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所帯じみるの表現・描写・類語
従姉はすっかり世帯やつれのした女に変っていた。結婚して二年にもならないのに、生活に追いまくられてひどく疲れた表情をしていた。
遠藤 周作「海と毒薬 (角川文庫)」に収録 amazon
円顔に近かった彼の顔は、いまでは長形というよりもむしろ瓢簞形の無性格な輪郭を形づくっている。のびやかな顔の肌は失われ、額や頰のくぼみには疲労の跡がたまっている。もっとも三十前後から日本の小市民達の顔の上に現われるあの金銭に対する執着に原因した卑しさはそこにはなかったが、判然とした自分の思想を持ち得ず、あらゆるものを断片的に受け入れてきたもののあの無気力の汚さがただようていた。そして学生時代のあの知識に対する貪欲を証明する美しい眼の輝きはなくなってしまっている。これは一言にして言えば疲れた顔である。肩は張り、骨はごつごつし、以前の柔弱な体つきを全く変えてしまっていた。しかしそれでいて、どことなくよどんだ空気が彼のまわりをとりまいている。
野間 宏 / 残像「暗い絵・顔の中の赤い月 (講談社文芸文庫)」に収録 amazon
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