彼女の唇の両端から血がたらたらと流れて来た。《…略…》彼女は舌を咬（か）み切（き）って自殺した。

自分の人生に区切りをつける

不治の病をはかなんで死んだ

気の強い人ならきっと自殺をしたのだけれど、温和しい人だけにそれも出来なかったのだ。

庄司が死んだ日の朝、庄司の部屋にいた。 　カーテン越しにぎらぎらと 射してくる、夏の光が見せた夢だった。

（水死体のイメージ）わたしは本物の水死体を見たことがなかった。だから、思い切りグロテスクな水死体を想像することができた。皮膚はゼリーのようにふくらんで、さわるとぬめりがあり、半開きの口から覗く舌は、黴が生えたみたいに黒ずんでぐったりしていて、髪にしみ込んだ海のにおいは、胃液のにおいと区別がつかなくなって……

身投げ

落ちたジェット機に駆けつけると、彼の顔には操縦桿がめりこみ、目玉は二つとも唇の横までぶら下がって、後頭部は割れて白く、血もろくに出さずに死んでいた

人は自分の死を自覚したときから、生きる希望と死への折り合いをゆるやかにつけていくだけなんだ。たくさんの些細な後悔や、叶えられなかった夢を思い出しながら。

その時、自分は、みずからすすんでも死のうと、実感として決意したのです。