(すいかは)デザインもいい。 とにもかくにもまん丸、小細工一切なし。一見、デザインのことなどまるで考えていないようだが、どうしてどうして、夏の畑の日照りの中で、スイカはちゃんとそのことも考えているのである。 スイカは地肌の暗緑色、あの一色だけであっても誰にも文句を言われる筋合いはない。しかしそれではあまりに面白味がないし、第一陰気である。 そこで、その地肌に、黒のストライプのプリント柄を入れたらどうか、と、スイカは夏の畑の日照りの中で考えたのである。しかし直線のストライプでは、風船みたいで果物、野菜の感じがしない。 千葉、埼玉の雰囲気が出ない。 そこで考えついたのが、ストライプにギザギザをつけることであった。《…略…》内部の〝赤〟もデザイン的にすばらしい。一番外側の緑、ふちどりの白、そして圧倒的な容量を誇る赤、赤の中に点々と混じる〝画竜点々睛〟の黒い種。 このままで、そのまま絵になる。
東海林 さだお「タコの丸かじり」に収録 ページ位置:21% 作品を確認(amazon)
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すいか
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前後の文章を含んだ引用
......踏んでくやしがることになる。 日曜の夕方など、八百屋の近辺の路上のあちこちで、スイカを取り落としたおとうさんたちが地団駄を踏んでいる図が展開されるに違いない。 デザインもいい。 とにもかくにもまん丸、小細工一切なし。一見、デザインのことなどまるで考えていないようだが、どうしてどうして、夏の畑の日照りの中で、スイカはちゃんとそのことも考えているのである。 スイカは地肌の暗緑色、あの一色だけであっても誰にも文句を言われる筋合いはない。しかしそれではあまりに面白味がないし、第一陰気である。 そこで、その地肌に、黒のストライプのプリント柄を入れたらどうか、と、スイカは夏の畑の日照りの中で考えたのである。しかし直線のストライプでは、風船みたいで果物、野菜の感じがしない。 千葉、埼玉の雰囲気が出ない。 そこで考えついたのが、ストライプにギザギザをつけることであった。 これではっきりとスイカらしくなった。 こうなれば、誰が見ても、もうはっきりとスイカである。 内部の〝赤〟もデザイン的にすばらしい。一番外側の緑、ふちどりの白、そして圧倒的な容量を誇る赤、赤の中に点々と混じる〝画竜点々睛〟の黒い種。 このままで、そのまま絵になる。 見た目だけでなく、スイカは食べてもおいしい。しかも楽しい。 おいしい食べ物はたくさんあるが、食べて楽しい食べ物は少ない。 スイカは食べながらも楽しい。 近年、......
単語の意味
暗緑色(あんりょくしょく)
陰気(いんき)
圧倒(あっとう)
圧倒的(あっとうてき)
日照(にっしょう)
刻刻・刻々・段段・段々(ぎざぎざ)
暗緑色・・・暗い緑色。ダークグリーン。
陰気・・・気分や天気などが、スッキリしない。明るくなく、ドンヨリしている。⇔陽気。
圧倒・・・ひときわ優れた力を持っていること。他よりとても勝っていること。また、その力で相手を押さえつけること。
圧倒的・・・他とは比べ物にならないほど優れていること。
日照・・・日の光が地上を照らすこと。
刻刻・刻々・段段・段々・・・のこぎりの歯のような細かい刻み目。また、その目が続いているさま。
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すいかの味、おいしさを伝える表現・描写(果物(フルーツ)のカテゴリ)の一覧 ランダム5
食べ終わったときは口のまわりはべろべろになっているものである。 だから、最初に大型タオルを用意しておく。小型でも中型でもいけない。こいつで口のまわり、およびアゴを力強くぬぐう。
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スイカの特異性は、その大きさにある。こんなに大きな果物は、果物界広しといえども他に類例をみない。 果物屋や八百屋などのスイカコーナーには、これら大物たちがゴロゴロしているが、その一画は、あたかも相撲部屋のごとき様相を呈している。
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口中一杯のスポンジ状のスイカの果肉が、口を閉じるにつれてシャワシャワとつぶれ、甘く冷たいジュースになり、口の底辺部にたまって舌がその中にひたされる。そいつを果肉と共にノドの奥のほうにゴクンと送りこんで飲みこむ。 このとき人間の口中は、圧搾式のジューサーとなっている。 スプーンを使うならば、ケーキ風に切らずに半切りにし、〝道路掘削工事風〟で食べることをお薦めしたい。 ガス管や水道管の工事、あの方式である。楽しさという点ではこれが一番といえる。 まん中を掘り進み、いやいやこっち側も少し掘削せねば、と思い、あれこれ手順を考え、工事現場を任された主任のような心境になる。底のほうから水が滲み出してくるところなども、道路工事に似ている。ときどき底のほうにたまった水を汲みあげなければ、と、主任の心境はいや増す。
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(すいかは)デザインもいい。 とにもかくにもまん丸、小細工一切なし。一見、デザインのことなどまるで考えていないようだが、どうしてどうして、夏の畑の日照りの中で、スイカはちゃんとそのことも考えているのである。 スイカは地肌の暗緑色、あの一色だけであっても誰にも文句を言われる筋合いはない。しかしそれではあまりに面白味がないし、第一陰気である。 そこで、その地肌に、黒のストライプのプリント柄を入れたらどうか、と、スイカは夏の畑の日照りの中で考えたのである。しかし直線のストライプでは、風船みたいで果物、野菜の感じがしない。 千葉、埼玉の雰囲気が出ない。 そこで考えついたのが、ストライプにギザギザをつけることであった。《…略…》内部の〝赤〟もデザイン的にすばらしい。一番外側の緑、ふちどりの白、そして圧倒的な容量を誇る赤、赤の中に点々と混じる〝画竜点々睛〟の黒い種。 このままで、そのまま絵になる。
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