ポットを火にかけた。とても濃密なジャスミン茶の香りが部屋に満ちる。 今があって、過去があって、ある雨の朝、私が私とここにいる。そういう感じのおちつきはらった、沈み込むような甘い香りだった。
吉本 ばなな「アムリタ〈上〉 (新潮文庫)」に収録 ページ位置:25% 作品を確認(amazon)
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いい匂い
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前後の文章を含んだ引用
......小鳥、って言いたかったのよね。」 しばらく笑った。遠いながらもそういう記憶は甘く、眠さと雨で鈍っているから、久しぶりに私は私としばし一致する。 幹子が笑いながらポットを火にかけた。とても濃密なジャスミン茶の香りが部屋に満ちる。 今があって、過去があって、ある雨の朝、私が私とここにいる。そういう感じのおちつきはらった、沈み込むような甘い香りだった。「外が暗いね。」 私は言った。「今が夜中の三時と言われても私は信じるわ。」 幹子が言った。「何か食べ物ってない?」 私はたずねた。「クッキーと、みそ汁とね、夕べ......
単語の意味
落ち着き払う(おちつきはらう)
落ち着き払う・・・まったく慌てることなく、ゆったりと構える。
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花びらの薫りの中に、自分の首がすっかり埋まってしまったような夢心地
谷崎 潤一郎 / 痴人の愛 amazon
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鼻の穴を大きくして、思い入れ凌霄花のにおいを吸い
芥川龍之介 / 偸盗
(お茶屋からの香り)そのときの気分しだいで、立ち停まって改めて吸い込んでみたくなるような芳香であったり、我知らず足を速めて立ち去ろうとさせる寂しい匂いの塊りであったりしたが、いまの邦彦にはどちらでもない、霧散も発揮も沈黙もせず、ただひたすらその一線にゆらめているぶ厚い匂いの扉に思えるのだ。
宮本輝 / 道頓堀川 amazon
人が焼ける時のような生ッ臭い臭 い
小林多喜二 / 蟹工船
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