広い窓の外、冬の初めのグレーが街を覆っているのを見つめていた。 　この小さな街のすべての部分に、公園に、路に、霧のようにしみとおる冬の重い冷気を支え切れない。押されて息ができない。

凍みて石のように固い空模様

今にも雪が降り出しそうな寒々しい空

行潦（みづたまり）も、つめたく、青空を映したまま、この冬の午後を、何時かそれなり凍つてしまふかと疑はれる。

星は語らない。ただはるかな山すそから、干潮になった無月の潮騒（しおざい）が、海妖（かいよう）の単調な誘惑の歌のように、なまめかしくなでるように聞こえて来るばかりだ。風が落ちたので、凍りついたように寒く沈み切った空気は、この海のささやきのために鈍く震えている。

ポプラは無数の裸の細い枝を天にむかってつきたてている《…略…》どこまでも細く空をつきとおしているポプラ

小さな町だが、今までの寒山枯木に対して、血の通う人間に逢う歓びは覚える。

冬と春との入れかわる三月だ。

正月が雪を率いて注連飾りの都を白くする

うららかに晴れ渡った日で、まだ真冬の尻尾が残っている時季