学ぶことが砂のように多すぎて、岩をつかめない。同じ調律を見ても、秋野さんならば、がし、がし、と岩場を越えていく足掛かりを得られたかもしれないのだ。《…略…》たくさんの砂が押し寄せてきて、僕は溺れそうになりながら、それを一粒でもつかもうと必死だった。
宮下 奈都「羊と鋼の森 (文春文庫)」に収録 ページ位置:36% 作品を確認(amazon)
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前後の文章を含んだ引用
......て近づけるようなものじゃない。「僕じゃもったいなかったです」「何が」 秋野さんなら、もっともっと多くのことを学ぶことができただろう。遠く離れたところにいる僕は、学ぶことが砂のように多すぎて、岩をつかめない。同じ調律を見ても、秋野さんならば、がし、がし、と岩場を越えていく足掛かりを得られたかもしれないのだ。「秋野さん、一度、板鳥さんの調律を見てみてください」 僕が言うと、秋野さんは少し驚いた顔をして、それからすぐに笑い出した。「おめでたいお人好しだ」 そう言ってか......<中略>......あるんだ。ま、聞いたら、ないって言うんだろうけど」 頼んでも、同行させてはくれないだろうと思った。僕も、望まない。板鳥さんから、柳さんから、羊から、ピアノから、たくさんの砂が押し寄せてきて、僕は溺れそうになりながら、それを一粒でもつかもうと必死だった。 仕事を定時で上がって、ホールへ向かう。 ホールは昨日とは雰囲気が違った。昨日の、ひっそりした森のような空間も好きだが、多くの人でにぎわう今日はいきいきと葉を茂......
単語の意味
砂(すな)
砂・・・岩石が細かくなったもの。岩が徹底的に砕かれたもので有機物が含まれていない。そのため、土(有機物が含まれる)と違って、植物は育ちにくい。砂場や砂漠に雑草が生えにくいのもこのため。
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(足元に書き付けた難解な数式)今、私たちの足元にだけ、宇宙の秘密が透けて浮かび上がっているかのようだった。神様の手帳が、私たちの足元で開かれているのだった。
小川洋子「博士の愛した数式 (新潮文庫)」に収録 amazon
学ぶことが砂のように多すぎて、岩をつかめない。同じ調律を見ても、秋野さんならば、がし、がし、と岩場を越えていく足掛かりを得られたかもしれないのだ。《…略…》たくさんの砂が押し寄せてきて、僕は溺れそうになりながら、それを一粒でもつかもうと必死だった。
宮下 奈都「羊と鋼の森 (文春文庫)」に収録 amazon
(素数の同じような話を何度も聞いていると新たな発見がある)同じ素数の話(素数が無限にあるかどうかの証明や、素数を使った暗号の作り方や、巨大素数、双子素数、メルセンヌ素数、等など)にしても、ちょっとした構成の変化により、自分の勘違いに気づかされたり、新しい発見ができたりした。天気や声の調子が違うだけで、素数に射す光の色が変化して見えた。
小川洋子「博士の愛した数式 (新潮文庫)」に収録 amazon
(素数)1と自分自身以外では割り切れない、一見頑固者風の数字
小川洋子「博士の愛した数式 (新潮文庫)」に収録 amazon
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