年来、懇意の間柄

お互い相手をそよ吹く風ぐらいにしか感じられないほどに、親しい。

身内同士みたいな親しい気分

十年の知己のように、姉妹以上になって

（共通の知人の死を経験して一時的に仲良くなっている）二人の気持ちは死に囲まれた闇の中で、ゆるやかなカーブをぴったり寄り添ってまわっているところだった。しかし、ここを越したら別々の道に別れはじめてしまう。

（あるほんとの運命的な出会い）ひら積みになった沢山の本の中で、ある分厚い本が私の目を引いた。 「哲学者の密室」笠井潔著……見たことも聞いたこともなく、普段私が読まない推理小説で、オマケにとにかく分厚い本で、手に取ってみたらずっしりと重かった。お金ももうなくて、それなのにどうして私はパンの本を 諦めてまでそれを買ったのだろう。 　それが運命というものだ。 　どうしても欲しい気がした。 　自分ではどこにあるかわからない、どうしようもなく遠くでも確実に触れるほど近い、ある部分が買え、買えと強く訴えるような感じがしたのだ。

「貴女にバナナを食べさせようと思って持って来たのです。食べませんか。」 　この人の言う事は、一ツ一ツが何か思わせぶりな言いかたにきこえてくる。本当はいい人なのだけれども、けちでしつこくて、する事が小さい事ばかり、私はこんなひとが一番嫌いだ。

人間たちを、ひとかけらのパン切れをかついでまわる蟻のようにこき使う

男と女ってのは最後のゲタをはくまでわかんねえ

キツネが猫のように媚びたしぐさで首を金網にすりつける