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(新生児)産院の、小舟のような形の透明なベッドに収まった赤ん坊を見た時、自分の中にわいたのは、喜びよりも怖れに近いものだった。生まれてからまだ数時間しか経っておらず、まぶたにも、耳たぶにも、踵にも、さっきまで羊水に浸かっていたふやけた感じが残っていた。目は半ば閉じられていたが、眠ってはいないらしく、大きすぎて身体に馴染まない産着からはみ出た手足を、小刻みに動かしていた。まるで、間違った場所に置き去りにされた不満を、誰かに訴えているかのようだった。
小川洋子「博士の愛した数式 (新潮文庫)」に収録 ページ位置:16% 作品を確認(amazon)
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子供が生まれる・産声
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前後の文章を含んだ引用
......と意地の悪い計画を思い付いた自分がおかしくて、私は含み笑いをしながら、二人の会話に耳を傾けていた。 生まれた時からルートは、抱擁されることの少ない赤ん坊だった。産院の、小舟のような形の透明なベッドに収まった赤ん坊を見た時、自分の中にわいたのは、喜びよりも怖れに近いものだった。生まれてからまだ数時間しか経っておらず、まぶたにも、耳たぶにも、踵にも、さっきまで羊水に浸かっていたふやけた感じが残っていた。目は半ば閉じられていたが、眠ってはいないらしく、大きすぎて身体に馴染まない産着からはみ出た手足を、小刻みに動かしていた。まるで、間違った場所に置き去りにされた不満を、誰かに訴えているかのようだった。 新生児室のガラスに額を押し当てながら、私もまたその誰かに向かい、質問をぶつけていた。どうしてあなたには、この赤ん坊が私の子供だと分かるのですか、と。 私は十八......
単語の意味
馴染む(なじむ)
身体(しんたい)
耳朶・耳埵(みみたぶ・みみたぼ)
不満(ふまん)
赤ん坊(あかんぼう)
馴染む・・・慣れる。慣れて違和感がなくなる。いい感じに調和する。すっかり親しみを感じるようになる。
身体・・・人のからだ。肉体。
耳朶・耳埵・・・1.耳の一部。耳の下のほうに垂れ下がった、柔らかいふくらみの部分。
2.(1の肉付きがいいのは福の相という俗説から)幸運なこと。
不満・・・満足できないこと。また、そのさまやそういう気持ち。不満足。
赤ん坊・・・赤ん坊】生まれて間もない子供。また、おなかの中の子供。身体が赤みがかっているからいう。赤子(あかご)。赤ちゃん。
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