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道・道路の比喩を使った文章の一覧(50件)
バスは突然ひやりとした杉林の中に入った。杉はまるで原生林のように高くそびえたら、日の光をさえぎり、うす暗い影で万物を覆っていた。開いた窓から入ってくる風が急に冷たくなり、その湿気は肌に痛いばかりだった。谷川に沿ってその杉林の中をずいぶん長い時間進み、世界中が永遠に杉林で埋め尽くされてしまったんじゃないかという気分になり始めたあたりでやっと林が終り、我々はまわりを山に囲まれた盆地のようなところに出た。
村上 春樹 / ノルウェイの森 上 amazon
舗道が昼の緩んだ暑さを残して温かく、汗ばむように湿る
長野 まゆみ / 銀木犀 amazon
荒れた海の砂浜のように人気なく荒涼としている村の道
大江 健三郎 / 芽むしり仔撃ち amazon
山の裾を切り取るようにして、路が細い帯のように捲く
佐多 稲子 / 素足の娘 amazon
峠が突き挙げた拳固のように肩を張って構えている
伊集院 静 / 三年坂 amazon
枯れた川のように白い道路
丸谷 才一 / 年の残り amazon
融雪水が急激になって流れる、川のような道
高田 宏 / 木に会う amazon
道路が紺のリボンのように一直線にのびる
石森 延男 / コタンの口笛 第2部 amazon
月夜の峠でのそよ風が、自由なはばたきへの誘いをひそめている
島尾 敏雄 / 島尾敏雄 amazon
ひどく重い物を積んだ長距離トラックが崩壊し始めた氷山のような不吉な音を立てて高速道路を走り抜けていった。
村上 春樹 / ダンス・ダンス・ダンス(上) amazon
鎔鉱炉から流れ出る液体の鉄に見える(ヘッドライトに照らされた雨の)曲がりくねった道路
村上 龍 / 限りなく透明に近いブルー amazon
曲がりくねった金属のチューブに見える道路
村上 龍 / 限りなく透明に近いブルー amazon
道路の小砂利が塩を撒いたように霜柱に凍てついていた。
徳永 直 / 太陽のない街 amazon
尾根道ときたら、まるで痩馬(やせうま)の背をあるくようなもので、二人ならんでは歩けない。
司馬 遼太郎 / 国盗り物語〈1〉斎藤道三〈前編〉 amazon
この頂をちょうど巨大な擂鉢のふちをたどるように半周して
牧野 信一 / ゼーロン amazon
雨に煙り、並木の黒い塊が、如何にも外国の絵でも見るように、新鮮だった。
林 芙美子 / 浮雲 amazon
アーケエドのように枝を延ばした欅(けやき)並木
上林 暁 / 野「上林暁全集〈第3巻〉小説(3)」に収録 amazon
揺れというよりはうねりに近い。荒波の上に浮かんだ航空母艦の甲板を歩いているようだ。
村上 春樹 / 1Q84 BOOK 1 amazon
歩行者用信号が青になるのを待つ。車道を眺める。槿(人名)にはそれが川に思える。視界が狭くなり、光景の彩度が落ち、車道の上を、不定形の波を隆起させ、川が、右から左へとゆるゆる流れていく。歩道との境に設置されたガードレールは、その、緩やかに、たゆたう川が、道を逸れぬように、川べりから溢れぬように、と付きっ切りで見守る役割を果たしている。 川は、時に嵐に勢いを増すとはいえ、それ以外の時には、目立つとも目立たぬともいえぬ水面の揺れとせせらぎをたてる程度だ。
伊坂 幸太郎 / マリアビートル amazon
木におおわれたトンネルのような道
林 房雄 / 青年 (1964年) amazon
区劃整理の後、道幅が広くなり過ぎて、夜遅くなど歩道を向う側へ渡ろうとすると曠野を歩いている様な気がする。
内田 百けん / 東京日記「東京日記 他六篇 (岩波文庫)」に収録 amazon
京浜国道は残暑の日盛りにまるでフライパンのように焼けていて
石川 達三 / 日蔭の村 amazon
蛇が皿を巻いたような丘の小道をぐるぐると下りて行く。
鈴木 三重吉 / 千鳥 amazon
雨が降れば泥濘と化する道は天気になると乾いて灰のようになる。
火野 葦平 / 麦と兵隊 amazon
蛇(へび)のようなる畑中の小径(こみち)
嵯峨の屋お室 / 初恋
巨大な爬虫類の皮膚のようなアスファルトの路面
日野 啓三 / 夢の島 amazon
まっ黒にしげった森のなかをひとすじの路が縫うようにうねって
中 勘助 / 銀の匙 amazon
アスファルトの広い国道は、ぼおっとした夕暮の河のように心細い眺めだった。
林 芙美子 / うず潮 (1964年) amazon
海に沿って、埃っぽい道が投げ出された帯のようにつづいており
吉行淳之介 / 海沿いの土地で
中腹に帯のようにひろがった道
円地 文子 / 妖 amazon
昆布のようにつるつるした都会の歩道
林 芙美子 / 風琴と魚の町/清貧の書 amazon
生垣の小途(こみち)が網のようにつづき
大原 富枝 / ストマイつんぼ (1957年) amazon
細い道が、あやふやな薄明りで、魚の腹のような色をして伸びている
内田 百けん / 百鬼園随筆 amazon
緇い正確な溝のような路地
葛西 善蔵 / 悪魔「葛西善蔵全集〈第1巻〉 (1974年)」に収録 amazon
炎天下のアスファルトは、弱火にかけたフライパンの底のように熱い。
本谷 有希子 / 異類婚姻譚 amazon
舗装された道路は数十メートルごとになだらかに曲がっていて、細い川のようでもあった。
伊坂 幸太郎 / オーデュボンの祈り amazon
線路は丘陵に沿って、まるで定規でもあてたようにぐいと一直線にのびていた。
村上 春樹「1973年のピンボール (講談社文庫)」に収録 amazon
駅前の交差点では大勢の人が行き交っていて、一秒たりとも風景がじっとしていることがない。まるで街が生きているように見える。人間の身体で例えれば、渋谷駅は心臓だ。文化村通りやセンター街など、あちこちに延びた道路は血管で、道行く人たちは血液にあたる。心臓は今日も大量の血液を街の隅々にまで送り出す。
428 ~封鎖された渋谷で~ amazon
交差点にひしめき合う車の群れは、パニックに襲われた野鼠のように甲高い悲鳴を上げながら
柴田翔 / われら戦友たち amazon
その他の風景を表す比喩表現
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