藁のむれたような匂いを躰（からだ）いちめんからたてている

（小猿が）小憎らしい梅干婆さんのように、まことにおとなしくきょとんとしている。

黒い岩のような牛の首筋

桜色の絹のような（牛の）乳の袋

狭い檻の中で、物倦（ものう）げに、だがもの悲しい執拗さで堂々廻りしている熊

まるで毛皮のズボンをはいたような逞ましい輓馬（ばんば）

古綿のような牛の群

甲羅の乾いた亀

壁虎（やもり）がきちきち鳴く

私はゴロッと仰向きに寝転んで、猫を顔の上へあげて来る。二本の前足を掴んで来て、柔らかいその蹠（あしのうら）を、一つずつ私の眼蓋（まぶた）にあてがう。快い猫の重量。温かいその蹠。私の疲れた眼球には、しみじみとした、この世のものでない休息が伝わって来る。