美津子の声音に、江口は今まで聞いたことのない湿りと甘さを感じた。
向田邦子 / はめ殺し窓「思い出トランプ（新潮文庫）」に収録 ページ位置：86% 作品を確認（amazon）
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甘えた声・鼻声
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......に歩いていった。 何度も来てよく知っているという足のさばきであり速さだった。 診察で胸をひろげている間は、江口も律子も隣りの茶の間で坐っていた。痛みの説明をする美津子の声音に、江口は今まで聞いたことのない湿りと甘さを感じた。 襖をあけて隣りの部屋へ入ってゆきたいという小さな衝動を押えた。 その夜、江口はもうひとつ裏切られた。 台所で水を飲んでいた律子が、やはり水を飲みに来た江口に、......
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