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春の比喩を使った文章の一覧(72件)
空には雲ひとつない。それでいて全体がぼんやりとした春特有の不透明なヴェールに被われていた。その捉えどころのないヴェールの上から、空の青が少しずつ滲み込もうとしていた。日の光は細かな埃のように音も無く大気の中を降り、そして誰に気取られることもなく地表に積った。
村上春樹 / 1973年のピンボール amazon
春の闇の中の桜の花は、まるで皮膚を裂いてはじけ出てきた爛れた肉のよう
村上 春樹 / ノルウェイの森 下 amazon
新芽のふくらみの先に、乳のように露を宿す
梅本 育子 / 桃色月夜 amazon
柳の枝に遊ぶうぐいすが、金粉を散らしたように愛らしい
白洲 正子 / 能の物語 amazon
梅の新しい枝が、直立して長く高く、天を刺し貫こうとする槍のように突っ立つ
佐藤 春夫 / 田園の憂鬱 amazon
盛りを過ぎた梅の花が、雨に濡れて泣くように見える
田山 花袋 / 田舎教師 amazon
野梅が細長い家の飾りのように青澄んだ白い花を綻ばせる
円地 文子 / 朱(あけ)を奪うもの amazon
小学生の遊戯のようにはしゃいで踊る
川端 康成 / 掌の小説 amazon
季節が緑と花の洪水になって氾濫する
伊藤 整 / 青春 amazon
山に紅い煙りのような山桜が咲く
獅子 文六 / てんやわんや amazon
淡い新緑が粉を噴いているように見える
林 芙美子 / 晩菊・水仙・白鷺 amazon
トルーマン・カポーティの文章のように繊細で、うつろいやすく、傷つきやすく、そして美しい四月のはじめの日々
村上 春樹 / ダンス・ダンス・ダンス(上) amazon
ねっとりとした春である。わずかにしめっている女の脇の下を思わせる春である。
サトウハチロー / 浅草悲歌
春がもう豹のような忍び足で訪れていはしたものの
三島 由紀夫 / 仮面の告白 amazon
晩春の花の萼(がく)をまだつけている新果のような五月のある朝
岡本 かの子 / やがて五月に (1956年) amazon
田舎町には桜が咲き、やわらかな春風が日光を絹のように漉して流れた。
開高 健 / パニック「パニック・裸の王様 (1960年) (新潮文庫)」に収録 amazon
燦々と金粉を振り撒くような五月の陽光
稲垣 足穂 / 弥勒 amazon
青空に象嵌をしたような、堅く冷たい花を仰ぎながら
芥川 竜之介 / 或日の大石内蔵助 amazon
桜の花が雲に似てむらがり
室生 犀星 / 杏っ子 amazon
雨気を含んで、花あかりも朦朧と、霞に綿を敷いたようだった。
泉 鏡花 / 縷紅新草 amazon
明るい海の貝殻を無為に集めたように軽く爽やかな桜花の群がりよう
大仏 次郎 / 帰郷 amazon
くるくる舞いながら、または子供の頬に涙がころげ落ちるように、無造作に落下していた。
富岡 多恵子 / 花「富岡多恵子集〈3〉小説(2)」に収録 amazon
一本一本が白金の弓のように身を反っていた小さい花粉の頭を雌蘂に向って振り上げていた。
川端 康成 / 春景色「伊豆の踊子・温泉宿 他四篇 (岩波文庫)」に収録 amazon
全身の枝から桃色の滝を流すような姿のシダレザクラ
伊坂 幸太郎 / アイネクライネナハトムジーク amazon
春とはいえ、寒さはまだ朝の空気の中に、鎌いたちのようなするどさでひそんでいて
壺井 栄 / 二十四の瞳 amazon
生温かい風が光を揺らせる。まるで木々の間を群れとなって移ろう鳥のように、空気がゆっくりと流れる。
村上 春樹「1973年のピンボール (講談社文庫)」に収録 amazon
桜の花びらが小さな蝶のように地面に舞い降り始めた
小川 洋子 / ドミトリイ「妊娠カレンダー (文春文庫)」に収録 amazon
桜がいかにも雪に洗われて咲いたという感じ
太宰治 / 津軽 amazon
桜吹雪が、夥しい数の蝶の乱舞に思えてくる
飯田栄彦 / 昔、そこに森があった amazon
空の色が冬の間に腐ったような灰色を洗い流して、日一日緑に冴えていく
菊池寛 / 藤十郎の恋 amazon
ちかちか輝く薄緑のレースで飾られる美しい春の森
松谷みよ子 / オバケちゃん amazon
どこか暖かい夕日の一片が隠れているような春の長い黄昏
野上弥生子 / 真知子 amazon
眠たげな甘さを含んだ四月の海
落合 恵子 / センチメンタル・シティ amazon
花曇りの空が林の上に眠っているように静か
三浦 綾子 / 続氷点(上) amazon
牡丹桜が鞠のように咲き集まった花房をいくつとなく重ねる
円地文子 / 朱を奪うもの amazon
満開の桜が、うららの春霞の下で眠くなるような色合いで連なっている
阿久悠 / 瀬戸内少年野球団 amazon
満開の八重桜の大木が、大きい花がさのように枝を広げて咲き満ちる
円地文子 / 朱を奪うもの amazon
夜気にうなだれた八重桜が夢のようにほの白く咲く
海音寺塩五郎 / 武道伝来記 amazon
吉野の桜も遠くから眺めれば、雲のように掴みどころがない
白洲正子 / 能の物語 amazon
その他の風景を表す比喩表現
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