強い光を放つ大きな 蛍 が、谷間を貫く小さい流れに沿って飛んで来て、 或いは地上二 米 の高さを、 火箭 のように早く真直に飛び、或いは立木の 葉 簇 の輪郭をなぞって、高く低く目まぐるしく飛んだ。そして果ては一本の木にかたまって、その木をクリスマス・トリーのように輝かした。
昇平, 大岡「野火(のび) (新潮文庫)」に収録 ページ位置:16% 作品を確認(amazon)
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蛍
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前後の文章を含んだ引用
......疵のように走っていた。六 夜 夜は暗かった。西空に懸った細い月は、紐で繋がれたように、太陽の後を追って沈んで行った。めいめい雨衣をかぶり、雑嚢を枕に横になった。強い光を放つ大きな蛍が、谷間を貫く小さい流れに沿って飛んで来て、或いは地上二米の高さを、火箭のように早く真直に飛び、或いは立木の葉簇の輪郭をなぞって、高く低く目まぐるしく飛んだ。そして果ては一本の木にかたまって、その木をクリスマス・トリーのように輝かした。 マラリア患者は唸っていた。正確に呼吸のリズムを追い、人間に呼吸の必要を思い出させるような、そういう規則正しい呻きであった。「おい、おっさん、寝たのか」 と近く......
単語の意味
輝かしい(かがやかしい)
蛍(ほたる)
沿う・添う・副う(そう)
火箭(ひや・かせん)
輝かしい・・・1.光り輝くように素晴らしい。華々しい。立派だ。
2.まぶしいほどに光り輝いている。キラキラしている。
2.まぶしいほどに光り輝いている。キラキラしている。
蛍・・・1.ホタル科の昆虫の総称。水辺にすむ小形の甲虫。夜、腹の端から青白い光を出す。その光は古来より好まれ、死者の魂ともいわれた。夏虫(なつむし)。
2.源氏物語の巻名。
2.源氏物語の巻名。
沿う・添う・副う・・・1.(「沿う」と書いて)長い線状のものの近くを離れずに平行に進む。つたっていく。
2.(「沿う」「添う」「副う」と書いて)期待されるところから外れない状態を保つ。ある基準から離れないようにする。
2.(「沿う」「添う」「副う」と書いて)期待されるところから外れない状態を保つ。ある基準から離れないようにする。
火箭・・・火をつけた矢。火矢(ひや)。
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蛍の表現・描写・類語(夏のカテゴリ)の一覧 ランダム5
ささやかな淡い光は、まるで行き場を失った魂のように、いつまでもいつまでもさまよいつづけていた
村上春樹 / ノルウェイの森 amazon
蛍の大群は、滝壺の底に寂寞と舞う微生物の屍のように、はかりしれない沈黙と死臭を孕んで光の澱と化し、天空へ天空へと光彩をぼかしながら冷たい火の粉状になって舞いあがっていた。
宮本 輝 / 蛍川 amazon
一陣の強風が木立を揺り動かし、川辺に沈澱していた 螢 たちをまきあげた。光は波しぶきのように二人に降り注いだ。
宮本 輝 / 螢川「螢川・泥の河(新潮文庫)」に収録 amazon
螢の大群が、 絢爛 たるおとぎ絵となって、
宮本 輝 / 螢川「螢川・泥の河(新潮文庫)」に収録 amazon
蛍が、水面を漂う細い糸のような光の筋を曳(ひ)き、解きつほぐれつしながら漂う
長野 まゆみ / 銀木犀 amazon
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「夏」カテゴリからランダム5
暑い陽が真上にある。道を人がだるそうに歩いていた。
松本 清張 / 真贋の森「松本清張ジャンル別作品集(3) 美術ミステリ (双葉文庫)」に収録 amazon
蒸し暑さが一挙に霧散するような豪快な雨
三浦 綾子 / 続 氷点 amazon
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