日本語表現インフォ > 風景表現 > 空・中空 > 打ち上げ花火
打ち上げ花火の表現・描写・類語
花火は一滴一滴が息を呑むほど煌いて、大輪の雫はたちまち消えてしまった。
宮本輝 / 二十歳の火影 amazon
よく晴れた夜空を覆い尽くすように、巨大な菊型の花火が炸裂した。手を伸ばせば届きそうなほどの近さだった。光の玉が一瞬のうちに視野いっぱいにまで広がってゆく。きらきらとした火の粉が今にも顔面へ降りかかってきそうだった。横に目をやると、浅倉佐知子が瞳を大きく開けて空を見つめていた。花火が赤や緑へと色彩を変えるたびに、菊や滝が空一面に広がるたびに、浅倉の頬は様々な色に変化していった。
瀬名 秀明 / パラサイト・イヴ amazon
沿道から夜空を見上げる人達の顔は、赤や青や緑など様々な色に光ったので、彼等を照らす本体が気になり、二度目の爆音が鳴った時、思わず後ろを振り返ると、幻のように鮮やかな花火が夜空一面に咲いて、残滓を煌めかせながら時間をかけて消えた。自然に沸き起こった歓声が終るのを待たず、今度は巨大な柳のような花火が暗闇に垂れ、細かい無数の火花が捻じれながら夜を灯し海に落ちて行くと、一際大きな歓声が上がった。
又吉 直樹 / 火花 amazon
舞台とは反対の方面で、しきりに花火を揚げる。花火の中から風船が出た。帝国万歳とかいてある。天主の松の上をふわふわ飛んで営所のなかへ落ちた。次にぽんと音がして、黒い団子が、しゅっと秋の空を射抜くように上がると、それがおれの頭の上で、ぽかりと割れて、青い煙が傘の骨のように開いてだらだらと空中に流れ込んだ。風船がまた上がった。
夏目 漱石 / 坊っちゃん amazon
夜空に花火が咲く。花火は好きだ。色とりどりの光を空にぶちまけて咲く、あの一瞬がいい。消えたあと、しんと静まり、いつもより黒く広く感じる空がいい。
あさの あつこ「ガールズ・ブルー (文春文庫)」に収録 amazon
つぎつぎと、絶えることなく花火が上がる。不況にあえぐこの街は、年に一度の夏祭りに、かなりの予算を使う。半分自棄のように、花火を打ち上げるのだ。
あさの あつこ「ガールズ・ブルー (文春文庫)」に収録 amazon
吉川英治 / 銀河まつり 青空文庫
(八寸玉、花火職人)二つに割ってみれば、ちょうど人間の脳を解剖 してみたと同じに、大脳や小脳や血漿 や細胞や、微妙な物体の機構がくるんであるのだった。誰がこれを生き物でないといえるだろうか。七は、膝にのせてみて、つくづくとそう思った。 この中には、おれの骨もけずり込まれている。血もはいっている、癇癪 すじも涙も詰まっている、いや恋さえはいっているんだ。――古屋敷の床下の土からとった物や死んだお千代後家の脂 までも。 ――無理やねえ、雨気をもった暗い晩、こんなのがあがるとひゅッと泣いて、青い火が降るとぞっとするようなことがあらあ。やっぱりこいつあ化物の類だろうよ。 七は、自分の作った八寸玉の、その重量にさえ、一種の気味わるさを感じるのだった。
吉川英治 / 銀河まつり 青空文庫
吉川英治 / 銀河まつり 青空文庫
この玉から彼が苦心の赤光 が放てなかったら
吉川英治 / 銀河まつり 青空文庫
胸のひろがるような爆音が、同時に、初秋の夜空をいっぱいにどかアんと鳴った。五ツの銀光星が北斗のように斜めに浮游することしばらく、やがて、その五ツの星が個々にばらばらと炸裂 すると、あざやかな光傘をサッと重ねて、冠 、鏡台 、姥捨 の山々を真っ青に浮かせて見せたかと思うと、その一つの星の色が、臙脂 から出た人魂のように、ぽかあ、と瞬間――ほんの瞬間、真っ赤な光を千曲川の水面に映した。 ――夢だ! 夢みるような気もちなのだ。
吉川英治 / 銀河まつり 青空文庫
ツツツツと細い火の柱が無数に空へつきぬけた。凄まじい爆音は絶えまなく空に裂ける! そして、ぱあと空いちめんが花火になった。流星、狂い獅子 、七ツ傘、柳、五葉牡丹 、花ぐるま。 花火に重なる花火、爆音につづく爆音、滅茶滅茶な火の乱舞、光の狂射、色の躍り、善光寺の町はあらゆる色に変って明滅した。空も地も気をそろえて気が狂 ったような瞬間が起った。
吉川英治 / 銀河まつり 青空文庫
末遠いパノラマのなかで、花火は星水母 ほどのさやけさに光っては消えた。
梶井基次郎 / 城のある町にて 青空文庫
(遠くに見える花火は)どんな手品師も敵 わないような立派な手品だったような気がした。
梶井基次郎 / 城のある町にて 青空文庫
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