私を見ているこの女の眼には、何かキラキラした冷たさがあった。話ぶりはいかにも親しそうにしていて、眼は遠くの方を見ている。そのはるかなものを見ている彼女の眼には空もなければ山も海も、まして人間の旅愁なんて何もない。支那人形の眼のような、冷々と底知れない野心が光っていた。
林芙美子 / 新版 放浪記 ページ位置:40% 作品を確認(青空文庫)
この表現が分類されたカテゴリ
冷たい眼差し
しおりに登録する
前後の文章を含んだ引用
......れっきり逃げ出しそうなのばかりなんですよ。だから今日からでも、私の留守居をしてもらいたいんですが御都合いかが?」 あぶらのむちむちして白い柔かい手を頬に当てて、私を見ているこの女の眼には、何かキラキラした冷たさがあった。話ぶりはいかにも親しそうにしていて、眼は遠くの方を見ている。そのはるかなものを見ている彼女の眼には空もなければ山も海も、まして人間の旅愁なんて何もない。支那人形の眼のような、冷々と底知れない野心が光っていた。 「ええ今日からお手伝いをしてもよろしゅうございますわ。」 昼。 黒いボアに頬を埋めて女主人が出て行った。小女が台所で玉葱 を油でいためている。 「一寸! 厭になっち......
単語の意味
旅愁(りょしゅう)
旅愁・・・旅先で感じる心細さやもの寂しさ。
ここに意味を表示
冷たい眼差しの表現・描写・類語(目・瞳のカテゴリ)の一覧 ランダム5
このカテゴリを全部見る
「目・瞳」カテゴリからランダム5
(目の色は)獰猛な憎悪にとってかわる。
沼田 まほかる「彼女がその名を知らない鳥たち (幻冬舎文庫)」に収録 amazon
憎悪そのものの眸を、俯 つ伏 している姉へも投げた。が、すぐそれが、一角の眼を見ると、よけいに、焔 となって、
吉川英治 / 無宿人国記
同じカテゴリの表現一覧
目・瞳 の表現の一覧
人物表現 大カテゴリ