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黙る・沈黙の表現・描写・類語
透明の樹脂のような分厚い沈黙に閉じ込められる
宮部 みゆき / とり残されて amazon
牛のように押し黙って答えない
遠藤 周作 / 沈黙 amazon
少しの間、沈黙の絵の具が流れた。その色はきれいなグレイだった。
大原 まり子 / イル&クラムジー物語 amazon
沈黙が流れる。周囲の客の声が急にはっきりと耳に入ってきた。
三上 延 / ビブリア古書堂の事件手帖 ~栞子さんと奇妙な客人たち~ amazon
奥行きの全くない、ただの板切れでも耳に押しつけているような沈黙
黒井 千次 / 群棲 amazon
風の向きが変わったように、ふっつりと話をやめる
小島 信夫 / アメリカン・スクール amazon
厚い石壁のような沈黙
村上 春樹 / 色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年 amazon
部屋に降りた沈黙は息苦しく、深い悲しみに満ちていた。そこにある無言の思いは、地表をえぐり、深い湖を作り出していく古代の氷河のように重く、孤独だった。
村上 春樹 / 色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年 amazon
(沈黙して考え出した友人を見て)夜の闇が何処かから部屋の中に忍び込んできて、羊水のように彼のスマートな体をすっぽりと包んでいるみたいに僕には感じられた。
村上 春樹 / ダンス・ダンス・ダンス(下) amazon
(店内で二人の沈黙が続いて、)音楽が消えると、人々の話し声が奇妙な硬質さを帯びたように感じられた。それは漠然とした硬質さだった。実体が柔らかいのに、存在の状況が硬質なのだ。そばに来るまではとても固そうに見える。でも体に当たると柔らかく砕けてしまう。それは波のように僕の意識を打っていた。ゆっくりとやってきて意識を打ち、そしてひいていった。それが何度も何度も繰り返された。
村上 春樹 / ダンス・ダンス・ダンス(下) amazon
いったん言葉が途切れると、沈黙はまるで決められた運命のように、その部屋に重く腰を据えた。
村上 春樹 / 1Q84 BOOK 1 amazon
(黙ると辺りがとんでもなく静かになって、)この男が抱いている感情が真空のような役割を果たして、あたりのすべての音波を吸収してしまうのかもしれない。
村上 春樹 / 1Q84 BOOK 2 amazon
沈黙がある。まだ文字が彫られていない石版のような沈黙だ。
村上 春樹 / 1Q84 BOOK 3 amazon
石膏のように無言だった。
曽野 綾子 / 遠来の客たち amazon
蓋をした田螺(たにし)のように松尾医師の口はそれきり動かなかった。
和田伝 / 沃土「和田伝全集 第2巻」に収録 amazon
牛のようにおし黙って
藤沢 周平 / 麦屋町昼下がり amazon
雨に濡れた鹿苑寺の大きな黒い瓦屋根のような沈黙の重みが私の上に在った。
三島 由紀夫 / 金閣寺 amazon
鬼界ヶ島に流された者同士のように、時々お互いに顔を挙げて窓の透けたところを見るだけで、二人はまた枕に頭を沈める。
林 芙美子 / 骨「林芙美子傑作集 (1951年) (新潮文庫〈第201〉)」に収録 amazon
艶消のような柔かい沈黙
石坂 洋次郎 / 若い人 amazon
水底のような沈黙
片岡鉄平 / 綱の上の少女
鍵のかかった抽斗(ひきだし)のように黙りこんでいる
池谷 信三郎 / 橋 amazon
化石したようにしんとして
小栗 風葉 / 深川女房 amazon
石で刻まれたみたいに黙ってる
石坂 洋次郎 / 若い人 amazon
貝が蓋をしたように、ぴたりと黙ったりした。
林 芙美子 / 泣虫小僧 amazon
こわれた楽器のような沈黙
安部 公房 / 他人の顔 amazon
まるで中学生を叱る先生のように、むうっと押黙って居られる
森田 たま / もめん随筆 amazon
それきり桜(人名)は口を閉ざした。今日喋る分については、すべて使ってしまったとでもいうように、押し黙った。まるで、本物の桜の樹になったかのように、静かだった。
伊坂 幸太郎 / オーデュボンの祈り amazon
しゃべり過ぎたことを後悔するかのように口をつぐんで
村上春樹「風の歌を聴け (講談社文庫)」に収録 amazon
彼女はしばらく黙った。砂漠のような沈黙の乾きの中に僕の言葉はあっという間もなく飲みこまれ、苦々しさだけが口に残った。
村上春樹「風の歌を聴け (講談社文庫)」に収録 amazon
無口だった。レコードはもう終っていたので、部屋にはひさしに落ちる雨の音と三人が肉を嚙む音の他には何もなかった。
村上 春樹「1973年のピンボール (講談社文庫)」に収録 amazon
しばらく、沈黙があった。郵便配達のバイクが、前の道を素通りしていった。
小川 洋子 / ドミトリイ「妊娠カレンダー (文春文庫)」に収録 amazon
一瞬、沈黙の時間が流れた。
小川 洋子 / 夕暮れの給食室と雨のプール「妊娠カレンダー (文春文庫)」に収録 amazon
それだけ話してしまうと、もう他には何の話題も見つけられなかった。沈黙が風のように流れ込んできた。
小川 洋子 / 夕暮れの給食室と雨のプール「妊娠カレンダー (文春文庫)」に収録 amazon
黙りが重くなってきた
川上 未映子「乳と卵(らん) (文春文庫)」に収録 amazon
その沈黙は私を無限の谷底に陥れるように深く、私の胸を打った
夢野久作 / ドグラ・マグラ 青空文庫
しばらくは三人鼎坐 のまま無言である。
夏目漱石 / 吾輩は猫である 青空文庫
石のような不動の沈黙
有島武郎 / 生まれいずる悩み 青空文庫
口にチャックをする手振りをして
重松 清「流星ワゴン (講談社文庫)」に収録 amazon
部屋は大量虐殺の直後を思わせる重い沈黙に覆われた。
村上 春樹「羊をめぐる冒険」に収録 amazon
二十秒ばかりの沈黙のあとで、僕は彼女の話がもう終っていることに気づいた。
村上 春樹「羊をめぐる冒険」に収録 amazon
男は再び重苦しい沈黙の中に沈み込んだ。
村上 春樹「羊をめぐる冒険」に収録 amazon
「ふうん」と言って男はしばらく黙った。沈黙の質を見定めるような黙り方だった。
村上 春樹「羊をめぐる冒険」に収録 amazon
しばらく沈黙がつづいた。そのあいだに僕はシャツのボタンにからまった糸屑を取り、ボールペンでメモ用紙に星の絵を十三個描いた。
村上 春樹「羊をめぐる冒険」に収録 amazon
沈黙が粒子のように長いあいだ部屋に漂っていた。がっしりとした二重ガラスの窓が都市の騒音を閉めだし、チリチリという古い電気スタンドの音だけが、沈黙の重さを際立たせていた。
村上 春樹「羊をめぐる冒険」に収録 amazon
皮膚がひりひりと痛みそうな沈黙
村上 春樹「羊をめぐる冒険」に収録 amazon
羊男は黙った。彼からそれ以上の言葉を引き出すのは不可能であるように思えた。
村上 春樹「羊をめぐる冒険」に収録 amazon
美しい沈黙をがさつな手でかき乱され
有島武郎 / 或る女(後編) 青空文庫
そう言ったきり、ぷつりと黙った。
松本 清張「点と線 (新潮文庫)」に収録 amazon
対談は愉快な諒解によってではなく、言葉の循環に倦怠して、打ち切られた形であった。
宮本百合子 / 伸子 青空文庫
むっつり黙りこんだ。
宮本百合子 / 伸子 青空文庫
話し疲れた二人は暫 く黙っていた。
岡本かの子 / 河明り 青空文庫
吉川英治 / 銀河まつり 青空文庫
話のつぎ穂を忘れて歩いていた
吉川英治 / 八寒道中 青空文庫
梶井基次郎 / ある心の風景 青空文庫
沈黙った女ってしっかりしているものだ。
林芙美子 / 新版 放浪記 青空文庫
時間が止まった。 きっと神様がその暖かいまなざしで、ちらっとここを見たのだろう。そういう平和だった。永遠の。夜の谷間。
吉本 ばなな「N・P (角川文庫)」に収録 amazon
萃(人名)は首をかしげて、そのまま黙り込んだ。私も黙った。次に何かを言おうとして顔を上げたら、萃は目を閉じていた。
吉本 ばなな「N・P (角川文庫)」に収録 amazon
唄をうたっていた唇をそっとつぼめて、黙ってしまった。
林芙美子 / 新版 放浪記 青空文庫
僕が話し終えると、しばらく二人のあいだに沈黙が下りた。消えた象についての殆んど何のとりかかりもない話のあとにいったいどんな種類の話題を持ちだせばいいのか、僕にも彼女にも見当がつかなかった。彼女はカクテル・グラスの縁を指でなぞり、僕はコースターに印刷された文字を二十五回くらい読みかえした。僕はやはり象の話なんてするべきではなかったのだ。
村上春樹 / 象の消滅「パン屋再襲撃 (文春文庫)」に収録 amazon
妻に「仕事を辞めようと思うんだけど」と切りだしたとき、「そうね」と彼女は言った。その「そうね」というのがどういう意味なのか僕にはよくわからなかったが、それっきり彼女はしばらく黙っていた。
村上春樹 / ねじまき鳥と火曜日の女たち「パン屋再襲撃 (文春文庫)」に収録 amazon
「そうかよ。」 と言って黙った。
吉本 ばなな「アムリタ〈上〉 (新潮文庫)」に収録 amazon
それ以上言葉を重ねようとはしなかった。
雫井 脩介「火の粉 (幻冬舎文庫)」に収録 amazon
雪見はしばらく彼女と沈黙を共有し、それから重い口を開いた。
雫井 脩介「火の粉 (幻冬舎文庫)」に収録 amazon
黙って眺めていると、水島が重ねてきいてくる。
沼田 まほかる「彼女がその名を知らない鳥たち (幻冬舎文庫)」に収録 amazon
むっつり口をつぐむ。
沼田 まほかる「彼女がその名を知らない鳥たち (幻冬舎文庫)」に収録 amazon
重藤がふいに黙り込んだ。 途端に、日下の耳に庭のツクツクボウシの鳴き声が戻ってきた。
翔田 寛「真犯人 (小学館文庫)」に収録 amazon
日下は、言葉を待った。 柳も、息を殺したように黙している。
翔田 寛「真犯人 (小学館文庫)」に収録 amazon
辰川が黙り込んだ。その沈黙が、同じことを思い浮かべていることを物語っていた。
翔田 寛「真犯人 (小学館文庫)」に収録 amazon
彼は堅く口を結んだまま、何も言葉を発しなかった。
平野啓一郎「ある男」に収録 amazon
カクテルを待つ間、城戸は、丁度今流れているらしい、ビリー・プレストンの《キッズ・アンド・ミー》というアルバムのケースを手に取って眺めた。その賑やかな楽曲のただ中で、城戸と美涼との間の沈黙は、心細く 佇んでいた。
平野啓一郎「ある男」に収録 amazon
次に何を聞けばいいのかわからなくなって、口を閉ざした。
小池真理子「愛するということ (幻冬舎文庫)」に収録 amazon
「今日は何時まで?」 「どうしてですか」 「今夜、きみと食事ができるんだったら、ここにある本や雑誌、全部、買うよ」 生ぬるい風が吹きすぎ、男の額部分の髪の毛が風に吹かれてめくれ上がった。
小池真理子「愛するということ (幻冬舎文庫)」に収録 amazon
柿村はしばし黙りこんだ。わたしは辛抱強く次の言葉を待った。
小池真理子「愛するということ (幻冬舎文庫)」に収録 amazon
一通りの話を終えると、しばしの沈黙が訪れた。
池井戸潤「下町ロケット (小学館文庫)」に収録 amazon
「嫌な話ですが、その通りです」 神谷は、ふと言葉を切って、佃たちの反応を待った。
池井戸潤「下町ロケット (小学館文庫)」に収録 amazon
(夜道での会話)もうほとんど立ち止まっている二人を、無灯火の自転車が後ろから追い抜いていく。そこに生まれた小さな風が、沈黙を埋められずに散っていった。
朝井 リョウ「武道館 (文春文庫)」に収録 amazon
(蝉が鳴りしきるお寺で)わたしたちはまるでせみの声に鼓膜を吸い取られたかのように、無口にお寺の精進料理を食べた。
小川洋子 / 完璧な病室「完璧な病室 (中公文庫)」に収録 amazon
(深夜の洗面台の前で二人きりになって思い出話)思い出話が終わると、もうお互いに喋る言葉が見つからなかった。二人の間をこぼれ落ちてゆく時間の音が、水の音とすり変わって、夜の果てまで細く連なっていった。
小川洋子 / ダイヴィング・プール「完璧な病室 (中公文庫)」に収録 amazon
そのときまでに決めておいてよ」 そう言って、希美子は弁当のからあげを口いっぱいに頬張った。これ以上何も話す気はないし、聞く気もないと言わんばかりに。
湊 かなえ「花の鎖 (文春文庫)」に収録 amazon
すみれは 10 秒か 15 秒のあいだ黙っていた。
村上春樹「スプートニクの恋人 (講談社文庫)」に収録 amazon
ミュウは椅子に身体を沈めたまま、ずいぶん長いあいだ黙りこんでいた。語るべき言葉を探しているというよりは、始まりも終わりもない個人的な記憶の中にひたっているみたいに見えた。
村上春樹「スプートニクの恋人 (講談社文庫)」に収録 amazon
二人とも沈黙は少しも苦にならない。
小川 洋子 / 仮名の作家「口笛の上手な白雪姫」に収録 amazon
私は声をあげまいとして手の甲で口を押さえた。
山田太一「飛ぶ夢をしばらく見ない」に収録 amazon
この 闇 のようにただ黙っておられたのですか。
遠藤周作「沈黙(新潮文庫)」に収録 amazon
三人がそれぞれ申し合わせたように口を閉ざしてしまった
宮本 輝 / 螢川「螢川・泥の河(新潮文庫)」に収録 amazon
それきり何も話そうとはしなかった。ふたりは再び黙りこくって、ただ向かい合っていた。
宮本 輝「道頓堀川(新潮文庫)」に収録 amazon
おたがいどちらかが話を切り出すのを待つ
浅田次郎 / うらぼんえ「鉄道員(ぽっぽや) (集英社文庫)」に収録 amazon
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