ぶどうを食べる時の、淡い紫色に染まった弟の指先は、上等な工芸品のように繊細だった。混ざりけのない透明な皮膚に、ぶどうの果汁がしみとおっていくのを、わたしは飽きもせずじっと見ていた。
小川洋子 / 完璧な病室「完璧な病室 (中公文庫)」に収録 ページ位置:49% 作品を確認(amazon)
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指の長さ・太さ
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前後の文章を含んだ引用
......まなかった。 弟がぶどうを食べる時のように美しい食べ方をする人は一人もいなかった。唇の動かし方や唾液の弾ける音や歯の艶や、どこかがわたしを不快な気分にさせた。 ぶどうを食べる時の、淡い紫色に染まった弟の指先は、上等な工芸品のように繊細だった。混ざりけのない透明な皮膚に、ぶどうの果汁がしみとおっていくのを、わたしは飽きもせずじっと見ていた。それがとても快感だった。 ほおづえをついたパジャマの袖口から、夜の冷たさが忍び込んできた。二人が黙ると、もう彼の食事の音しか聞こえなかった。痛いくらいに冷えた静......
単語の意味
淡い(あわい)
指先(ゆびさき)
紫(むらさき)
淡い・・・味や色や香りなどが薄い。光や形がぼんやりしている。
指先・・・手や足の、指の先端。指の先っぽ。指頭(しとう)。指端(したん)。
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