象形的で、濃密で、硬くて、非妥協的な字だ。エジプトのピラミッドでときどき発見される昔の小さな甲虫を想像させる。今にもぞろぞろと動きだして、そのまま歴史の闇の中にあと戻りしてしまいそうだ。
村上春樹「スプートニクの恋人 (講談社文庫)」に収録 ページ位置:31% 作品を確認(amazon)
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前後の文章を含んだ引用
......い。 アパートに戻ると、入り口の郵便受けにその手紙が入っていた。差出人の名前は書いてなかったけれど、字を見ればそれがすみれからのものであることはすぐにわかった。象形的で、濃密で、硬くて、非妥協的な字だ。エジプトのピラミッドでときどき発見される昔の小さな甲虫を想像させる。今にもぞろぞろと動きだして、そのまま歴史の闇の中にあと戻りしてしまいそうだ。ローマ? ぼくはまず、帰り道のスーパーマーケットで買ってきた食料品を冷蔵庫に入れて整理し、冷えたアイスティーを大きなグラスに注いで飲んだ。それから台所の椅子に座......
単語の意味
兜虫・甲虫(かぶとむし)
兜虫・甲虫・・・コガネムシ科の大形甲虫。全身光沢のある黒褐色。雄は頭上に先の割れた長い角を持ち、これが兜の前立てに似ているのが名前の由来。甲虫(こうちゅう)とも読む。
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文字・活字の表現・描写・類語(言葉・話のカテゴリ)の一覧 ランダム5
ノートの表紙には、習った漢字のみを使っているのか、「黒田正ゆき」と今にも空中分解してしまいそうな、線と線がくっつき合っていない文字で名前が書かれていました。
湊 かなえ / 罪深き女「ポイズンドーター・ホーリーマザー (光文社文庫)」に収録 amazon
人柄に不似合いな下手 な字体
有島武郎 / 或る女
右上がりのとがった文字だった。 サトウの字は昆虫のようだと、わたしはいつも思う。指先にのせると、足先に密集している小さな棘や、胸の硬い甲羅や、神経質に動く触角が皮膚をチクチク刺して気持ち悪い、そんな字だ。
小川洋子 / 冷めない紅茶「完璧な病室 (中公文庫)」に収録 amazon
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「言葉・話」カテゴリからランダム5
言葉を酒のように酔い心地 にのみ込みながら
有島武郎 / 或る女
封筒に私の夢を入れて、 そして私の言葉は七日間、空を飛ぶだろう。 彼の岸から、あなたを呼んでいます。 呼んでいます、送ります。極東からの愛を。 私のハートに羽根をつけて。
吉本 ばなな「アムリタ(下) (新潮文庫)」に収録 amazon
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