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絶望・希望がないの表現・描写・類語

底知れぬ絶望と悲しみ

関連カテがっかり・落胆する

（死にたいと思いながら生きる）死の入り口に生きていた。底なしの暗い穴の縁にささやかな居場所をこしらえ、そこで一人きりの生活を送った。寝返りを打ったら、そのまま虚無の深淵に転落してしまいそうなぎりぎりの危うい場所だ。しかし彼はまったく恐怖を感じなかった。落ちるというのはなんと容易いことか、そう思っただけだ。

村上春樹 / 色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年　amazon

（絶望して生きる）あの四人から存在を否定されたとき、多崎つくるという少年は事実上息を引き取ったのだ。その存在の外様だけはかろうじて維持されたものの、それも半年近くをかけて大きく作り替えられていった。体型も顔つきも一変し、世界を見る目も変わった。吹く風の感触や、流れる水音や、雲間から差す光の気配や、季節の花の色合いも、以前とは違ったものとして感じられる。あるいはまったく新規にこしらえられたもののように思える。ここにいるのは《…略…》中身を入れ替えられた、多崎つくると便宜的に呼ばれている容器（いれもの）に過ぎない。

村上春樹 / 色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年　amazon

（死ぬことばかり考えていた日々）その頃は、ただじっと深く自分の内奥を見つめていれば、心臓はやがて自然に停止してしまいそうに思えたものだ。精神を鋭く集中し、一ゕ所にしっかり焦点を結んでいれば、レンズが陽光を集めて紙を発火させるのと同じように、心臓に致命傷を与えられるに違いないと。彼はそうなることを心から期待していた。しかし彼の意に反して、何ゕ月経っても心臓は停まらなかった。それほど簡単に心臓は停まらないものなのだ。

村上春樹 / 色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年　amazon

未来が雨で見えない

絶望を感じ、周りの情景からスルスルと現実感が引いていく

石坂洋次郎 / 若い人　amazon

もうもがいても匐（は）い上ることの出来ぬ谷に落ちた気がした。

正宗白鳥(忠夫) / 何処へ　amazon

考える力を喪失した、いわば動物園の檻のけもののようであった。

梅崎春生 / 桜島　amazon関連カテ諦める

いわば、頭をかきむしるような絶望の気持

梅崎春生 / 桜島　amazon

自分のひそかな絶望の形態が、竹矢来のように、自分の周囲に張りめぐらされた気がした。

林芙美子 / 浮雲　amazon

それが医者が僕に告げた診断だった。余命は長くて半年、ともすれば一週間すら怪しいという。放射線治療、抗ガン剤治療、終末期医療、さまざまな選択肢を医者が提示する。けれども、まったく耳に入らない。　小さい頃、夏休みはプールに通っていた。青く冷たいプールに飛び込む。ざばん。ぶくぶく。体が沈む。「ちゃんと準備運動しなさい」　母さんの声がする。だが水の中でその声は、くぐもってよく聞こえない。すっかり忘れていた「音の記憶」がよみがえってくる。

川村元気 / 世界から猫が消えたなら　amazon関連カテ聴力・音感・聞こえ方

園山夫人は、おそらくその時点で、死んでいたのかもしれない。心臓は動いているが、心は閉ざしていた。呼吸はするし、食事も摂るが、笑うことをやめた。

伊坂幸太郎 / オーデュボンの祈り　amazon関連カテ心を閉ざす・気持ちを開かない

他人事のように担任の言葉を聞き流していた。窓もドアも閉めきった小さな真四角の部屋に閉じこめられるような話だ。耳が受けつけない。

あさのあつこ「ガールズ・ブルー (文春文庫)」に収録　amazon関連カテ聞き流す・いい加減に聞く

一種の絶望に近い、打撃的な感じをお受けになりますからね。

夢野久作 / ドグラ・マグラ　青空文庫

ぎゅうっと胃のあたりが痛くなった。絶望だ。絶望が、雪子の目の前の景色をすべて消し去ろうとしているようにも思えた。

伊坂幸太郎「陽気なギャングが地球を回す (祥伝社文庫)」に収録　amazon関連カテ胃痛・胃の不快感

関節が無音のまま壊れたみたいに、私は突然に、その場に膝をつく。

新海誠「小説君の名は。 (角川文庫)」に収録　amazon関連カテ心の落ち込みによる体の反応、リアクション

時間がたって冷静になれば、きっと絶望が襲ってくる。絶望を真正面から受けとめるのは苦しい。暗い洞窟のなかで何度も岩壁を叩いて、うつろな音の反響に耳を澄ませる作業だ。低くにぶい音しかはね返ってこないと分かっているのに、何度も叩いてしまう。でも、本気で人を愛したら、絶望の音に耳をふさぐことなんてできない。

綿矢りさ / かわいそうだね？「かわいそうだね? (文春文庫)」に収録　amazon関連カテ冷静・落ち着く

絶望の鐘が鳴り響いた。

足を進めることを、生きてゆくことを心底投げ出したかった。きっと明日が来て、あさってが来て、そのうち来週がやってきてしまうに違いない。それをこれほど面倒だと思ったことはない。きっとその時も自分が悲しい暗い気分の中を生きているだろう、そのことが心からいやだった。

吉本ばなな / 満月キッチン2「キッチン (角川文庫)」に収録　amazon

頭は真っ白で、目の前が真っ暗で。

吉本ばなな / 満月キッチン2「キッチン (角川文庫)」に収録　amazon関連カテ頭の中が真っ白・茫然自失

思い出が思い出としてちゃんと見えるところまで、一日も早く逃げ切りたかった。でも、走っても走ってもその道のりは遠く、先のことを考えるとぞっとするくらい淋しかった。

吉本ばなな / ムーンライト・シャドウ「キッチン (角川文庫)」に収録　amazon関連カテ喪失感（大切なものを失う）

懺悔（ざんげ）の門の堅く閉ざされた暗い道がただ一筋、葉子の心の目には行く手に見やられるばかりだった。

有島武郎 / 或る女（後編）　青空文庫関連カテとても後悔する

太陽が消えてなくなったような寒さと闇（やみ）とが葉子の心におおいかぶさって来た。

有島武郎 / 或る女（後編）　青空文庫

街の風景から色が失われた。

松本清張 / 与えられた生「松本清張ジャンル別作品集(3) 美術ミステリ (双葉文庫)」に収録　amazon

ふわ／＼とした最後の希望なんか、一たまりもなく雲夢のように吹き飛ばす

岡本かの子 / 巴里祭　青空文庫

絶望ということは、必ずしも死を選ませはしない。絶望の極死を選むということは、まだ、どこかに、それを敢行する意力が残っているときの事である。真の絶望というものは、ただ、人を痴呆（ちほう）状態に置く。脱力した状態のままで、ただ何となく口に希望らしいものを譫言（うわごと）のようにいわせるだけだ。

岡本かの子 / 母子叙情　青空文庫関連カテ自殺する

牢格子に背中をもたせかけて、「ウーム……」と、絶望的に唸った。

今日まで為した無数の諸悪や業も、彼の弱味に、今こそつけ込んで、この土蔵の中の四角な闇に、げたげたと嘲笑（あざわら）っているかとも感じられた。

吉川英治 / 雲霧閻魔帳　青空文庫関連カテ罪悪感・後ろめたい・良心の呵責

（絶望した気持ちで夜の谷を歩く）なんという苦い絶望した風景であろう。私は私の運命そのままの四囲のなかに歩いている。

梶井基次郎 / 冬の蠅　青空文庫関連カテ崖・谷・断崖絶壁

彼はしじゅう崩壊に屈しようとする自分を堪えていた。

梶井基次郎 / 冬の日　青空文庫関連カテ我慢・辛抱・耐える

夜の川は暗く恐ろしく光っていて、ものすごい速さで流れ去っていくので、いつのまにかぼんやりして考えが止まってしまった。

吉本ばなな / 大川端奇譚「とかげ (新潮文庫)」に収録　amazon関連カテ川夜

手おくれになった手術のようで、死を待つばかりの心細さ

林芙美子 / 新版　放浪記　青空文庫

〝助かるまい。本人も、助かりたいとは思うまい〟　身内ばかりだというのに、しかもみな彼女を愛していたのに、その考えは私達がすわっている冷たいビニールのソファーのまわりを離れず、まるで大声でくりかえしているように心に響き、病院の白く空ろな壁にこだましていた。

吉本ばなな「アムリタ〈上〉 (新潮文庫)」に収録　amazon

絶望するような嘆き声

雫井脩介「火の粉 (幻冬舎文庫)」に収録　amazon関連カテ悲しい声・嘆いた口調

脱色した風景

沼田まほかる「彼女がその名を知らない鳥たち (幻冬舎文庫)」に収録　amazon関連カテ喪失感（大切なものを失う）景色が違って見える

絶望感に、彼女の胸は押し潰された

平野啓一郎「マチネの終わりに (文春文庫)」に収録　amazon

何のアイデアも思いつかないことにわたしは絶望した。

小池真理子「愛するということ (幻冬舎文庫)」に収録　amazon

命を絶ってしまえば、一瞬にして絶望から解き放たれる。

小池真理子「愛するということ (幻冬舎文庫)」に収録　amazon関連カテ自殺願望・死にたい

（元気がなくて寝てばかり）このままＳＦのようにふとんの中でゼリーになってしまいそう

吉本ばなな / うたかた「うたかた／サンクチュアリ」に収録　amazon関連カテだらだら暮らす熟睡・ぐっすり眠る元気がない人

明日からどうやって学校に行けばいいのだろうと、目の前が真っ暗になっていきました。学校に爆弾でも落ちればいいのに。明日、目が覚めたら世界が終わっていたらいいのに。そんなどうしようもないことを考えている

湊かなえ / 罪深き女「ポイズンドーター・ホーリーマザー (光文社文庫)」に収録　amazon関連カテ不安になる

一切の言葉を寄せつけない真の絶望がそこにあった。

小川洋子 / 一つの歌を分け合う「口笛の上手な白雪姫」に収録　amazon

（我が子を失って）彼の感情は物、総すべてに変に白々しくなった。ちょうど、脳に貧血を起した人の眼にそう見えるように、それは白けてしか見えなかった。

直哉, 志賀「暗夜行路 (新潮文庫)」に収録　amazon関連カテ興ざめ・白ける

こうしてすわっていても、なにもかもが夢の中の一齣ひとこまのように意識が稀薄になることがあります。もう絶望しかありません。

阿刀田高 / 縄 ──編集者への手紙──「ナポレオン狂 (講談社文庫)」に収録　amazon関連カテ昏睡状態・意識が無い心理的に追い詰める（られる）

臓腑ぞうふを抜かれたような絶望

大岡昇平「野火（新潮文庫）」に収録　amazon

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