(医者である)彼の指が私の脇腹の肋骨と肋骨との間を探っていった。針を突きさす場所を確めているのだ。その感触には金属のようなヒヤリとした冷たさがあった。冷たさと言うよりは私を一人の患者ではなく、なにか実験の物体でも取扱っているような正確さ、非情さがあった。
遠藤 周作「海と毒薬 (角川文庫)」に収録 ページ位置:6% 作品を確認(amazon)
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前後の文章を含んだ引用
......薬の注射をつまむのをジッと見詰めていた。彼の毛の生えた太い指が芋虫のように動いていく。その指先には黒い垢がたまっている。「手をあげて」と彼はひくい声で命じた。 彼の指が私の脇腹の肋骨と肋骨との間を探っていった。針を突きさす場所を確めているのだ。その感触には金属のようなヒヤリとした冷たさがあった。冷たさと言うよりは私を一人の患者ではなく、なにか実験の物体でも取扱っているような正確さ、非情さがあった。と私は患者の本能で突然怯えはじめた。 その時、私の胸部に針がはいった。肋膜と胸廓との間に針がすべりこむのがハッキリ感ぜられた。みごとな入れ方だった。「ウム」と私......
単語の意味
脇腹(わきばら)
脇腹・・・1.腹の横側。横腹(よこばら)。
2.本妻でない女性の腹から生まれること。また、その子。妾腹(めかけばら・しょうふく)。 ⇔ 本腹(ほんばら)。
2.本妻でない女性の腹から生まれること。また、その子。妾腹(めかけばら・しょうふく)。 ⇔ 本腹(ほんばら)。
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近代科学の使徒
梶井基次郎 / 冬の日
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近代科学の使徒
梶井基次郎 / 冬の日
蟻が、自分たちの道を決して見失わず、それからそれと、仲間の領分をひろげるように、家から家、村から町を縫いつないで、細かな商売を積み重ねる薬売り
永井竜男 / 風ふたたび「永井龍男全集 5 長篇小説 1」に収録 amazon
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