木の焦げるにおいのほかに悪臭はない

どことなく匂う

細かい霧のように、かすかな匂いがあたりに漂う

鼻腔をくすぐって逃げていく

においは微かにするが気にならない

堪（た）え難い悪臭に包まれて、殆ど窒息しそうな思いをしながら

石油くさい

私は厭なコロロホルムの匂いを押し花のように鼻におし当てていた。

パンが焼ける 匂いはなぜだろう、恐ろしいほど幸福な感じがする。

明け方の山中の空気は霧で潤み、むせかえる土と木の香りがした。自然はまさにいまの時間に深呼吸をしているんだなと感じる澄んだ空気。自分の吐いた息が霧に溶けて、植物たちの養分になっていくのが想像できる。