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風の比喩を使った文章の一覧(94件)
吹きつけて来る風に面と向かうと、鋭い刃物を当てられたように痛い
新田 次郎 / 芙蓉の人 amazon
長い注射針のように遠慮なく突き通ってくる寒風
加賀 乙彦 / 海霧 amazon
烈風が街路を大波のように吹き過ぎる
光瀬 龍 / 百億の昼と千億の夜 amazon
風が強くて、会話をぼろぼろになった旗のように吹きちぎる
曽野 綾子 / 夫婦の情景 amazon
秋風のような涼しい空気が流れる
岩田 豊雄 / 獅子文六作品集〈第4巻〉沙羅乙女・信子 amazon
わきあがってきた暖かい風に、下半身が欲望に開くときのようにほてる
加賀 乙彦 / フランドルの冬 amazon
風が熱い水飴のようにねっとりと肌にねばりつく
光瀬 龍 / 百億の昼と千億の夜 amazon
果実のようなふくらみを持った風
村上春樹 / めくらやなぎと眠る女 amazon
ひび割れた穴にさまざまな風が吹き入って、異様な音を立てて歌を歌う
円地 文子 / 朱(あけ)を奪うもの amazon
風が、ほつれ毛を弄ぶように襟元をくすぐる
谷村 志穂 / ハウス amazon
崖の花をなめて行く海風のように、野の風が首筋へ滑って行く
武田 泰淳 / 風媒花 amazon
吹き下ろし舞い上がる風の手がシートを叩く
干刈 あがた / ウホッホ探険隊 amazon
港の風が夜を含んで、濡れた手のように肌にまとわりつく
荻野 アンナ / 背負い水 amazon
風が死んだように凪ぎ、帆が全く役に立たない
平岩 弓枝 / 風の墓標 amazon
巨獣が吼えるごとくごうごうと哮(たけ)って吹きあたる風の音
長与 善郎 / 青銅の基督 amazon
敵意を含んだ風がびゅうびゅうと空に鳴る
福永 武彦 / 草の花 amazon
今にも風で吹き落とされそうに、星が危なっかしく空に光っている
山本 有三 / 波 amazon
風が今にも梢から月を落としそう
国木田 独歩 / 武蔵野 amazon
風が赤い太陽を海に吹き落としそう
倉橋 由美子 / 倉橋由美子の怪奇掌篇 amazon
風の音が笑い声のようにたえまなく鳴る
高橋 和巳 / 我が心は石にあらず amazon
締め出しを食った犬みたいに鼻を鳴らしている風
ジュール・ルナール / にんじん amazon
積み上げた杉材の隙間から隙間を、笛に似たやわらかな音を立てて風が抜けていく
高樹 のぶ子 / 光抱く友よ amazon
吹き込んでくる風の音がピッチ感の悪いリコーダーのようで耳につく
辻 仁成 / グラスウールの城 amazon
風が冷たい敷布のようにからだを包む
ジュール・ルナール / にんじん amazon
寒い霙(みぞれ)まじりの風が荒れに荒れて終夜(よもすがら)、町の上を哮(ほ)え狂う
国木田 独歩 / 武蔵野 amazon
花が折れそうなほどの寒風
高橋 三千綱 / 涙 amazon
高原の水面を渡る風が頬を切るように冷たい
柴田 翔 / されどわれらが日々 amazon
寒い風が冷たい刃を浴びせる
長塚 節 / 土 amazon
氷の鞭のように風が吹き込む
獅子 文六 / てんやわんや amazon
風が鋭く冷えた針のように心を刺す
泉 優二 / さよならと言ってくれ amazon
清冽な空気の流れの中に体を浸しているように、爽やかな風が吹く
外村 繁 / 筏 amazon
星をも吹き落としそうな野分がすさまじく林をわたる
国木田 独歩 / 武蔵野 amazon
女神の柔らかい舌に似た風
倉橋 由美子 / ポポイ amazon
けしかけるような風は、汚い煙突の煙を、みるみる白濛々の世界へ、襤褸屑(ぼろくず)をちぎって擲(たた)きつけるように飛ばして行った。
前田河広一郎 / 三等船室「現代日本文学大系 (59)」に収録 amazon
奥入瀬(おいらせ)の流れを吹く風が、一晩で積った落葉の上を、まるで箒で片寄せるように、あっちこっちへ小さい吹き溜りをつくっていった。
林 芙美子 / 山中歌合「風琴と魚の町/清貧の書 (新潮文庫 は 1-4)」に収録 amazon
烈しい笛の音のように、ヒュウヒュウと鳴る風の音
広津 和郎 / やもり「広津和郎全集〈第1巻〉小説 (1973年)」に収録 amazon
隙間からは剃刀の刃のような冷たい風がシュッシュッと吹き込んだ。
葉山 嘉樹 / 海に生くる人々 amazon
馬車のなかは、水のような風がすいすい吹き通った。
徳田 秋声 / 足迹 amazon
武蔵野の寒い風の盛んに吹く日で裏の古樹には潮の鳴るような音が凄じく聞えた。
田山 花袋 / 蒲団 amazon
西の方から大浪の様な風が吹いて来た。
内田 百けん / 冥途 amazon
胸の中をふきぬけるような風の音
梅崎 春生 / 桜島 amazon
無数の死を築く墓地の方からは、人間の毛髪の一本一本を根元から吹きほじって行くような冷めたい風が吹いて来た。
田村 俊子 / 木乃伊の口紅 amazon
窓のそとは絶えず吠えるような風の音が続き
宇野 千代 / 色ざんげ amazon
雨気をふくんだ叩きつけるような重たい風が崖の上から吹きおろしていた。
林 芙美子 / 骨「新潮日本文学 22 林芙美子集 放浪記・稲妻・浮雲・風琴と魚の町・清貧の書・泣虫小僧・牡蠣・晩菊・骨・下町」に収録 amazon
海の微風が快活な昆虫のように見えない羽摶(はばた)きを、私の耳もとへ伝えて来たりした。
三島 由紀夫 / 仮面の告白 amazon
掌でぴしゃりと横面を張り撲(なぐ)るような河風。
永井 荷風 / すみだ川 amazon
襟元には永劫の昔から人間を孤独で寂しいものだと自覚させて来たような夜風が吹いて
岡本 かの子 / 落城後の女「岡本かの子全集〈4〉 (ちくま文庫)」に収録 amazon
新聞社の屋上庭園には、夜風が葬式のように吹いていた。
池谷 信三郎 / 橋 amazon
爽やかな夜風が波のように荒く吹き込み、よどんだ部屋の空気がすがすがしく交りあう。
林 芙美子 / 茶色の目「林芙美子全集〈第15巻〉茶色の目 (1952年)」に収録 amazon
蜜をとかしたような雨まじりの風
安部 公房 / 他人の顔 amazon
雨まじりの風が、黒い蒸気のように吹き込んできた。
安部 公房 / 他人の顔 amazon
微風が到るところで、彼女(高原)の柔らかい産毛のような若草と戯れ
立野 信之 / 軍隊病「軍隊病―兵士と農民に関する短篇集 (昭和4年) (日本プロレタリア作家叢書〈第5篇〉)」に収録 amazon
葉はどこにも感じない微風に動揺して自分のみが怖じたように騒いでいる。
長塚 節 / 土 amazon
タイトなミニスカートだったが、それでも時折下から吹き込む強い風にあおられてヨットの帆のようにふくらみ、身体が持ち上げられて不安定になった。
村上 春樹 / 1Q84 BOOK 1 amazon
部屋に吹き込んでいた風が急にやみ、カーテンが下に垂れた。作業の途中で何か大事な案件をふと思い出した人のように。それから少しあって、気を取り直したように再びゆっくりと風が吹き始めた。
村上 春樹 / 1Q84 BOOK 3 amazon
風が(葉の落ちた)ケヤキの枝のあいだを、鋭い音を立てて抜けていった。絶望を知った人の歯の隙間から出て行く酷薄な息のように。
村上 春樹 / 1Q84 BOOK 3 amazon
風で揺れるカーテンが、室内を舐める舌のように、はためいている。
伊坂 幸太郎 / グラスホッパー amazon
黒い旗片(はたびら)は闇の中で、大きな蝙蝠のように羽ばたいた。
徳永 直 / 太陽のない街 amazon
赤や青や黄のドレスの裾が蝶々のように翻って
木山 捷平 / 大陸の細道 amazon
雪催(もよ)いの風は鋭く頬を削った。その針はどんな防寒具でも通すのだから、水夫の仕事着などは、蚊帳(かや)のようであった。
葉山 嘉樹 / 海に生くる人々 amazon
鼻のもげるような吹曝(ふきさら)しの寒い田圃(たんぼ)道
徳田 秋声 / 新世帯 amazon
風が強いので疲れたネクタイが眼の前を鰻のような皺の寄りかたで泳いでいた
林 芙美子 / 茶色の目「林芙美子全集〈第15巻〉茶色の目 (1952年)」に収録 amazon
風にさからいながら、子供の走るかっこうが、海老のように見える。
林 芙美子 / ボルネオダイヤ「林芙美子傑作集 (1951年) (新潮文庫〈第201〉)」に収録 amazon
ひらひらと動きながら老人らと一つに私語(ささや)くように見えた。
長塚 節 / 土 amazon
袖を通していない白い上着が肩のうえで翼のようにひらひらしながら
中村 真一郎 / 遠隔感応 amazon
風に揺られる。さっきまで頰に心地好かったその風が、悪魔の使いのように感じられる。
横山 秀夫「クライマーズ・ハイ (文春文庫)」に収録 amazon
虚空に短い笛のような音で風が唸る
山川方夫 / 海岸公園 amazon
遠く高い空の果てから、冷たい風の響きが悲しげに燈多き街の方へと走って行った
永井荷風 / 夢の女 amazon
その他の風景を表す比喩表現
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