように、真赤な声を潜(ひそ)めて静まっていた。
横光 利一 / 花園の思想 amazon
ささらのように裂けた寒い水面
前田河広一郎 / 三等船室「現代日本文学大系 (59)」に収録 amazon
太鼓の音のような海鳴り
遠藤 周作 / 海と毒薬 amazon
雨の日も天気の日も、まるでホラ貝が鳴っているように殷々(いんいん)と海が鳴っていた。
林 芙美子 / 耳輪のついた馬「風琴と魚の町/清貧の書 (新潮文庫 は 1-4)」に収録 amazon
H湾は蒼い水たまりのよう
福永 武彦 / 草の花 amazon
袋の中のようなここの入江
正宗 白鳥 / 牛部屋の臭い (1971年) (雨の日文庫〈第6集 amazon
入り江の海を湖のような形にみせる役をしている細長い岬
壺井 栄 / 二十四の瞳 amazon
厚い藻のかたまりがあった。それは糸杉の森のように水底から垂直にたっていた。
開高 健 / 裸の王様 amazon
水底の藻が水勢のままに髪を梳られるような工合に靡いて
上林 暁 / 野「上林暁全集〈第3巻〉小説(3)」に収録 amazon
ところどころ点在する汚点(しみ)は鷗(かもめ)
福永 武彦 / 草の花 amazon
絞ったまま乾いた汚れ雑巾のようなカモメの体
日野 啓三 / 夢の島 amazon
鷗はちぎれ雲のようにマストにひっかかって飛ぶ。
サトウ ハチロー / 夢多き街―抒情詩と随筆 (1947年) amazon
海からはもう浜猫が飛んでき、ぬるんだ田の上を、白木綿をちぎったように飛びまわっていた。
和田伝 / 沃土「和田伝全集 第2巻」に収録 amazon
あたかも王者のごとく泳ぎまわっていたのである。
鯉「日本近代短篇小説選 昭和篇1 (岩波文庫)」に収録 amazon
潮が退くと牡蠣殻が模様のようにところどころ色取っている潟の柔らかい泥
正宗 白鳥 / 牛部屋の臭い (1971年) (雨の日文庫〈第6集 amazon
ひとつぶが〇・五カラットもあるダイヤモンドのような夜光虫
森 瑶子 / 星と夜光虫と雪とバラと「彼と彼女 (角川文庫)」に収録 amazon
彼らは沼辺の葦のように集まれば互いにただざわざわと騷ぐ
長塚 節 / 土 amazon
見るからに冷たそうな、濁った海が吠えたけり、丈余の白波が砂に砕けて、さながら絶望にとざされて『神よ、何のために我々を創ったのですか』とでも言いたげな風情だった。ここはもはや太平洋なのだ。
村上 春樹 / 1Q84 BOOK 1 amazon
ナイアガラ瀑布の近くの町に泊まったとき、@略@朝から晩まで途切れなくそれが続くんだ。百万匹もの大小の蝉が鳴いているような音が
村上 春樹 / 1Q84 BOOK 2 amazon
太平洋の荒い波だ。多くの魂が集まって、銘々の物語を囁きあっているような、太く暗い響きがそこにはあった。その集まりは更に多くの魂の参加を求めているようだった。
村上 春樹 / 1Q84 BOOK 3 amazon
川船のまわりに人魂が漂うように、船頭のつけた提燈の火が波に赤い色をうつしていた。
芝木 好子 / 隅田川暮色 amazon
潮にさらされた骨のような流木
森 敦 / 月山・鳥海山 amazon
灯がゆらゆらと動いて、それが、蛍を踏みにじった時のように、キラキラと河水に映った。
上司 小剣 / 鱧の皮 amazon
柄杓(ひしゃく)が水を掬(すく)うように、デッキは波浪を掬い込んだ。
葉山 嘉樹 / 海に生くる人々 amazon
輝きのない鈍感な海は、白人の艦艇をも、危険性のない浮標のように、ものうく載せていた。
武田 泰淳 / 風媒花 amazon
神の前にあっては葦のように弱い人間の姿
福永 武彦 / 草の花 amazon
人家の灯火は雨に流れて、色硝子を砕いたような、光った水溜りの中へ、二人は膝をついた。
林 芙美子 / 軍歌「林芙美子傑作集 (1951年) (新潮文庫〈第201〉)」に収録 amazon
高い天窓からの光が水槽を霧のように白く光らせ
大江 健三郎 / 死者の奢り amazon
夜の河原の石たちは、昼間受けた日の光を溜め込んだみたいに明るく白い。穏やかに流れる川面は、反射する光もなくその流れも波立ちもうかがえず黒く重かった。その暗さに飲み込まれたみたいに草の伸び広がった中州も真っ黒で、二股に分かれた流れの奥側の川面はもう見えない。
滝口 悠生 / 死んでいない者 amazon
川の表面の薄皮がめくれるかのように、ゆっくりと白い波が揺れる
伊坂 幸太郎 / オーデュボンの祈り amazon
川が光っている。銀紙に光を当てたように乱反射する日差しが、川自身が発光していると勘違いさせるほどだった。
伊坂 幸太郎 / オーデュボンの祈り amazon
わずかに立つ波は雲のようにも見え、海ではなくて真っ青の空と見立てることもできた。
伊坂 幸太郎 / オーデュボンの祈り amazon
大西洋という巨大な水たまり
村上 春樹「1973年のピンボール (講談社文庫)」に収録 amazon
灯台はずんぐりと黒く、ちょうど鐘をすっぽりと伏せたような形をしている。考えごとをしている男の後姿のようでもある。日が沈み、薄い残照の中に青みが流れる頃、鐘の取手の部分にオレンジ色のライトが灯り、それがゆっくりとまわり始める。灯台はいつも夕闇のその正確なポイントを捉えた。見事な夕焼けの中でも、暗い霧雨の中でも、灯台の捉える瞬間は常に同じだった。
村上 春樹「1973年のピンボール (講談社文庫)」に収録 amazon
プールの表面は一面、雨粒が作り出す水模様のせいで、無数の小魚が餌を欲しがってうごめいているみたいに見える。
小川 洋子 / 夕暮れの給食室と雨のプール「妊娠カレンダー (文春文庫)」に収録 amazon
水面が陽光を受けて生き物のように照り返す。
中島 京子「小さいおうち (文春文庫)」に収録 amazon
雨で水かさを増した川音がズシンズシンとまるでだれかに背中をどやされるみたいに響いてくる
三浦哲郎 / ユタと不思議な仲間たち amazon
岩を噛む波の音が嵐のように凄まじく聞こえる
円地文子 / 女坂 amazon
川音は賑わい、まるで誰かがしゃべっているよう
萩原葉子 / 蕁麻の家 amazon
川の流れは浅いけれども速いから、神経質の水のようにやたら光る
夏目漱石 / 坊っちゃん amazon
潮のにおいが緑色のともし火のよう
川端康成 / 掌の小説 amazon
その日最初の太陽の光がはるかな海面を錫箔のように輝かせた
山川方夫 / 夏の葬列(朝のヨット) amazon
どどう どどう と波が村じゅうを包んでいるようでした。沖を見ると、波は暴れて、白馬になって走っていました。
壺井栄 / 母のない子と子のない母と amazon
眠たげな甘さを含んだ四月の海
落合 恵子 / センチメンタル・シティ amazon
本格的な夏を迎える直前のつかの間の午睡を楽しむように、海が穏やかな表情を見せる
落合恵子 / センチメンタル・シティ amazon
湖が酷薄な女の目のように冷たそうに青く光る
原田康子 / 挽歌 amazon
虫の鳴き声とせせらぎの音が地鳴りのように高まっている
宮本輝 / 蛍川 amazon
その他の風景を表す比喩表現
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