月の表現・描写・類語
月が金色の油をといたように光る
林 芙美子 / 林芙美子文庫〈〔第9〕〉松葉牡丹 amazon
月が、うらうらと靡(なび)いた霧の中に、まるで爪の痕かと思うほど、かすかに白く浮んでいる
芥川 龍之介 / 蜘蛛の糸・杜子春 amazon
月がオレンジのように黄色い
大仏 次郎 / 雪崩 (1953年) amazon
鎌の形をした下弦の月が、中空に舞台のバックのように釘付けになっている
徳永 直 / 太陽のない街 amazon
まだ光を含まない繊月(せんげつ)が、透きとおるような白さで浮いている
永井 路子 / うたかたの amazon
月が青い氷のなかの刃のように澄み出る
川端 康成 / 雪国 amazon
マシマロのように溶けてしまいそうに柔かい月が芝居の書割のようにぼんやりと浮かんでいる。
林 芙美子 / 女性神髄「女性神髄 (1949年) (養徳叢書〈日本篇 第45〉)」に収録 amazon
あの月、大根みたいじゃない? 切り損った薄切りの大根
向田 邦子 / 大根の月「思い出トランプ (新潮文庫)」に収録 amazon
剃刀の尖(さき)ででも切ッたような薄い月
小杉 天外 / 初すがた amazon
日の丸のように大きな月
林 芙美子 / 耳輪のついた馬「風琴と魚の町/清貧の書 (新潮文庫 は 1-4)」に収録 amazon
するどく傾(かし)いだ焔のような月の面
瀧井 孝作 / 無限抱擁 amazon
藤色の空に物憂い月が出て居る。卯の花のように白い白い月が。
石坂 洋次郎 / 若い人 amazon
細い、一枚の歯のような白い月
倉橋 由美子 / 霊魂「夢の通い路 (講談社文庫)」に収録 amazon
風に拭われたような下弦の月
徳永 直 / 太陽のない街 amazon
新月がキラキラと、紋章のように輝いている。
岩田 豊雄 / 沙羅乙女「獅子文六作品集〈第4巻〉沙羅乙女・信子 (1958年)」に収録 amazon
冬であるのに、新月は匂うように白金の眉を描いていた。
岩田 豊雄 / 沙羅乙女「獅子文六作品集〈第4巻〉沙羅乙女・信子 (1958年)」に収録 amazon
まるでついさっき灰の山をくぐり抜けてきたみたいに全体が不思議な白みを帯びていた
村上 春樹 / 1Q84 BOOK 1 amazon
月がときどき雲間から顔を見せるようになった。世界中の海がその潮の流れを調整していた。
村上 春樹 / 1Q84 BOOK 1 amazon
(白昼の月)その無感覚な灰色の岩塊は、まるで目に見えぬ糸にぶらさげられたようなかっこうで、所在なさそうに空の低いところに浮かんでいた。そこには何かしら人工的な雰囲気が漂っていた。ちょっと見たところ、芝居の小道具で使われる作り物の月のように見えた。しかしもちろんそれは本物の月だった。
村上 春樹 / 1Q84 BOOK 2 amazon
月は相変わらず寡黙だった。
村上 春樹 / 1Q84 BOOK 2 amazon
間違いない。月は二個ある。 ひとつは昔からずっとあるもともとの月であり、もうひとつはずっと小振りな緑色の月だった。それは本来の月よりかたちがいびつで、明るさも劣っていた。行きがかりで押しつけられた、だれにも歓迎されない、貧しく醜い遠縁の子供のように見えた。
村上 春樹 / 1Q84 BOOK 2 amazon
(月は、)深く考え抜かれたあとの句読点のように、あるいは宿命が与えたほくろのように、それは無言のうちに揺らぎなく、夜空のひとつの場所に自らの位置を定めていた。
村上 春樹 / 1Q84 BOOK 2 amazon
ススキの野原の上に黙して浮かび、穏やかな湖面に白い丸皿となって漂い、寝静まった家屋の屋根を密やかに照らすあの月だ。満ち潮をひたむきに砂浜に寄せ、獣たちの毛を柔らかく光らせ、夜の旅人を包み護るあの月だ。ときには鋭利な三日月となって魂の皮膚を削ぎ、新月となって暗い孤絶のしずくを地表に音もなく滴らせる、あのいつもの月だ。
村上 春樹 / 1Q84 BOOK 3 amazon
ビルのすぐ上に浮かんだ月を言葉もなく見つめている。それが昇ったばかりの新しい太陽に照らされて、夜の深い輝きを急速に失い、空にかかったただの灰色の切り抜きに変わってしまうまで。
村上 春樹 / 1Q84 BOOK 3 amazon
日が暮れて、金色の月が闇の中に浮かび上がる
小川 洋子「妊娠カレンダー (文春文庫)」に収録 amazon
頭上にはのっぺりと薄い半月が、誰かの忘れ物のようにぽつんと置かれていた。
新海 誠「小説 君の名は。 (角川文庫)」に収録 amazon
漆黒の空に錐で穴をあけたようなやけに鮮明な月が、私たちを見下ろしていた。
村田 沙耶香「しろいろの街の、その骨の体温の」に収録 amazon
月は高く明るく、星をかき消して夜空を渡ってゆく。満月だった。
吉本 ばなな / 満月 キッチン2「キッチン (角川文庫)」に収録 amazon
大きい月のまわりに更に大きい暈 がかかって、
宮本百合子 / 伸子 青空文庫
月が風に吹かれているようで、歪んだ高い窓から色々な光の虹 が私には見えてくる。
林芙美子 / 新版 放浪記 青空文庫
(赤い月)赤い月が墓地に出ていた。火のついた街では氷を削るような音がしている。
林芙美子 / 新版 放浪記 青空文庫
虚空に浮いている幸福な金貨のような月の光り
林芙美子 / 新版 放浪記 青空文庫
白い月が賢いみなしごのように寡黙に空に浮かんでいた。
村上春樹「スプートニクの恋人 (講談社文庫)」に収録 amazon
黴びたような色あいの半月が浮かんでいる。
村上春樹「スプートニクの恋人 (講談社文庫)」に収録 amazon
(昼の月)ビルの上にうす青い空があり、白い透き通った半月形の月が浮かんでいた。
向田邦子 / 大根の月「思い出トランプ(新潮文庫)」に収録 amazon
(駕籠の中から見る月)真黒な 梢 の上に出ている月が駕籠にあわせて西へ西へと動くように見える。その月の色は 凄まじかった。
遠藤周作「沈黙(新潮文庫)」に収録 amazon
西空に懸った細い月は、 紐 で 繋がれたように、太陽の後を追って沈んで行った。
昇平, 大岡「野火(のび) (新潮文庫)」に収録 amazon
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