春にしては風のある寒い日である。けれども長堤も対岸の丘もかなり青み亘 り、その青みの中に柔かいうす紅や萌黄 の芽出しの色が一面に漉 き込まれている。漉き込み剰 って強い塊の花の色に吹き出しているところもある。川幅の大半を埋めている小石の大河原にも若草の叢 の色が和みかけている。
岡本かの子 / 雛妓 ページ位置:46% 作品を確認(青空文庫)
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春
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前後の文章を含んだ引用
......京近郊のF――町は見物人の中に脂粉の女も混って、一時祭りのような観を呈した。葬列は町外れへ出て、川に架った長橋を眺め渡される堤の地点で、ちょっと棺輿を停 めた。 春にしては風のある寒い日である。けれども長堤も対岸の丘もかなり青み亘 り、その青みの中に柔かいうす紅や萌黄 の芽出しの色が一面に漉 き込まれている。漉き込み剰 って強い塊の花の色に吹き出しているところもある。川幅の大半を埋めている小石の大河原にも若草の叢 の色が和みかけている。 動きの多い空の雲の隙間 から飴色 の春陽が、はだらはだらに射 し下ろす。その光の中に横えられたコンクリートの長橋。父が家霊に対して畢生 の申訳に尽力して架した長橋であ......
単語の意味
萌黄・萌葱・萌木(もえぎ)
長堤(ちょうてい)
花の色(はなのいろ)
草叢・叢(くさむら)
若草(わかくさ)
萌黄・萌葱・萌木・・・芽吹いたばかりの草木、春に萌え出る草の芽の色。やや黄色みがかった緑色。
長堤・・・長く続く土手。
花の色・・・花の色合い。
草叢・叢・・・草が群がり、生い茂った所。
若草・・・春になって新しく生えた草。芽を出して間のない草。
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四月も終わりに近い、よく晴れた日曜日の夕方だった。クロッカスやチューリップの花が花屋の店先に並んでいた。ゆるやかな風が吹いて、若い娘たちのスカートの裾を柔らかく揺らせ、若い樹木の放つのびのびとした匂いを運んできた。
村上春樹「スプートニクの恋人 (講談社文庫)」に収録 amazon
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昼のうちむれていたアスファルトから生温かい風が吹いている或る晩
小林多喜二 / 党生活者
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