熱いかたまりが胸につかえて息苦しい

女心はシャワーのこのお湯みたいなもの。あるときは冷たく、またある時は火傷をするくらい熱く、そしてそれは高いところから低いところへ自然の法則に任せて、私のことを待っているあの人のところへ流れて行く。

急激なせつなさに襲われたようだった。

民子の美しい手で持ってると銀杏の葉も殊に綺麗に見える。

蒔野は幸福だった。 　生活の至るところに愛の光が差し込み、その反射が、折々彼を驚かせ、その目を細めさせた。 　幸福とは、日々経験されるこの世界の表面に、それについて語るべき相手の顔が、くっきりと示されることだった。

（鉄柱に縛りつける）背筋の先端に大きな関節を一つポコンと露（あら）わに見せていた。

（ホテルのベッドに一人寝転がるとエッチな気分が湧いてきた）眼鏡を外して仰向けになった。 　城戸は、かつて汗ばんだ全裸で、激しい動悸と心地良い深呼吸とともに眺めた幾つかの天井の記憶を呼び覚ました。胸の裡に淫猥なものが 閃いた。誰かが傍らにいて、互いの裸体の熱を感じ合っているべきであるような、遠慮深い静けさだった。

何の感動もなく、昼間から敷き放しの布団に二人は寄りそって、こおろぎの交尾のような、はかない習慣に落ちてしまうのである。

わたしは目の前の、自分を抱いている男の背に腕をまわし、男の身体の重みを受けながら、その男のことが好きだ、気にいっている、などと心の底から思うのだった。

恋は盲目