日本語表現インフォ > 感情表現 > 悲しみ > 「心」の字を含む悲しみ
「心」の言葉を含む悲しみの表現・描写・類語
希望なき零落の海から希望なき安心の島にと漂着する
国木田 独歩 / 武蔵野 amazon
(死ぬことばかり考えていた日々)その頃は、ただじっと深く自分の内奥を見つめていれば、心臓はやがて自然に停止してしまいそうに思えたものだ。精神を鋭く集中し、一ゕ所にしっかり焦点を結んでいれば、レンズが陽光を集めて紙を発火させるのと同じように、心臓に致命傷を与えられるに違いないと。彼はそうなることを心から期待していた。しかし彼の意に反して、何ゕ月経っても心臓は停まらなかった。それほど簡単に心臓は停まらないものなのだ。
村上 春樹 / 色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年 amazon
十七歳の心に巣食う、この何者にもなれないという枯れた悟り
綿矢 りさ / インストール amazon
絶望が、心の中にぎざぎざと鋸(のこぎり)のような歯を立てる。
平林 たい子 / 施療室にて「こういう女・施療室にて (講談社文芸文庫)」に収録 amazon
(日記の)全体が持っている悲しい心が、通って行く雲の影のように彼の胸を閉ざして行った。
大仏 次郎 / 宗方姉妹 (1954年) amazon
ずっと消えることなく心に掛かっていた鬱屈の霧
横山 秀夫「クライマーズ・ハイ (文春文庫)」に収録 amazon
同情されるのって、真冬に飲む温かなココアみたいに、ほっとする心地よさがある。言い方にもよるけど、「だいじょうぶ?」と心配されると、気分がほこほこするときもある。
あさの あつこ「ガールズ・ブルー〈2〉 (文春文庫)」に収録 amazon
からだの内側で直接心を摑まれたように、私の全身がぎゅっと苦しくなる。
新海 誠「小説 君の名は。 (角川文庫)」に収録 amazon
〝かわいそう〟という言葉は嫌われがちだ。私たちの心には、この言葉に該当する感情が確実にあるのに、なかなか使いたがらないし、使われることも嫌う。
綿矢 りさ / かわいそうだね?「かわいそうだね? (文春文庫)」に収録 amazon
泣きたかった。隣の木にいるヨキに笑われたくない一心でこらえる。ぐっと歯を食いしばり
三浦 しをん「神去なあなあ日常 (徳間文庫)」に収録 amazon
有島武郎 / 生まれいずる悩み
悲しい心もちばかりが、たちまち私の心を凍らせてしまう。
芥川龍之介 / 袈裟と盛遠
遠い昔のような、心もちがする。
芥川龍之介 / 偸盗
足を進めることを、生きてゆくことを心底投げ出したかった。きっと明日が来て、あさってが来て、そのうち来週がやってきてしまうに違いない。それをこれほど面倒だと思ったことはない。きっとその時も自分が悲しい暗い気分の中を生きているだろう、そのことが心からいやだった。
吉本 ばなな / 満月 キッチン2「キッチン (角川文庫)」に収録 amazon
彼が死んだ夜から私の心は別空間に移行してしまい、どうしても戻ってこれない。昔のような視点で、どうしても世界を見ることができない。頭が不安定に浮き沈みして、落ち着かずにぼんやりいつも重苦しい。
吉本 ばなな / ムーンライト・シャドウ「キッチン (角川文庫)」に収録 amazon
なるべくいたずらにひまな時間を作らないように必死で努力した。 それはそれは不毛な努力だ。本当はしたいことなんて、なにひとつありはしなかった。等に会いたかった。しかし、私はどうしてもなにか手や体や心を動かし続けなくてはいけない気がした。そして、この努力を無心に続ければいつかはなにか突破口につながると思いたかった。
吉本 ばなな / ムーンライト・シャドウ「キッチン (角川文庫)」に収録 amazon
(喪失感をまぎらすためにジョギングを始めた私と亡くなった彼女のセーラー服を着て過ごす柊という男)彼のセーラー服は私のジョギングだ。全く同じ役割なのだ。私は彼ほど変わり者でないので、ジョギングで充分だっただけのことだと思う。彼はそのくらいでは全くインパクトに欠けて自分を支えるにはもの足りないのでバリエーションとしてセーラー服を選んだ。どちらもしぼんだ心にはりを持たせる手段にすぎない。気をまぎらわせて時間をかせいでいるのだ。 私も柊もこの二カ月で、今までしたことのない表情をするようになった。それは失ってしまったものを考えまいと戦う表情だった。ふっと思い出して突然に孤独が押してくる闇の中に立っていると知らず知らずのうちにそういう顔になってしまうのだ。
吉本 ばなな / ムーンライト・シャドウ「キッチン (角川文庫)」に収録 amazon
なつかしさが胸にこみ上げ、その姿形のすべてが心の中にある思い出の像と焦点を合わせる。
吉本 ばなな / ムーンライト・シャドウ「キッチン (角川文庫)」に収録 amazon
感傷的になった葉子の心は涙に動こうとした。
有島武郎 / 或る女(後編)
自分の心を自分の涙にひたしきって泣いた
有島武郎 / 或る女(後編)
太陽が消えてなくなったような寒さと闇 とが葉子の心におおいかぶさって来た。
有島武郎 / 或る女(後編)
隙間風のような寂しさが伸子の心を通った。
宮本百合子 / 伸子
がらんと空虚に銷沈 しがちな心
宮本百合子 / 伸子
暗愁が彼の心を翳 っていった。
梶井基次郎 / 冬の日
手おくれになった手術のようで、死を待つばかりの心細さ
林芙美子 / 新版 放浪記
〝助かるまい。本人も、助かりたいとは思うまい〟 身内ばかりだというのに、しかもみな彼女を愛していたのに、その考えは私達がすわっている冷たいビニールのソファーのまわりを離れず、まるで大声でくりかえしているように心に響き、病院の白く 空ろな壁にこだましていた。
吉本 ばなな「アムリタ〈上〉 (新潮文庫)」に収録 amazon
(不仲な姑の死)あんなに大きな存在だったのに。 魂を込めて、全力でぶつかっていた相手だったのに。 尋恵は、自分の戦争が唐突に幕を下ろしたことに心から虚脱した。そこに勝者も敗者もいなかったことを噛み締め、ただ寂しいと思った。
雫井 脩介「火の粉 (幻冬舎文庫)」に収録 amazon
ソファに腰を下ろすと、放心したように 項垂れた。
平野 啓一郎「マチネの終わりに (文春文庫)」に収録 amazon
目に映るものはそこにたまたまある現実の風景でしかなくなり、聞こえてくるのは現実の音だけだった。あんなに心の中で豊かに息づいていたはずの世界は、乳色の霧にまかれたように、その輪郭すら見えなくなっていた。
小池真理子「愛するということ (幻冬舎文庫)」に収録 amazon
泣きそびれてしまったのだ。ただ、心ががらんとした。
吉本ばなな / サンクチュアリ「うたかた/サンクチュアリ」に収録 amazon
(自殺した友子)そしてわかった。自分が実は友子を恨んでいるということ。あの夜彼女は自分の言いたいことだけ言い、思い残すことなくこの世を去り、智明の心だけがあの夜の中に置き去りにされたこと。
吉本ばなな / サンクチュアリ「うたかた/サンクチュアリ」に収録 amazon
彼は恐ろしく惨めな気持に絶えず追いつめられ、追いつめられ、そして安々とは息もつけない心の状態で来た
直哉, 志賀「暗夜行路 (新潮文庫)」に収録 amazon
謙作 はその冬、初めての児を失い、前年とは 全 で 異 った心持で、この春を過して来た。都踊も八重桜も、去年はそのまま楽しめたが、この春はそれらの奥に何か不思議な淋しさのある事が感ぜられてならなかった。
直哉, 志賀「暗夜行路 (新潮文庫)」に収録 amazon
彼の心臓は悲しみを絞り出しながら、縮んだ。
山田詠美「新装版 ハーレムワールド (講談社文庫)」に収録 amazon
心の中に苦い水が湧いて来るのを感じた。目には新しい涙が滲む。その涙は、聞きわけのよい薬のようにクラウスの心に染み込み、毒を流した。
山田詠美「新装版 ハーレムワールド (講談社文庫)」に収録 amazon
ぼくの心は白々とむなしかった。
遠藤 周作「海と毒薬 (角川文庫)」に収録 amazon
その時の悲しみと恐ろしさは何と表現していいかわかりませんね。心に釘か何かを打ち込まれるみたいな感じでした。
百田尚樹「永遠の0」に収録 amazon
(返ってくるはずのない父を待って)何台ものバスが過ぎた。乗客は次第に減って行った。一台をやりすごすたびに、恭一の心もうつろになって行った。からっぽのバスが来ると、胸もからっぽになった。
浅田次郎 / 角筈にて「鉄道員(ぽっぽや) (集英社文庫)」に収録 amazon
鋭い悲しみが私の心を貫いた。
昇平, 大岡「野火(のび) (新潮文庫)」に収録 amazon
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