生まれ育った土地の表現・描写・類語

僕は18年間、そこで実に多くを学んだ。街は僕の心にしっかりと根を下ろし、想い出の殆んどはそこに結びついている。

ようやく故郷の地を踏んだ。 　あんまり長いことはなれていたせいで、懐かしいという感慨もわかなかった。

初夏になると全体が真っ黄になるくらい夏蜜柑がなる故郷

（以前住んでいた町を歩くと）一軒二軒、昔と変わらない家が、新しい家に挾まれて残っていた。

（以前住んでいた町を歩く）彼は往来に立ち竦（すく）んだ。十三年前の自分が往来を走っている！　――その子供は何も知らないで、町角を曲って見えなくなってしまった。彼は泪（なみだ）ぐんだ。何という旅情だ！　それはもう嗚咽（おえつ）に近かった。

見覚えのある屋根、見覚えのある倉庫、かつて自分の住居であった海辺の朽ちた昔の家が、五年前の平和な姿のままだ。何もかも懐しい姿である。少女の頃に吸った空気、泳いだ海、恋をした山の寺、何もかも、逆もどりしているような気がしてならない。

昔通っていた学校まで足を延ばしてみたり、湖畔や旧市街を散歩したりしていると、自分の中にまだ残っていた十代の頃の感情が蘇って来るようだった。