眼は眼瞼の肉がおちてしまっていて眼をとざしているにもかかわらず眼球を蔽いきれないとでもいうかのように開かれていた。

バセドー氏病を思わせる大きなつき出た眼

眼が鳥の眼のように、飛び出していた。

尖った頰骨と薄い唇は育ちの良さと芯の強さを感じさせたが、全体を揺れ動くちょっとした表情の変化はその奥にある無防備なばかりのナイーヴさを示していた。

瘠（や）せて青ざめて眼ばかり大きな子

婆羅門（ばらもん）の行者みたいに目を凹（へこ）ましていた。

丸みのある顔を顎から絞り上げたような顔つき

茶色に近い痩せた頬

例の六畳で鏡台に向かったが一日一日に変わって行くような自分の顔にはただ驚くばかりだった。少し縦に長く見える鏡ではあるけれども、そこに映る姿はあまりに細っていた。その代わり目は前にも増して大きく鈴を張って、化粧焼けとも思われぬ薄い紫色の色素がそのまわりに現われて来ていた。それが葉子の目にたとえば森林に囲まれた澄んだ湖のような深みと神秘とを添えるようにも見えた。鼻筋はやせ細って精神的な敏感さをきわ立たしていた。頬（ほお）の傷々（いたいた）しくこけたために、葉子の顔にいうべからざる暖かみを与える笑（え）くぼを失おうとしてはいたが、その代わりにそこには悩ましく物思わしい張りを加えていた。

両頬はそぎ落とされて髭が薄かったから一層貧相な感じ

頬が青白く疲れている

腹部はちぎれるように細い

女盛りの凝脂が漲り渡っている襟足

小皺のある上に醜い顔

近くで見ても驚くほど滑らかで、目の縁や口元を見入っても、目に付くような小皺や筋は一つもない

派手でどことなく険のある顔

頬や顎のふくらみにはやっぱり若さの雫（しずく）が滴（したた）っていた。

つんと鼻すじの通った美少年

対立の時でさえ彼女の目は些か媚を含んでいる

目は、野に住む獣のようにギラギラと闇の中に光る

物思いに沈んでいるような暗鬱な目を外に向ける

目つきはよく言えば鋭く、悪く言えば常に疑わしげで、爬虫類のようにギョロギョロと動く。背中が丸まっているせいで、人の顔を見る時はどうしても下から窺うようになり、初対面の人には十中八九不快な印象を与える。

眼鏡の奥にある目は、限定された動きだけをもとめる深海の捕食生物のように、ぼくの底を探っていた。