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喚き声は蜘蛛の網のように十和子のまわりに張りめぐらされている。声の網を伝って、陣治という蜘蛛の粗野な卑怯さが這い進んでくる。十和子を粘液のなかに搦め捕ろうとする。搦め捕った十和子の身体を、十和子に気付かせないように端の方からちまちまとしゃぶって喰らおうとする。  声はいっそう芝居がかってくる。奇怪な痴態をこれでもかと見せ付けてくる。十和子のドアを叩いて窮状を訴えることもせず、かと言って、呻きを押し殺してひとり耐えるのでもない。その中間のどこかに罠をはって、十和子をおびきだそうとしている。陣治、どないしたん、と十和子の方から出ていくのを、下卑た期待の表情を浮かべてひそかに待ち構えているのだ。
沼田 まほかる「彼女がその名を知らない鳥たち (幻冬舎文庫)」に収録 ページ位置:47% 作品を確認(amazon)
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うそ泣き
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......言葉が挟まる。目ぇが、目ぇが、と訴えているのも聞こえる。 怒りが込みあげてくる。怒りは抵抗不可能な生理反応だ。目を眩ませ、思考力を麻痺させ、妄想を見させる。今や喚き声は蜘蛛の網のように十和子のまわりに張りめぐらされている。声の網を伝って、陣治という蜘蛛の粗野な卑怯さが這い進んでくる。十和子を粘液のなかに搦め捕ろうとする。搦め捕った十和子の身体を、十和子に気付かせないように端の方からちまちまとしゃぶって喰らおうとする。 声はいっそう芝居がかってくる。奇怪な痴態をこれでもかと見せ付けてくる。十和子のドアを叩いて窮状を訴えることもせず、かと言って、呻きを押し殺してひとり耐えるのでもない。その中間のどこかに罠をはって、十和子をおびきだそうとしている。陣治、どないしたん、と十和子の方から出ていくのを、下卑た期待の表情を浮かべてひそかに待ち構えているのだ。 ああ、ああ、ああ、ああ、痛い、痛い、目ぇが、目ぇが、目ぇが、ああ、ああ、ああ。 あれは呼んでいるのだ。十和子、十和子、十和子、俺はここや、俺はここや、ここや、......
単語の意味
下卑(げび)
粗野(そや)
ちまちま
身体(しんたい)
蜘蛛(くも)
下卑・・・下品で卑しい。意地汚い。
粗野・・・荒っぽく洗練されていないと。乱暴なさま。がさつなこと。
ちまちま・・・小さくまとまっているさま。一つ一つが小さいながら、まとまっている印象を受けさま。ちんまり。
身体・・・人のからだ。肉体。
蜘蛛・・・クモ目の節足動物の総称。8本足で体は袋状。尻から糸を出す。ほとんどの種は糸を使って巣を張り、そこに虫を捕らえて食べる。
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