肉欲の牙 を鳴らして集まって来る男たちに対して、(そういう男たちが集まって来るのはほんとうは葉子自身がふりまく香 いのためだとは気づいていて)葉子は冷笑しながら蜘蛛 のように網を張った。近づくものは一人 残らずその美しい四 つ手網 にからめ取った。葉子の心は知らず知らず残忍になっていた。ただあの妖力 ある女郎蜘蛛 のように、生きていたい要求から毎日その美しい網を四つ手に張った。
有島武郎 / 或る女(前編) ページ位置:67% 作品を確認(青空文庫)
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魔性の女
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前後の文章を含んだ引用
......りなければ生きて行けないように、葉子は生の喜びの源を、まかり違えば、生そのものを虫ばむべき男というものに、求めずにはいられないディレンマに陥ってしまったのだ。 肉欲の牙 を鳴らして集まって来る男たちに対して、(そういう男たちが集まって来るのはほんとうは葉子自身がふりまく香 いのためだとは気づいていて)葉子は冷笑しながら蜘蛛 のように網を張った。近づくものは一人 残らずその美しい四 つ手網 にからめ取った。葉子の心は知らず知らず残忍になっていた。ただあの妖力 ある女郎蜘蛛 のように、生きていたい要求から毎日その美しい網を四つ手に張った。そしてそれに近づきもし得ないでののしり騒ぐ人たちを、自分の生活とは関係のない木か石ででもあるように冷然と尻目 にかけた。 葉子はほんとうをいうと、必要に従うという......
単語の意味
香(こう)
香・・・かいでいい匂いがするもの。いい匂いがする物質(香料)を練り固めたもの。火をつけて煙を立ちのぼらせて、香りをたたせるもの。ねり香。お香。
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何かに寄りすがらなければ生きて行けない女
林芙美子 / 新版 放浪記
ああいう人は男を自分という泥沼の中に引き込んで逃がさない。
吉本 ばなな「アムリタ(下) (新潮文庫)」に収録 amazon
恋の場面を技巧化し芸術化するに巧みであった
有島武郎 / 或る女
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楊白花のように美しいひと
林芙美子 / 新版 放浪記
十八世紀の貴婦人の概念が薔薇色のサングラスをかけて今に蘇ったと言いたいほど優雅で上品な夫人
倉橋 由美子 / 倉橋由美子の怪奇掌篇 amazon
色の白い、山百合の花のようにやさしく、香り高い感じの女性
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