それまでわたしの中に絶え間なく流れ、漣(さざなみ)のように押し寄せては引いていった何かが、その時、ふと透明な、うす青い氷のようになって、わたしの中で静まり返り、ぴたりと収まるべきところに収まったのを感じた。 その氷は冷たくはなかった。おかしな言い方かもしれないが、それは決して氷結しない、限りなく水や液体に近い氷だった。
小池真理子「愛するということ (幻冬舎文庫)」に収録 ページ位置:91% 作品を確認(amazon)
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荒れた気持ちが穏やかになる
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......ういった気分にはならなかった。心臓の鼓動は規則正しかった。呼吸はゆっくりと穏やかだったし、煙草をたて続けに吸いたい、という気分にもならなかった。 不思議だった。それまでわたしの中に絶え間なく流れ、漣のように押し寄せては引いていった何かが、その時、ふと透明な、うす青い氷のようになって、わたしの中で静まり返り、ぴたりと収まるべきところに収まったのを感じた。 その氷は冷たくはなかった。おかしな言い方かもしれないが、それは決して氷結しない、限りなく水や液体に近い氷だった。 悲しみや絶望感が消えたわけでもなく、野呂に向けた思慕の念が消えたわけでもない。決して明るい気持ちになったわけでもなかった。それどころか、野呂を愛する気持ち、恋......
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