表に出てゆくと、街を吹く秋の風を力いっぱい吸った。

細く長い息を糸のように吐く。

男は鼻から強く息を吸い込み、しばらくそれを肺に保存していた。それからゆっくりと吐いた。

（全身の筋肉を使って、深く繰り返す呼吸）呼吸は通常の呼吸ではなかった。身体全体をくまなく使って行われる、特別な目的と機能を持った呼吸だった。肩胛骨と横隔膜が大きく動き、拡大収縮している様が思い浮かぶ。《…略…》長く厳しい訓練によってしか習得することのできない特殊な呼吸法だ。《…略…》やがて大きな機械が操業を終えるときのように、呼吸が段階を踏んで止んだ。呼吸と呼吸とのあいだの間隔が徐々に長くなり、最後にすべてを絞りきるように長く息が吐き出された。

太い息を吐くと腹は小さくなった

ふう、と大きく息を吐いた。体中の力が抜けて、猫のように背中が丸まる。

しゃっくりに遮られる声は、もう、正しく聞きとることも難しい。

かび臭い家の中で人々が青い息をする

一仕事終えたみたいにふうっと肩で息をする

野薔薇（のばら）の中へ、顔でもつッこんだような、強い香（にお）いに、百は咽（む）せた。