口の つぐみ の足りないその口の辺りは、彼の意志力の極度の欠乏を示すもののようである。
野間宏 / 崩解感覚「暗い絵・顔の中の赤い月 (講談社文芸文庫)」に収録 ページ位置：15% 作品を確認（amazon）
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口の動き・状態
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......をふるわせながら、じっと死体と向い合っていた。彼の小さな輪郭をした顔ははっきりと蒼ざめた緊張を見せて、その頰を細くしめていた。幾らか広い額は、知力を思わせたが、口のつぐみの足りないその口の辺りは、彼の意志力の極度の欠乏を示すもののようである。そして何か人生に対する焦燥感がこの顔全体に漂うていた。 及川隆一は死体の変色した大きな耳の内側に眼を向けていた。柔らか味のない、硬そうなその耳の内側のくぼみ、そ......
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