あるときには時間は耐えがたいほどゆっくりと思わせぶりに流れ、そしてあるときにはいくつもの過程が一気に跳び越えられてしまう。

じかん【時間】①時の流れの二点間（の長さ）。時の長さ。②空間と共に人間の認識の基礎を成すもの。人間が平等に与えられると思いこんでいるものの一。人間が正確に把握できていると安心しているものの一。人生の充実と比例して進みが速くなる。退屈と比例して進みが遅くなり、授業中には、止まっていると錯覚を受けることもある。

「人間は時間を直線として捉える。長いまっすぐな棒に刻み目をつけるみたいにね。こっちが前の未来で、こっちが後ろの過去で、今はこのポイントにいる、みたいに。《…略…》でも実際には時間は直線じゃない。どんなかっこうもしていない。それはあらゆる意味においてかたちを持たないものだ。でも僕らはかたちのないものを頭に思い浮かべられないから、便宜的にそれを直線として認識する。《…略…》つまり時間を永遠に続く一直線として捉え、そのような基本的認識のもとに行動をしてきた。そしてこれまでのところ、そうすることにとくに不都合や矛盾は見いだせなかった。だから経験則としてそれは正しいはずだ」

「よりあつまって形を作り、捻れて絡まって、時には戻って、途切れ、またつながり。それが組紐。それが時間。それが、ムスビ」　透明な水の流れを、俺は考えるともなく想像する。石にぶつかって分かれ、他と混じり、また合流し、全体としてはひとつに繫がったもの。

噛みついてくるような勢いで慎一が言う。

砂時計が無慈悲に滴り落ちていく

飛鳥のごとく駈け寄った影

トンビがひと鳴きするくらいの、あっという間

小動物みたいにすばしっこい