博士のいつもの筆跡だった。全体的に丸みを帯び、所々鉛筆がかすれていながら、雑な雰囲気はなく、むしろ記号の形や0の合わせ目には丁寧さが感じられる。用紙の面積に比べ、数式は小さめで、真ん中よりやや上に、慎ましやかに記されている。
小川洋子「博士の愛した数式 (新潮文庫)」に収録 ページ位置:66% 作品を確認(amazon)
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前後の文章を含んだ引用
......った。この中には、誰の手によって開かれることもなく生涯を終える数学書が、何冊もあるに違いないという気がした。 私は定期入れの中からメモ用紙を取り出した。《 》 博士のいつもの筆跡だった。全体的に丸みを帯び、所々鉛筆がかすれていながら、雑な雰囲気はなく、むしろ記号の形や0の合わせ目には丁寧さが感じられる。用紙の面積に比べ、数式は小さめで、真ん中よりやや上に、慎ましやかに記されている。 改めてよく眺めてみれば、変わった式だった。例えば、長方形の面積は縦×横だとか、直角三角形の斜辺の二乗は、他の二辺の二乗の和に等しい、などといった私が知っている......
単語の意味
慎ましい(つつましい)
慎ましい・・・態度が控えめ。前へ出ず、遠慮した様子。
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髪の毛がちらばったような、果敢(はか)ない、細い、鼻糞のような文字
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鉛筆をなめながら詩を書く。
林芙美子 / 新版 放浪記
まるで噺 し家 の洒落 のよう
夏目漱石 / 吾輩は猫である
右上がりのとがった文字だった。 サトウの字は昆虫のようだと、わたしはいつも思う。指先にのせると、足先に密集している小さな棘や、胸の硬い甲羅や、神経質に動く触角が皮膚をチクチク刺して気持ち悪い、そんな字だ。
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