間近で見ると、螢火は数条の波のようにゆるやかに動いていた。震えるように発光したかと思うと、力尽きるように 萎えていく。そのいつ果てるともない点滅の繰り返しが何万何十万と身を寄せ合って、いま切なく 侘しい一塊の生命を形づくっていた。
宮本 輝 / 螢川「螢川・泥の河(新潮文庫)」に収録 ページ位置:92% 作品を確認(amazon)
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蛍
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前後の文章を含んだ引用
......でいる手の力を強めてきた。竜夫は川のほとりに降りていった。「竜っちゃん、やめよお、ねえ、行かんでおこう」 何度もつぶやきながら、英子はそれでも竜夫についてきた。間近で見ると、螢火は数条の波のようにゆるやかに動いていた。震えるように発光したかと思うと、力尽きるように萎えていく。そのいつ果てるともない点滅の繰り返しが何万何十万と身を寄せ合って、いま切なく侘しい一塊の生命を形づくっていた。 竜夫と英子のいる場所は川にそった窪地の底であった。夜露が二人の膝元をぐっしょり濡らしてしまった。 竜夫は土手を振りあおいだ。ただ闇ばかりで何も見えなかった。そ......
単語の意味
侘しい(わびしい)
侘しい・・・1.心細いくて不安である。寂しくて心が満たされていない。
2.見た目が貧弱である。外見がしょぼい。
2.見た目が貧弱である。外見がしょぼい。
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蛍の表現・描写・類語(夏のカテゴリ)の一覧 ランダム5
蛍の火は幽霊じみて見えないでもない
川端 康成 / 千羽鶴 amazon
強い光を放つ大きな 蛍 が、谷間を貫く小さい流れに沿って飛んで来て、 或いは地上二 米 の高さを、 火箭 のように早く真直に飛び、或いは立木の 葉 簇 の輪郭をなぞって、高く低く目まぐるしく飛んだ。そして果ては一本の木にかたまって、その木をクリスマス・トリーのように輝かした。
昇平, 大岡「野火(のび) (新潮文庫)」に収録 amazon
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「夏」カテゴリからランダム5
晩春から初夏へ移り変わる山里の、新緑の美しさ
池波 正太郎 / 剣客商売 amazon
気の狂ったような暑さが爆発する
五木寛之 / 私刑の夏 【五木寛之ノベリスク】 amazon
外はすでに真夏の太陽が高く昇り、アスファルトを熱し始めている。
雫井 脩介「火の粉 (幻冬舎文庫)」に収録 amazon
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