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うす寒い空気と壁があるだけで、台所にも、一粒の米粒すらなさそうである。
吉川英治 / 治郎吉格子 ページ位置:54% 作品を確認(青空文庫)
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生活苦・貧しい暮らし(日々)
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前後の文章を含んだ引用
......がりから見送って、すぐその眼を、竹窓のあいだから、じっと、家の中へしのび入れた。  病人は、がれいのように平たくなって、昏睡こんすいしていた。枕元には、せんぐすりも見えない。うす寒い空気と壁があるだけで、台所にも、一粒の米粒すらなさそうである。  豆絞りの手拭から、ころりと、百両包を二つ出して、竹窓のあいだから、手をさし入れて、小壁の下に置いた。そして治郎吉は、路地を出て来た。 「……あっ、ごめんなさいま......
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