記憶のデーターバンクにしまいこまれ、永遠に保存される。

今でも目を閉じると浮かんでくる、忘れられない光景がある

まるで映画の抽象的なシーンのみたいにくりかえしくりかえし僕の頭に浮かんでくる

押しつぶしてしまおうと幾度試みても、すぐあとからまくしかかって来る芸術に対する執着をどうすることもできなかった。

心にネガフィルムのように焼きつく

電話番号を空で言える

山茶花（さざんか）の花ややつでの花が咲いていた。《…略…》日光に撒かれた虻（あぶ）の光点が忙しく行き交うていた。《…略…》日溜りの少し離れたところに小さい子供達がなにかして遊んでいた。《…略…》堯はふと、これはどこかで見たことのある情景だと思った。不意に心が揺れた。揺り覚まされた虻が茫漠（ぼうばく）とした堯の過去へ飛び去った。

悪夢が脳の中に住み込む

いつかの夢のように遠いかすかな記憶

かすかな記憶、その、目の前でビールを飲む人のぼやけた映像をどんどんクリアーになるまで集中してつきつめていったら、ある笑顔に行き当たったのだ。