降雨の風景ばかりを撮った一冊がとくに気に入って、何度も繰り返し見入る。ページの間から雨のにおいが立ちのぼってくる。樹木やアスファルトを打つ雨滴のざわめきに包まれていると、そのまますうっと写真の街へ入り込んでいけそうな錯覚に襲われる。
沼田 まほかる「彼女がその名を知らない鳥たち (幻冬舎文庫)」に収録 ページ位置:80% 作品を確認(amazon)
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前後の文章を含んだ引用
......のリボンをかけたネクタイの箱が見える。 写真集を集めたコーナーで次々と本を取り出し、サンゴ礁に棲む生き物や、山や、森林を眺めて、しばらく時のたつのを忘れている。降雨の風景ばかりを撮った一冊がとくに気に入って、何度も繰り返し見入る。ページの間から雨のにおいが立ちのぼってくる。樹木やアスファルトを打つ雨滴のざわめきに包まれていると、そのまますうっと写真の街へ入り込んでいけそうな錯覚に襲われる。永遠に雨が降っているそこでは、ものの輪郭はすべて柔らかい銀色に煙っている。 自分のためにその本を買おうと裏表紙を見ると、さっき買ったネクタイと同じほどの価格が表......
単語の意味
雨滴(うてき)
風景(ふうけい)
雨滴・・・雨のしずく。雨水の粒。雨だれ。
風景・・・自然の景色。目の前に広がる眺め。その場の情景。
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