公園の薄暗いトイレは、壁は落書きと蜘蛛の巣で汚れ、小便の匂いが鼻につく

水銀灯の無個性な光が、ぶらんこや滑り台や砂場や、鍵のかかった公衆便所を照らし出している。

夜の緑の匂いでむせかえるような公園

（大きな公園）公園というより、競技場と呼ぶほうがふさわしい規模と施設

ブランコの軋り音（ね）は、たえず歯ぎしりのように

ベルトコンベヤーは沈黙の帯のように、しんと静止していた。

（地下街）駅舎内の連絡通路に入り、最初に目についた階段から地下街に下りる。両側にテナントショップの並んだ路は先が見えないほど長く、途中で複雑に分岐している。何種類もの音楽と、電子音と、無数の足音と、どこかで動いている巨大な空調機器のゴーっという音と、もっと深いところからくる地下鉄の地鳴りとが、入り混じって反響し合う通路を進んでいく。ところどころに地上への階段の開口部があって、そこからは剥きだしのクラクションやエンジン音が、前世の記憶みたいに流れ込んでくる。しゃべりながら歩いている者は誰もいない。膨大な音のなかに、そういえば人間の肉声だけが含まれていない。

崖にしがみついたような小さな旅館

じゃんじゃんと鳴り物入りで仕事が舞い込む

ちょうど昼食どきなので、広い店の大半のテーブルはふさがり、給仕はいそがしそうにお皿をかかえて、テーブルの間をぬって歩いていた。