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（春の風景の）あまりのみずみずしさに、私は自分の内側がかさかさしていることを感じずにはいられなかった。私の心にどうしても春の風景は入ってこない。シャボン玉のようにくるくると表面に映るだけだ。人々はみな髪を光にすかして幸福そうにすれ違ってゆく。すべては息づいて、柔らかな陽ざしに守られながら輝きを増してゆく。生命にあふれ出すきれいな光景の中で、私の心は冬枯れの街や、夜明けの川原を恋しく思う。このまま、こわれてしまいたいと思う。
吉本 ばなな / ムーンライト・シャドウ「キッチン (角川文庫)」に収録 ページ位置：43% 作品を確認（amazon）
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せっかち・余裕がない性格
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前後の文章を含んだ引用
......りの風が顔に吹いてきて心地良かった。街路樹もかすかに幼いみどりの葉をつけはじめていた。空の淡いブルーがうっすらとかすんで、はるか街の向こうへと続いていた。 そのあまりのみずみずしさに、私は自分の内側がかさかさしていることを感じずにはいられなかった。私の心にどうしても春の風景は入ってこない。シャボン玉のようにくるくると表面に映るだけだ。人々はみな髪を光にすかして幸福そうにすれ違ってゆく。すべては息づいて、柔らかな陽ざしに守られながら輝きを増してゆく。生命にあふれ出すきれいな光景の中で、私の心は冬枯れの街や、夜明けの川原を恋しく思う。このまま、こわれてしまいたいと思う。 並ぶ水筒を背にして、うららは立っていた。ピンクのセーターを着て背すじをしゃんと伸ばし、人混みの中にそうしていると、同い歳くらいに見えた。「こんにちはー。」 と......
単語の意味
玉のよう・珠のよう（たまのよう）
冬枯れ（ふゆがれ）
光景（こうけい）
風景（ふうけい）
玉のよう・珠のよう・・・真珠のよう。宝石のよう。張りがあって美しい。なめらかな。
冬枯れ・・・冬に草木が枯れること。また、草木が枯れた、寒々とした冬の景色。
光景・・・１．目に前に広がる景色。そこに見える景色や物事のありさま。景色。様子。
２．日の光。
２．日の光。
風景・・・自然の景色。目の前に広がる眺め。その場の情景。
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