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自殺願望・死にたいの表現・描写・類語
君の心は妙にしんと底冷えがしたようにとげとげしく澄み切って、君の目に映る外界の姿は突然全く表情を失ってしまって、固い、冷たい、無慈悲な物の積み重なりに過ぎなかった。無際限なただ一つの荒廃――その中に君だけが呼吸を続けている、それがたまらぬほどさびしく恐ろしい事に思いなされる荒廃が君の上下四方に広がっている。波の音も星のまたたきも、夢の中の出来事のように、君の知覚の遠い遠い末梢 に、感ぜられるともなく感ぜられるばかりだった。すべての現象がてんでんばらばらに互いの連絡なく散らばってしまった。その中で君の心だけが張りつめて死のほうへとじりじり深まって行こうとした。重錘 をかけて深い井戸に投げ込まれた灯明のように、深みに行くほど、君の心は光を増しながら、感じを強めながら、最後には死というその冷たい水の表面に消えてしまおうとしているのだ。 君の頭がしびれて行くのか、世界がしびれて行くのか、ほんとうにわからなかった。恐ろしい境界に臨んでいるのだと幾度も自分を警 めながら、君は平気な気持ちでとてつもないのんきな事を考えたりしていた。そして君は夜のふけて行くのも、寒さの募るのも忘れてしまって、そろそろと山鼻のほうへ歩いて行った。
有島武郎 / 生まれいずる悩み 青空文庫
僕はこのブランコ台を眺め、忽ち絞首台を思い出した。
芥川竜之介 / 歯車 青空文庫
生を呪 うよりも死が願われるような思い
有島武郎 / 或る女(前編) 青空文庫
そのころから葉子はしばしば自殺という事を深く考えるようになった。《…略…》肉体の生命を絶 つ事のできるような物さえ目に触れれば、葉子の心はおびえながらもはっと高鳴った。薬局の前を通るとずらっとならんだ薬びんが誘惑のように目を射た。看護婦が帽子を髪にとめるための長い帽子ピン、天井の張ってない湯殿 の梁 、看護婦室に薄赤い色をして金 だらいにたたえられた昇汞水 、腐敗した牛乳、剃刀 、鋏 、夜ふけなどに上野 のほうから聞こえて来る汽車の音、病室からながめられる生理学教室の三階の窓、密閉された部屋 、しごき帯、……なんでもかでもが自分の肉を喰 む毒蛇 のごとく鎌首 を立てて自分を待ち伏せしているように思えた。
有島武郎 / 或る女(後編) 青空文庫
私も荒海に身を投げて自殺して、あの男へ情熱を見せてやろうかしらとも思う
林芙美子 / 新版 放浪記 青空文庫
私が死んでしまえば、誰よりもお母さんが困るのだもの……。
林芙美子 / 新版 放浪記 青空文庫
早く刺されたいと、十和子の手で解放されたいと、心待ちにしている
沼田 まほかる「彼女がその名を知らない鳥たち (幻冬舎文庫)」に収録 amazon
深まりゆく秋の中でもうすでに、友子は死にはじめていた。友子の心にはもう誰のどんな言葉もちゃんと届かず、友子しかいなかった。
吉本ばなな / サンクチュアリ「うたかた/サンクチュアリ」に収録 amazon
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