彼のことばを吸い取るように、じっと耳を澄ます。息を吐くたびに、わたしの沈黙が胸を下りてゆく。何か彼の心を舞い上がらせることばを見つけなければ。
小川洋子 / 揚羽蝶が壊れる時「完璧な病室 (中公文庫)」に収録 ページ位置:62% 作品を確認(amazon)
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気まずい
黙る・沈黙
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前後の文章を含んだ引用
......ターバイクのバックミラーにミコトが映る。彼は丸型の黒縁眼鏡を外してポケットに仕舞う。「目が疲れたの?」「いや。違うよ。」 小さな一言から離れられないこともある。彼のことばを吸い取るように、じっと耳を澄ます。息を吐くたびに、わたしの沈黙が胸を下りてゆく。何か彼の心を舞い上がらせることばを見つけなければ。彼はわたしを見ていない。バックミラーに、別の彼が映っている。わたしは下腹部に力をこめて、沈黙に抵抗する。わたしの内側が、ヌルヌルした感触と一緒に一旦収縮して、そ......
単語の意味
胸(むね)
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黙る・沈黙の表現・描写・類語(声・口調のカテゴリ)の一覧 ランダム5
娘はまるで封をするように僕の唇の上に指を一本置いた。 「質問はしないで」と彼女は言った。
村上春樹 / ねじまき鳥と火曜日の女たち「パン屋再襲撃 (文春文庫)」に収録 amazon
そう言ったきり、ぷつりと黙った。
松本 清張「点と線 (新潮文庫)」に収録 amazon
深い海の底の貝みたいに、どこまでも頑なに沈黙を守っておられる。
村上 春樹 / 1Q84 BOOK 3 amazon
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「胸に嫌悪感を覚える」の表現・描写・類語(声・口調のカテゴリ)の一覧 ランダム5
どうにもなるものではないという苦い諦めが胸に覆いかぶさってくる。
遠藤 周作「海と毒薬 (角川文庫)」に収録 amazon
胸のすき切るまで思い存分笑ってやる
有島武郎 / 或る女
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「心」の言葉を含む嫌な気持ちの表現(声・口調のカテゴリ)の一覧 ランダム5
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震えるような細い吐息をゆっくりと吐き出し
池井戸潤「下町ロケット (小学館文庫)」に収録 amazon
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この 闇 のようにただ黙っておられたのですか。
遠藤周作「沈黙(新潮文庫)」に収録 amazon
大人が心底何気なく楽しめる会話は今この場で生まれる新鮮な会話の泉ではなく、相手の言葉の意味を聞き取り違えないように注意を払う必要もなく、気の利いた返しが素早くひらめく必要もない、ある程度自分の予測通りに会話の筋道が運ぶ、テレビで聞いたか他の人といったん話題にしたかした手垢のついた古いニュースだ。内容に集中しなくて良いときに初めて私たちは会話のキャッチボールを楽しめる。結局はいつも食べなれている家庭の味を、一番おいしいと感じるように。ありきたりのテーマをテーブルの真ん中に差し出し、なんら目新しくないそれを一人一人が順ぐりにくちばしで突つく。
綿矢 りさ / 仲良くしようか「勝手にふるえてろ (文春文庫)」に収録 amazon
声は落ち着いていて、予言や予告に近いものに聞こえた。
伊坂 幸太郎「陽気なギャングが地球を回す (祥伝社文庫)」に収録 amazon
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