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夏の比喩を使った文章の一覧(66件)
夏の光があたかも目に見えぬ分水嶺を越えるかのようにその色あいを微かに変える頃
村上春樹 / 1973年のピンボール amazon
ささやかな淡い光は、まるで行き場を失った魂のように、いつまでもいつまでもさまよいつづけていた
村上春樹 / ノルウェイの森 amazon
みずみずしい花の色がそのまま黒土にしたたるように、紫陽花の花に雨が降りしきる
曽野 綾子 / 夫婦の情景 amazon
気の狂ったような暑さが爆発する
五木寛之 / 私刑の夏 【五木寛之ノベリスク】 amazon
夏の暑さが、熱いお茶を飲むような快感
飯田 栄彦 / 昔、そこに森があった amazon
光の中に棘があって、剣山で素肌を刺すような暑さ
林 京子 / 道 amazon
庇(ひさし)の間から見える無数の星までも蒸されるように暑い
山崎 豊子 / 暖簾 amazon
蛍が、水面を漂う細い糸のような光の筋を曳(ひ)き、解きつほぐれつしながら漂う
長野 まゆみ / 銀木犀 amazon
風鈴が折々思い出したようにかすかに鳴る
森 鴎外 / 阿部一族 amazon
暁の光の中に最後の光を霞のように融けこませ蛍が死んでいく
連城 三紀彦 / 恋文 amazon
肌に苔が生えてきそうな梅雨寒の午後
倉橋 由美子 / ポポイ amazon
晩春の花の萼(がく)をまだつけている新果のような五月のある朝
岡本 かの子 / やがて五月に (1956年) amazon
初夏の水分を含んだ空気を透す日光は、@略@(緑を)色硝子の破片を降り落しているような美しさを漲らしていた。
田村 俊子 / 冬の日「木乃伊の口紅」に収録 amazon
かっとした初夏の陽射しは、地の底から緑の油を噴きあげているようだ。
林 芙美子 / めし amazon
真夏へ真夏へと潮のように光の波を加えてゆく空の色
中山 義秀 / 醜の花「厚物咲・碑―他六篇 (1956年) (角川文庫)」に収録 amazon
夏の夕方の明るさは砂上の淡水のような肌目のこまかさで空気に溶け込み
岡本 かの子 / やがて五月に (1956年) amazon
すり硝子のような半透明な梅雨時の光線
円地 文子 / 妖 amazon
それらの虫どもは、夏の自然の端くれを粉にしたとも言いたいほどのごく微細な、ただ青いだけの虫
佐藤 春夫 / 田園の憂鬱 amazon
蛍の火は幽霊じみて見えないでもない
川端 康成 / 千羽鶴 amazon
蛍の大群は、滝壺の底に寂寞と舞う微生物の屍のように、はかりしれない沈黙と死臭を孕んで光の澱と化し、天空へ天空へと光彩をぼかしながら冷たい火の粉状になって舞いあがっていた。
宮本 輝 / 蛍川 amazon
あぶら蝉があつさをかきたてるように鳴いている
阿川 弘之 / 雲の墓標 amazon
真昼に近い銀座は、古いフィルムのようにあたりがひっそりと背景にへばりついている。
林 真理子 / ワイン「最終便に間に合えば (文春文庫)」に収録 amazon
沿道から夜空を見上げる人達の顔は、赤や青や緑など様々な色に光ったので、彼等を照らす本体が気になり、二度目の爆音が鳴った時、思わず後ろを振り返ると、幻のように鮮やかな花火が夜空一面に咲いて、残滓を煌めかせながら時間をかけて消えた。自然に沸き起こった歓声が終るのを待たず、今度は巨大な柳のような花火が暗闇に垂れ、細かい無数の火花が捻じれながら夜を灯し海に落ちて行くと、一際大きな歓声が上がった。
又吉 直樹 / 火花 amazon
氷屋が砂漠の緑地のようにわずかに涼しく眺められる。
水上 瀧太郎 / 山の手の子「俤 (百年文庫)」に収録 amazon
京浜国道は残暑の日盛りにまるでフライパンのように焼けていて
石川 達三 / 日蔭の村 amazon
舞台とは反対の方面で、しきりに花火を揚げる。花火の中から風船が出た。帝国万歳とかいてある。天主の松の上をふわふわ飛んで営所のなかへ落ちた。次にぽんと音がして、黒い団子が、しゅっと秋の空を射抜くように上がると、それがおれの頭の上で、ぽかりと割れて、青い煙が傘の骨のように開いてだらだらと空中に流れ込んだ。風船がまた上がった。
夏目 漱石 / 坊っちゃん amazon
炎天下のアスファルトは、弱火にかけたフライパンの底のように熱い。
本谷 有希子 / 異類婚姻譚 amazon
秋はいつも嫌な季節だった。夏のあいだに休暇で街に帰っていた数少ない彼の友人たちは、九月の到来を待たずに短かい別れの言葉を残し、遠く離れた彼ら自身の場所に戻っていった。そして夏の光があたかも目に見えぬ分水嶺を越えるかのようにその色あいを微かに変える頃、鼠のまわりを僅かな期間ではあるがオーラの如く包んでいたある輝きも消えた。そして暖かい夢の名残りも、まるで細い川筋のように秋の砂地の底に跡かたもなく吸い込まれていった。
村上 春樹「1973年のピンボール (講談社文庫)」に収録 amazon
頭の芯に突き刺さってくるような真夏の道の反射
藤枝静男 / 或る年の冬 或る年の夏 amazon
七月の太陽が、溶けた水銀のように輝く
阿部公房 / 第四間氷期 amazon
ジリジリと音が聞こえそうな午後の陽光
阿久悠 / 瀬戸内少年野球団 amazon
全てのものがうだってしまいそうな真夏の午後のひと時
石坂洋次郎 / 丘は花ざかり amazon
夏が最後の生命を振り絞っているような暑い日が続く
谷村志穂 / ハウス amazon
夏になるにしたがって、町そのものが障子を取り外したようになる
佐多稲子 / 素足の娘 amazon
夏の朝の日光が、いちめんに板金のように打ち延ばされて輝やいていた。
三島由紀夫 / 午後の曳航 amazon
夏の海が銀紙を貼り付けたように鈍く、そのくせ眼底までくらませるような強い光を跳ね返してくる
阿久悠 / 瀬戸内少年野球団 amazon
夏の終わりの入道雲には、見つめていると涙の滲みそうな輝きがある
竹西寛子 / ひとつとや amazon
夏の午後の蒸し暑い沈黙がのしかかる
三島由紀夫 / 潮騒 amazon
夏の初めの白墨の粉のような日の光が、ちらちらちらちらと降る
久米正雄 / 学生時代 amazon
夏はたけなわである。烈しい太陽光線にはほとんど憤怒があった。
三島由紀夫 / 真夏の死 amazon
庭のあちらにまばゆい夏の雲が立ち上がり、そのために蜂の羽や毛がするどい金の針のように光る
三島由紀夫 / 花ざかりの森 amazon
針一本落としても何かが崩れそうな七月の午後のひと時
川端康成 / 掌の小説 amazon
やわらかな新緑に体ごと染まってしまいそうな初夏
竹西寛子 / ひとつとや amazon
ライラックの花束のような初夏の明るさ
川端康成 / 掌の小説 amazon
その他の風景を表す比喩表現
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