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話のつぎ穂を忘れて歩いていた
吉川英治 / 八寒道中 ページ位置:34% 作品を確認(青空文庫)
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黙る・沈黙
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......て、すらりとしていて、この寒々とする夕方にも、朱をふくんだかの唇はせないで、その、情のふかそうな眸やくちもとは、たえず細かい表情を忘れない。  三五兵衛は、つい、話のつぎ穂を忘れて歩いていたが、何かのはずみに、いきなり訊ねた。 「失礼だが、そなたは、仁介殿の娘御か」 「はい、わがまま者で、いねと申します」 「あるじが不在でも、もうこの時刻、ここからは戻れぬから、......
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